完全にばらし終えたW650とW400のエンジン。トランスミッションに注目していく。
ボールベアリングの滑り
トランスミッションのベアリングのはめあい部分のクランクケースが擦れて光っている。これはボールベアリングが滑っているのではないか?
トランスミッションはクランクケースにボールベアリングで支えられている。このボールベアリングには溝が掘られ、クランクケースの溝と共にはめられたキーによって、スラスト方向の動きが抑制されている。
回転方向は上下のクランクケースに挟まれていて、その締め付け力によって固定されている。よって構造的にはこの滑りを抑えることは出来そうにない。
この滑りは、調べてみると、クリープと呼ぶらしい。無い方がいいらしい。そりゃそうだろう 接着剤で固定するのもありらしいので、組み立てる時はネジロックで固定することにしよう。
ポジティブニュートラルファインダー
Wのトランスミッションにはポジティブニュートラルファインダーという、停止時に1速からニュートラルに入りやすい機構が設けられている。これによって信号待ちでニュートラルに入らず、1速と2速を行ったり来たりすることがない。
逆にこれがあるおかげで、動いていない時に2速以上に入れることができない。押しがけする時、1速よりも2速の方がかけやすい。
大体止まる時は1速まで下げずに2速からニュートラルに入れてるし、そもそもそんな機能がついてるとは知らないから、1速からニュートラルに入れる時も足の操作を加減してるし。
ポジティブニュートラルファインダーいらねー
じゃあ、どうやってポジティブニュートラルファインダーの息の根を止めるか。ポジティブニュートラルファインダーがその機能を実現するために特別に用意されているものは、直径4ミリぐらいのボールが三つだけ。
このボールがギアのシャフトに接する面に120度刻みで埋め込まれている。ギアが回転している時、つまりバイクが動いている時は、ボールは遠心力によって穴の中に隠れている。
バイクが止まるとギアの回転が止まり、遠心力を失ったボールは下方に移動する。シャフトにはボールの直径の半分の深さの溝が掘られており、移動してきたボールはその溝にはまる。
ギアはトランスミッションのシャフト上を軸方向に、1速の位置、ニュートラルの位置、2速の位置と移動する。シャフトの溝は1速の位置とニュートラルの位置の間に掘られているため、ボールがつっかえてしまい2速の位置までギアが動くことができない。
このボールにはエンジンの外へ出ていってもらおう。
エクストラスペシャルワイドミッション
W400とW650のミッションを組み合わせて、エクストラスペシャルワイドなミッションを作る。使うのはW400の1速2速、W650の3速4速5速だ。1速はW400で5速はW650で決まり。逆だとクロスになってしまうから。
境目になるところのギア間の減速比の変化率が大きくなってしまうので、どこを境目にするかが悩みどころ。低いギアの方がつながりの悪さをパワーで何とかしてくれるのではないかと思うのと、1、2間より2、3間の方が無理がなさそうなのでここにした。
アッパークランクケースの上に組み替えたドライブシャフトとアウトプットシャフトを仮組みして動作を確認する。
各ギア、きちんと噛み合っている。変速動作を再現してギアを左右に移動させて、隣のギアとドッグクラッチでの噛み合いも問題なさそうだ。
念のためロアーケースに組んでみると、なぜかアウトプットシャフトが収まらない。よく見るとキックシステムのギアと1速のギアがぶつかっている。
なんで?
ああ そうか
キックペダルを踏み下ろした回転力は、アウトプットシャフトの1速ギアを回転させる。このギアはニュートラルの時はアウトプットシャフトとは噛み合っていないのでアウトプットシャフトは回転しない。回転力はアウトプットシャフトと噛み合っているドライブシャフトの1速のギアを回す。このギアはドライブシャフトそのものなので、ドライブシャフトが回転し、クラッチを経由してクランクシャフトを回転させる。
つまりキックシステムと関わる1速ギアは、W650のものでなければならないのだ。
まじか・・・
エクストラスペシャルワイドミッションのポイントは、W400の1速ギアを使うことだというのに。
はたと思いつく。
W400用キックオプションってあったじゃん
すぐにカワサキの純正部品を調べてみると、アッセンブリーでは廃番になっていたが、スパーギアだけはまだ売っていた。ついでにW650用のキックスパーを調べてみると、こちらは廃番。部品が入手できなくなっていくのは怖い。急いで注文。
届いたW400用キックスパーギアと、W650のそれ。大きさが違う。
これを組み込んでエクストラスペシャルワイドミッションの完成。しかしこのセットでいくと、ザムに特注しているリアスプロケットの丁数では合わないことに気づく。だめもとでザムの担当者に丁数の変更願いをメールしてみる。
数日後
まだ製作していなかったということで、なんとOK。助かった(;^ω^)
※追記 このミッションの組み合わせは、まったくお勧めできません。いいところもありますが、悪いところがものすごく悪いので、決してまねしないでください。