Mノズルとセッティング -W650にMノズル装着-

W650のエンジン

Mノズルを装着してから悩まされていたアフターファイヤーが、結局2次エアだったということがわかった話の続き。

インシュレーターを交換したときのセッティングはこちら。

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スロージェットは、結局Mノズル装着前と変わらないものとなった。ただ、低開度の薄い感じ(爆発感の弱さ)を解消するためにJNを変更してみる。

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感じは悪くないが、低開度のツキがまだ少し悪い。 そして、1/4~1/2ぐらいのぼこつき(開を丁寧にすればさけられる)がある。SJ55でJN5179を試したい。

ここまでがMノズル装着の第一段階と言えるだろう。ここまで来るとだいぶ慣れてしまったが、低回転からのアクセルオープンに対するエンジンのつきが、Mノズル無しには戻れないと思わせる。ただし、その代償と言えるのが燃費。Mノズル無しの時は25km/Lだったが、22km/Lになってしまった。

そして時は過ぎ・・・

梅雨が例年より早くあけた2022夏。バイク通勤を再開した6月の末。セッティングは以前のまま家を出る。蒸し暑い(-_-;) うう スロットル開度1/2以上が吹け上がらない。季節でこれほど変わるのか。これはリセッティングが必要だ。

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メインジェットとジェットニードルを替えた。ちなみに51系のジェットニードルは、1番手替えて同じクリップ段数なら、元のジェットニードルのクリップ段数から1段変えたのと同じことになる。5178から5179への変更は、ニードルが太くなってガソリンが薄くなり、クリップ段数を1段上げたのとほぼ等価でガソリンが薄くなる。

1/2開度でもたつき、それより上は吹け上がらない状態。さらにメインジェットをしぼってみる。

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1/2付近にかすかなよどみがある。 これがなくなれば相当気持ちよく開けられそう。そこでさらにメインジェットをしぼってみる。

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うかつに開けると、1/2付近でよどみがあるのは変わらない。うかつに開けなければ問題ない。強制開閉キャブレターは、キャブレターと相談しながら開けるもんだと考えれば、これで良しなのかもしれない。ただ、1/8での妙な脈動をなくすことを突き詰めるとすると、スロットルバルブカッタウェイの変更も、考えなければいけないのかもしれない。

ちなみにこの段階での燃費は24km/L。燃費はおもにスロージェットかと思っていたが、どうやらメインジェットだったんだなという感じ。

インシュレーターと燃料コック交換 -W650にMノズル装着-

左右のスロットルバルブの高さが違う

バックミラーに回転する赤色灯を発見。スロットルを緩め、一気に制限速度までスピードを落とす。

帰り道にアイドリングが下がらなくなった話の続き。

走行車線を制限速度で走っていると、後ろについた覆面パトカーは、諦めたのか赤色灯をしまった。

まじ やばかった

その後は高まるエンジンの回転をなだめつつ帰宅。2次エア対策の部品を注文する。それは

  1. 負圧式でない燃料コック
  2. インシュレーター

負圧式燃料コックは閉め忘れがないから気に入っていたけれども、そのシステムの中でエア漏れが起こらないとは限らない。その可能性をなくすために、ここで負圧システムは一切退場していただこう。

インシュレーターは悪くなってはいないと思っているが、もしかしたらっていうこともあるので、新しくしよう。

数日後

エアクリーナーボックスを外してキャブレターを取り外すと、とんでもない事になっていた。スロットルバルブの高さが左右で違う。

左右のスロットルバルブの高さが違う
左ほどではないけれど開いているスロットルバルブ
スロットル全閉なはずなのに、これだけ開いてるスロットルバルブ

アイドリングが高くなったのは、これが原因だ。トップの蓋をばらすと、スロットルバルブの高さを調整するビスとナットが緩んでいた。ビスは小さいマイナスドライバーを使わざるを得ず、トルク不足になってしまったのだろう。最悪・・・ 自己嫌悪。 高さを合わせて、きっちり締めておいた。

負圧の取り出し口は、もともと使っておらず、樹脂製のキャップで塞いでいたニップルは取り外し、ビスで塞いだ。もう一組はホースでつないだ。多気筒のインテークマニホールドは気筒間をつなぐといいと、なにかで読んだことがある。

インマニを結ぶホースとダメ穴をふさいだビス

インシュレーターの交換

インシュレーターを取り替えてびっくり。キャブレターの芯がエアクリーナーボックスの開口の芯が、ぴったりとあっている。普通はそれが当たり前なのだが、我がWはキャブレターの方が1センチは下がっていて、自作のキャブレターハンガーで吊っているのだ。

なぜこうなっているかというと、このエンジンとキャブレターは、ヤフオクで同一車両から別々で出品されていたものを頑張って両方を落札したものなのだ。キャブレターにはパワーフィルターも付いていたから、インシュレーターはその重さを全て受け止めていたのだろう。

さらに、取り替えてみてわかったのが、いつのまにやらインシュレーターとキャブレターの勘合が、がばがばになっていたこと。長年かけてへの字に垂れたインシュレーターを、半年かけて引き上げた結果、こうなったのかもしれない。新しいインシュレーターには、メインスタンドがはずれるぐらい押さないと入らない。(言い過ぎだけど)

燃料コックの交換

左がついていた負圧式の燃料コックと、右が用意した負圧式ではない燃料コック。ちなみにRZ250用の互換品。燃料タンクがWMのアルミタンクなので、元の燃料コックがどこのものかはわからない。取付ピッチが合っていて安いからこれにした。なんと1500円でお釣りがきた。

左:負圧式燃料コック 右:燃料コック

燃料コックの上に溜まったアルミのくず。こんなのキャブレターに流れ込んだらたいへんなことになる。

アルミタンクだからかアルミの切粉

なのに

オンのパイプとリザーブのパイプが新旧燃料コックで逆で、オン側のパイプの先端のフィルターが穴に入らないのだ。仕方ないがオン側なら大丈夫だろうとフィルターは無しでいくことにする。

ONとRESのパイプが逆

とりついた燃料コック。

燃料コック交換完了

エンジンをかける。

おっ! アフターファイヤーが無いぞ なんて快適なんだ♪ ちょっと軽く流してこよう

134号線を東へ。鎌高前で江ノ電と記念撮影。

鎌高前の江ノ電とW

稲村ケ崎で江の島バックに記念撮影。おじさんにWをガン見される。

稲村ケ崎からのぞむ江の島

結局、アフターファイヤーは2次エアだったという結末。Mノズルのセッティングはこれからだね。

ガス欠にアイドリング不良 -W650にMノズル装着-

プラグをチェック

Mノズルを装着して、ハザテーションはおさまったが、アイドリングでのアフターファイヤーが止まらない話の続き。

アフターファイヤーは混合気が濃くても起きるということなので、スロージェットを逆に下げてみる。

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変わった気がしない。エアスクリューを開けて、さらに薄めの方向へ持っていく。

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アイドリングのアフターファイヤーは止まった。けれども8分の一ぐらいの開度で、パンパンおさまらない・・・

出だしの力感もなくなった気がする。やっぱりこれじゃ薄いのか? スロージェットを一気に62にしてみる。

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アイドリングも、開度8分1でも、アフターファイヤーが治まった。ただし、全くなくなったわけではなく、速いブリッピングをした後にアイドリングに戻ると、アフターファイヤーが出る。

そんな状態の会社からの帰り道。いつもより随分早くリザーブに入った。ジェットを交換するたびにガソリンをロスするせいで、燃費がどれほどのものかわかっていない。

Mノズルを装着するまでの燃費は、25km/L。基本、変化のない片道40キロの通勤なので、いつも同じようなところでリザーブに入る。それが今日はずいぶん早い。いつものガソリンスタンドまで30キロあるが、残りの2L でじゅうぶんのはず。

横浜新道に入る。8分の1のスロットル開度の妙な脈動を感じながら走り続ける。

その脈動がさらに妙な感じになってきた。スロットルとエンジンが連動していない。かぶったか?

あわてて走行車線に移りギアを下げる。エンジンブレーキで高まる回転に、プラグのかぶりを飛ばそうとスロットルを開けるもついてこない。クラッチを切ってみるとエンジンが止まった。

たまたま途中の出口のすぐ前だったので、そのままオフランプへ突入。料金所の前でWを路肩にとめた。

セルを回す。 エンジンが再び動き出した。そのまま料金所を抜ける。抜けてすぐにまた止まった。

これはガス欠だ・・・

オドメーターは108km。普段だったら、ここらでリザーブに入る。かなり燃費が悪い。

ガソリンスタンドを検索してみる。それほど遠くはないが、まず一般道に出るのにそこそこの上り坂を押さなければならない。

ああ重い

なんとか坂を押し登って息を整える。ここからは逆に下り坂。車の流れを見切ってWを押し出す。途中、信号をひとつ、惰性で通り抜ける。さらに急な下り坂を降りきったら左に曲がって、ここからはだらだらとした上り坂。

なんとかガソリンスタンドに到着。汗かいた。ハイオク満タン!


そんなことがあった数日後の帰り道。アフターファイヤーが止まらなくていやになってるところに、アイドリングが下がらなくなってきた。アイドルアジャストスクリューをゆるめても変わらない。アイドリングがあがるのは2次エアの吸入が考えられる。

これはやっぱり2次エアか?

インシュレーター以外にも疑っていいところはある。我がWには、負圧の取り出し口が片側2個ずつある。ひとつは太さが合わずにキャップをかけて塞いでいるもの。もう一つは負圧式の燃料コックのためのもの。

路肩にとめて塞いでいるキャップをいじってみる。なんかひび割れてるように見えるが、老眼だからいまひとつわからない。まじかここからか? 

エンジンをかけ、だましだまし走る。もうアイドリングは2500回転ぐらいだ。信号待ちではとてもじゃないがエンジンをかけていられない。

横浜新道に入る。意味もないがちょっと回せば直るかななんて思って加速したら、後ろに覆面がついてきて赤色灯を回し始めたのがミラーに映った。 やばい・・・ スピードを一気にゆるめる。

泣きっ面にハチだ・・・

CRキャブレターにMノズル装着

かぐや姫でも出てきそうな雰囲気

腰上の塗装が終わったのでエンジンの組み立てを始める。オーバーホールに伴うガスケット代がバカにならない話をしたが、今回はシリンダーのベースガスケットと、シリンダーヘッドガスケットを再使用した。これは、仮に漏れが発生したとしても、新品への交換が、腰下ほど大変ではないという理由から。

再利用の方法は、外したガスケットを掃除して、耐高音の液体ガスケットを使っただけ。シリンダーとシリンダーヘッドを共締めするボルトを締めると、境目からブチブチ液体ガスケットが出てきた。

ぶちぶちはみ出た液体ガスケット

話は前後するが、シリンダーの装着にはピストンリングコンプレッサーに、前回のクリアファイルから、もう少ししっかりしている、釣竿が入っていた透明のプラスチックの板を使った。これは悪くなかったが、適当に切ったため、ピストンリングの継ぎ目が弾けてしまった。きっちり作れば多分いいと思う。

ピストンリングコンプレッサー

ベベルタワーに隠されたベベルシャフトのスナップリングは、fishさんからの書き込みの前だったので、従来通りのスナップリングねじり入れスタイル。今回はスナップリングを3つ用意して立ち向かった。

苦労するベベルシャフトのスナップリング
スナップリングみっつ

組み上がったエンジン。シルバー、薄いガンメタ、ガンメタ、薄いガンメタのグラデーションがうまくいった。

腰上の再塗装が終わったエンジン
シリンダーヘッドまわりも再塗装

Mノズル

さて、今回のオーバーホールが負けっぱなしにならないために入手したのが、ファクトリーまめしば開発のMノズルだ。セッティングについて訊きたかったので、まめしばのオンラインショップから購入。(2022年8月17日現在、まめしばオンラインショップは利用休止中です。お体を悪くされたのでしょうか。心配です。)

現在のWの給排気の状態は、純正エアクリーナーボックス、イージーライダースの集合に、メーカー不明のスリップオンサイレンサー。

ジェット類は、MJ112、JN5180、クリップ4段、SJ52、AS1 ½となっている。これらを説明して、返ってきたセッティングがこちら。

MJ140、JN5177、クリップ6段、SJ58、AS1

う~ん濃い この濃くなったガソリンを燃やしきることができるのがMノズルの特徴らしい。ジェット類の手持ちがないからと言って、推奨セッティング以外で始めてはならないとブログで申されているが、ジェットニードルだけ、手持ちの5178にさせてもらって、メインジェットとスロージェットは新たに購入した。

メインノズルとジェットたち
ファクトリーまめしばのMノズル

ノーマルのCRのボアをエアクリーナー側から見た状態。

ノーマルのメインノズル

フロートチャンバーを開けて、フロートやバルブを取り去る。メインジェットの取り付け部の左右のビスを緩める。

フロートチャンバー内

するとはずれるのが中子。中子の上にのっているのが、純正メインノズル。

CRキャブレターの中子

Mノズルを所定の位置に収めたところ。なんだか神秘的。月光に照らされた竹の中から、かぐや姫が出てくるよう。

かぐや姫でも出てきそうな雰囲気

中子を戻すとこんな感じ。さっきの写真と比べてみると、Mノズルの存在感はすごい。

Mノズル装着完了

左右ともにMノズル装着完了。

両バレルともにMノズル装着完了

Mノズルシェイクダウン

エンジンを始動する前の儀式で、イグニッションオフのまま、チョークをひいて2回キック。

パン! うわっとアフターファイヤー

イグニッションオンにして、何回かキックするもエンジンがかからない。仕方ないセルを回そう(;´∀`)

エンジン始動。時折パンッとアフターファイヤーが入る。やはり濃いのか? とりあえず発進してみる。

おおっ なんか低速でのアクセルのつきがいいぞ! なんか爆発(燃焼だが)がつぶだった感じがする。鼓動感が際立ったようだ。

そのまま134号線まで出てみる。行け Mノズル! アクセルを開けて加速する。 

ババババババババー

ものすごいハザテーション。やっぱり濃いね。でも、これはきっといいよ。

時折、アフターファイヤーを響かせながら、家に帰るのだった。

改造車検合格から3か月にして、またエンジンを全バラに処す

開かれたクランクケース

改造車検に合格したのは12月の初め。それまでバイクに乗れなかった7ヶ月間を取り戻すべく、寒い冬もWで通勤していた。 (電熱パワーで厳寒の冬を越す!参照) しかし、それも2月の半ばまで。こんな無理してバイクに乗る歳じゃないわ! と、車通勤に切り替えた。

これで少なくとも1ヶ月はWを降りるわけだ。ということはチャンス。トランスミッションを組み直そう。なぜトランスミッションを組み直すのかというと、

トランスミッションをいじる -W650エンジンのレストア&モディファイ- で組みあげたトランスミッションが、改造車検後の問題点とクラッチレバーの重さ解消 にある通り、ダメダメだとわかったからだ。

このエンジンを組み上げてまだ半年も経っていないし、3000キロも走行していない。オーバーホールするガスケット代だけでも結構な額になる。それでも我慢できないぐらいのギアのつながりの悪さ。ここは負けを認めて、さっさと組み直そう。

ただ、負けっぱなしもなんなんで、今回のオーバーホールに合わせて新しいパーツを組み込むことにした。それは・・・

Mノズル!

ファクトリーまめしば開発のパーツで、CRキャブレターのメインノズルに換えて装着するもの。激変するパワーアップパーツらしく、前から試してみたいと思っていた。

エンジンの分解

W400とW650のエンジンをそれぞれ1回ずつ分解しているので、もうサービスマニュアルを見ずともバンバンばらしていける。

えっ? もう既にこんなにカーボンが溜まってるよ

早くもカーボンが堆積

3000キロの走っていないのに、ピストンとシリンダーヘッドにカーボンが溜まっていた。セッティングが濃いということなのか?

もう一つ気になったのか、オイルストレーナーのネットに沢山ついていたティッシュのくずのようなもの。なんじゃこりゃと思ったが、思い当たるのはモリブデングリスの基材ぐらいしかない。前回の組み立ての時に塗りすぎたということなのだろうか? 今回は薄塗りを留意しよう。

またしても部屋にエンジンがごろごろ

前回の分解の時に気になったミッションのベアリングのクリープ現象。ダメもとでねじロックを塗って組み立てたのだが成功だった。滑っている様子はない。

ミッションベアリングのクリープはねじロックで止められていた

さて、今回のトランスミッションの組み替えで、W650かW400のどちらのミッションを使うか悩む。反省してメーカーが設計したW650のものを使うか、それともやはり少しでもワイドにとW400のを使うか。

開かれたクランクケース

ただW400のミッションを使うとなると、二次減速比も変えなければならない。スペシャルワイドの広がりを、ローにも少し分配したのだが、それがいけなかった。よくある街角を曲がるのに、2速だと低いのだ。

かといって、フロントを1丁あげると2速が高過ぎそう。じゃあリアを変えるかと考えると、特注になるから時間も金もかかる。ああ、悩ましい・・・

結局、W400のミッションで、フロント1丁あげを選択。フロントスプロケットを注文した。

エンジンの塗装

せっかくバラしたので、前回納得できてなかったシリンダーを含めた、腰上の塗装をすることにした。

シリンダーを塗装

前回の塗装の何が納得出来なかったかというと、前にも書いたのだが、耐熱のつや消しシルバーで塗るとぺたっと平坦な印象に仕上がる。奥行きというか、重厚感が全くない。

今回手に入れたのはガンメタ。商品の口コミを見ると、ガンメタと言っても濃いシルバーぐらいということなので、ちょうどいいのではないかと思っている。このガンメタとつや消しシルバーを混ぜた薄いガンメタをシリンダーとシリンダーヘッドカバー。ガンメタをシリンダーヘッドに塗る。

シリンダーヘッドをガンメタに塗装
2次エア用のバルブカバーを塗装

これによってクランクケースから、ヘッドカバーまで、シルバー、薄いガンメタ、ガンメタ、薄いガンメタというグラデーションができる。

塗装はエアブラシで。このエアブラシはタンクがなく(内部的にはあるのかもしれないが)、コンセントにさしてすぐに使える手軽さが気に入っている。

塗装中のシリンダーとエアブラシ
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フランジはバフ仕上げにしようと磨いてみたのだが、鋳造による表面の粗さがひどく、あまり深追いせずに仕上げてみたら、「どうにもならない汚いものを磨いてみただけ」という印象になった。右が磨き前、左が磨き後。

左磨き後、右磨き前のフランジ

追い込んでいないとはいえ、中途半端な仕上がり・・・

どうにもならない汚いものを磨いてみただけというフランジ

仕方がないので、これも塗装することにした。こちらが塗装前

フランジ塗装前

こっちが塗装後

フランジ塗装後

なんかいいのができそうだ。

カムシャフトとベベルシャフト -W650エンジンのレストア&モディファイ-

押されているロッカーアームを移動させてしまって、元に戻せなくなったために、カムシャフトキャップを外さなければならなくなった話の続き。

カムシャフトキャップの固定ボルトを全て緩めてカムシャフトキャップを浮かすと、カチンという音と共にスプリングに押されてロッカーアームが正しい位置に戻った。固定ボルトをそれぞれの穴に戻していく。

太いボルトをトルクレンチで規定トルクで締め付け、細いボルト締め付けを始める。徐々に締め付ける力を上げながら3周。ここから規定トルクで締め付けていく。

問題のボルトに到達。さっき、いくら締め付けてもトルクレンチがカチっと言わなかったボルトだ。

さっきと同様、いくら回してもヌルヌルと手ごたえは変わらずにトルクレンチは回り続ける。

マジかー 絶対やべえ

そう思ってトルクレンチを回し続けていた時にそれは起きた。

ピンッ

小さく乾いた音と共に、トルクレンチにかかっていた手応えがなくなった。

ピンッておい 終わったな・・・

しばし動きを止めて呼吸を整える。そしてそっとボルトを摘み上げた。

ボルトが途中から折れている。シリンダーヘッド側のネジがやられていると思ったが、そうではなかった。そうか、雌ネジがダメになったのなら、あんな音はしないか。

締めている時に折れたボルトと、緩めている時に折れたボルトって、どっちが摘出大変なんだっけ? シリンダーヘッド外さなきゃダメかな? ヘリコイルぶち込まなきゃダメかな?

これからやらなければならない作業を思い浮かべ、軽く意識を失いかけながらカムシャフトキャップのボルトを緩める。

残ってたボルトの先端。

幸いにも指で回して取り去ることができた。それにしてもこのボルト、過去に過度なトルクで締め付けられていたのか? 代わりのボルトをW400をバラしたパーツを入れておいた袋から取り出し、カムシャフトキャップを組み立てた。

バルブクリアランスの測定作業に復帰。でも今思えば、動かしてはいけないロッカーアームを動かしたことによって、折れる可能性があったボルトを取り替えることができたわけだ。ある意味持ってるぜ

測定の結果、二つのシムを新たに購入し、バルブクリアランスの調整を終えた。

ベベルタワーを組み立てる

話は前後するが、シリンダーヘッドを組み立てる前に戻る。シリンダーヘッドを組み立てる前に、ベベルシャフトにスナップリングを入れておけとサービスマニュアルに書いてある。シリンダーヘッドを取りつけると、ベベルシャフトが上のベベルギアケースに重なり、入れづらくなるからだろう。言われたとおりにやろうとした。

このスナップリングは、上下2分割になっているベベルシャフトを固定するためのものだ。スナップリングプライヤーで広げつつ、ベベルギアに噛み合うためにセレーションが切ってあるベベルシャフトの先端からスナップリングを入れた。

えぇっ?

ベベルシャフトにかけられたスナップリングは、明らかに変形して広がっている。ただ広がっているだけでなく、細くなった部分から折れるように曲がってしまった。思い起こせば、このスナップリングをばらした時も、こんな感じになっていた気がする。

途方に暮れながらここで作業は中断した。サービスマニュアル的には、このスナップリングを入れておかないと、シリンダーヘッドを組み立てられないからだ。

ウェビックの純正部品販売で注文。念のため多めにと思ったが、在庫が2個だけだった。

スナップリングが家に届いた。他の作業を進めたかったのと、シリンダーヘッドを組み立ててもスナップリングを入れられそうなので、すでにシリンダーヘッドはついている。前回の失敗をふまえて、ベベルシャフトの途中からスナップリングを入れることにした。先端から入れると、越えなければならない無駄なふくらみがある。

スナップリングプライヤーでスナップリングを広げながらベベルシャフトにスナップリングを入れる。必要以上にスナップリングを広げないようにだ。だが、入ったスナップリングは広がってしまっていた。

これ どうすればいいんだよ?

同じことで困った人がいないか検索してみたけど出てこない。

あと1個しか残ってないスナップリングを手に途方に暮れる。

広げないようにスナップリングを入れる。それはもうこれしかない。スナップリングをねじって広げ、ベベルシャフトに入ったら戻すのだ。

やってみた。入った。そこから本来のはめる場所に移動する。これもおっかなびっくり。しかもすげえやりづらい。上ベベルシャフトがスプリングに押されて下がってくるので、ドライバーのビットでつっかえ棒をしながらの作業。

はまった。でもなんとなくゆるい。ただこれより広げずに入れることは無理。つまり誰がやっても、これぐらいゆるい感じになるはず。

ああ 走ってる途中にこのスナップリングがぶち折れたらどうなる? 

上のベベルシャフトは下がってベベルギアからはずれるだろうな

するとカムシャフトの回転が止まるだろ

バルブは燃焼室に突き出たまま止まるんだよ

ヒョーーーー

不安をかかえたまま、ベベルタワーのカバーを引き上げるのであった。

シリンダーとシリンダーヘッド -W650エンジンのレストア&モディファイ-

カムシャフトをセット

エンジンの腰下の部分が完成した。作業はエンジン上部へと移動していく。

シリンダーとピストン

ピストンヘッドには物凄い厚みのカーボンが溜まっていたので、これを除去する。

ピストンヘッドにこびりついたカーボン

カーボンを剥がしてみると、ピストンヘッドはツルツルだった。こんなんでもカーボンって溜まるんだね。

カーボンを取り去ったピストン

コンロッドにピストンを取り付けて、シリンダーを装着する。ただし、Wのピストンは左右同じ位置にある。1人だと非常にシリンダーに入れづらい。

クリアファイルを切って、ピストンリングコンプレッサーのようなものを作り、シリンダーをメインチューブから紐で吊るして作業する。

クリアファイルごとシリンダーに吸い込まれる。

だめだ、薄すぎた

単気筒なら  

多気筒でも、せめてピストンの位置が違えば

スマートに進まない作業は気持ちが悪い

シリンダーヘッド

シリンダーヘッドは燃焼室はもちろんのこと、ポートにも相当なカーボンが溜まっていたのでバルブ周りをすべてバラして掃除をした。

バルブスプリングコンプレッサーでバルブ周りを分解する

カーボンが堆積したシリンダーヘッド

シリンダーヘッドにもカーボンが堆積

カーボンを取り去ったシリンダーヘッド

カーボンを取り去ったシリンダーヘッド

そのシリンダーヘッドをシリンダーの上にかぶせる。シリンダーとシリンダーヘッドは共締めだ。

ボルトを締め終わったら、フライホイールの上死点マークをあわせてから、シリンダーヘッドの上に指定の回転位置にあわせてカムシャフトを載せる。その上からかぶせるようにカムシャフトキャップをセットする。このカムシャフトキャップというのは、ロッカーアームがじゃらじゃらくっついている、カムシャフトを固定する部品だ。

カムシャフトをセット

2種類の太さの何本ものボルトを仮締めしてから、太い方のボルトを規定のトルクで決められた順番で締めていく。太い方が締め終わったら、続いて細い方を締めにはいる。

ここで、なにやらおかしい1本が現れた。締めても締めてもトルクレンチがカチって言わない。めねじがダメになっていく感覚に似てる

( ̄▽ ̄;)

意味が無いとわかっていても、トルクレンチにかける力を瞬間的に強めて、矯正的にカチッといわせる。よし、これでOK(と、自分に言い聞かせる) 

バルブクリアランス調整

ここから、バルブクリアランス調整に入る。Wのバルブクリアランス調整は変わっていて(いや、これが普通なのか?)、ロッカーアームとバルブの間に挟んだ、シムで調整する。よくある(いや、こっちがマイノリティか?)ロッカーアームの先端のネジで調整するタイプではない。

このタイプのメリットは、ネジの緩みが起こり得ないという信頼性の高さだが、適した厚みのシムがなければ調整は一切できないデメリットがある。今回はW400分のシムもあるので多少安心だ。

このシムを取り替えるにはロッカーアームが邪魔になるのだが、Wは面白い方法で解決している。ロッカーアームが水平に移動するのだ。これによってカムシャフト周りを分解することなく、シムを交換してバルブクリアランスを調整できる。

1番シリンダー側からシクネスゲージでバルブクリアランスを測定し、それを一つ一つメモしていく。続いて2番シリンダー。ロッカーアームの下にシクネスゲージを差し入れ・・・

あれ? シクネスゲージが入らない

ロッカーアームを揺さぶってみても、カタっとも動かない。こんなミッチミチなバルブクリアランスってありか? 他のところのシムと替えてみよう。そう思ってロッカーアームをずらし始める。

むむ 動かない (そりゃそうだろ)

プラスチックハンマーで叩いてみよう (やめとけって)

少しずつ動いてるぞ (そろそろ気づけって)

カチン!

何だこの音は? 抑えられていたものが解き放たれて、伸びあがったところを金属の壁にぶつかったような音だ。

(抑えていたロッカーアームが外れてバルブスプリングが伸び、バルブがバルブシートに当たった音だよ)

うっわー そうか 1番シリンダーが圧縮上死点の時は、2番シリンダーは排気上死点だ。ロッカーアームがバルブを押していたんだ。

バルブを指で押してロッカーアームを元の位置に戻そうとする。

いやあ 無理だってわかってるさ ちょっとやってみただけだよ

カムシャフトキャップをばらさないとダメだな あのボルト せっかく締まったのに(いや締まってないって)

おろかな自分を呪いながら、カムシャフトキャップのボルトをゆるめはじめるのであった。

クランクケースカバーを仕上げる -W650エンジンのレストア&モディファイ-

開口があり、かっこいいW400のスプロケットカバー

クランクケースの両側に取り付くカバーを綺麗に加工する。バフで鏡面仕上げも考えた。ただ、以前XLR250のシリンダーヘッドカバーをバフ仕上げしたのだが、ツルツル、ピカピカを維持するのはなかなか大変で、結局そのうち白く曇らせてしまった。

そんな経験を踏まえて、今回はヘアラインぐらいの仕上げで、耐熱クリアを吹いて終わりにすることにした。

作業はベビーサンダーでやるから簡単。昔は耐水ペーパーでゴシゴシ磨いていた。指は痛くなるし、さきっちょが灰色に染まるし大変だった。

一旦軽く鏡面仕上げっぽくなる。腐食していた部分はうっすら跡が残るが、深追いはしないでおこう。

鏡面仕上げぐらいまで磨かれたクラッチカバー

右側のベベルギアケース、クラッチカバー、左側のおにぎりは形が簡単なので、作業はあっという間。ところが、スプロケットカバーはそういかない

W650のスプロケットカバーはのっぺりとして磨きやすそう。

のっぺりとしたW650のスプロケットカバー

だが、うちのWはW400のスプロケットカバーを使っている。W400のスプロケットカバーは、いくつもの開口があり、かっこいいのだ。

今までは純正のままの黒で使用していたが、これを機に塗装をはいで、アルミの地肌を出す。まずは剥離剤の代わりにブレーキフルード漬けにしておく。

1週間ほどほったらかした後に見てみるも、まったくなんの変化もなし。なんちゅー塗膜。仕方なくベビーサンダーで作業を始めるが、厚い塗膜に相まって、いくつもある開口のおかげで作業が遅々として進まない。

苦労の末に半鏡面まで持っていき、ヘアラインの流れに頭を悩ませつつも、下処理は完成。耐熱クリアを吹くと、想定していなかった、深みのある雰囲気に仕上がった。

開口があり、かっこいいW400のスプロケットカバー
深みのある感じに仕上がったクランクケースカバー
深みのある感じに仕上がったベベルギアケース

シリンダーの塗装

 そのモデルにもよるがw650のシリンダーの色は黒になっているこれはシリンダーを黒にすることによって、レベルタワーの存在感を際立たせようというカワサキの狙いだと思っている。

それはそれで悪くないのだが、インスタグラムでシリンダーがシルバーのW800の写真を見ると、クランクケース、シリンダー、シリンダーヘッドの繋がりが出来上がり、バーチカルツインらしいエンジンの存在感が感じられるのだ。

シリンダーはシルバーだろ

ということで、シリンダーをクランクケースと同じ耐熱シルバーで塗装した。左右のカバーとは違い、相変わらず平坦な感じの耐熱シルバー。クランクケースからの繋がりで、この平坦さがどれほど見た目に影響を与えるか心配だ。

耐熱シルバーを吹いたシリンダー

クランクケースを組み立てる -W650エンジンのレストア&モディファイ-

つぶれたプラスチゲージを測定

エクストラスペシャルワイドミッションが完成したので、クランクシャフトとバランスシャフトのメタルクリアランスを測定する。

この測定にはプラスチゲージというものを使うのだが、持ってないのでアストロプロダクツ買いに行く。店について見ると、プラスチゲージは測定範囲によって3種類あった。どれが適しているのかわからない。

しかも一つ800円位とそこそこの値段。たいして使うものでもないので、全部買いするほど富豪ではない。今日買うのは諦めて店を出る。

帰宅してからサービスマニュアルで測定すべき、クリアランスを確認する。それをもとに後日アストロプロダクツでプラスチゲージを購入。

プラスチゲージとは何か

W650のクランクシャフトには、滑り軸受が採用されている。滑り軸受けというのは、メタルという金属で軸を受けていて、軸とメタルの間には微小な隙間があり、オイルで潤滑されている。

この隙間がメタルクリアランスで、狭すぎると油が切れて熱を持ち、広過ぎるとガタが発生し振動する。この隙間がどれぐらいあるかを測定するのがプラスチゲージだ。

測定方法はいたって簡単。プラスチゲージを軸とメタルの間に挟む。

プラスチゲージをセット

規定トルクで組み立てて分解する。

トルクレンチで規定トルクで締め付け

するとプラスチゲージは潰れて広がっている。その潰れた幅をプラスチゲージのパッケージにプリントされた目盛りでクリアランスを読み取る。

つぶれたプラスチゲージを測定

あれだな 挟んで潰れる細いのがプラスチで、パッケージの目盛りがゲージだな。 うんうん

クランクシャフトの4か所とバランスシャフトの2か所を測定して、規定の範囲に収まっていることを確認。さらにコンロッドのメタルクリアランスも確認する。

コンロッドのメタルクリアランスをプラスチゲージで測定

思わぬ干渉

いよいよクランクケースを組み立て始める訳だが、その前にバランスシャフト、クランクシャフト、トランスミッションを入れた状態で仮組みをしてみる。

トランスミッションをニュートラルにして、ロアケースから垂れ下がった3本のシフトフォークを、それを待ち構えるアッパーケースに収められたギアの溝に入れるのだが、これがなかなか難しい。

何回か仕切り直してようやく収めるも、何かおかしい。上下のクランクケースが閉じきっていない。明らかに何かが挟まっている様子。

クランクケースを開いて中を確認してみると、ギアの歯が当たって傷ついているところがあった。クラッチレリーズを取り付けるボスが、クランクケースの中にポリープのように飛び出ている。

当たっているのはドライブシャフトの1速ギア。W400のギアに変えたから大きくはなっている。ただクラッチレリーズは、W400にだってある。一体どういうことだ?

新聞にくるんで、ダンボール箱に突っ込んであったW400のクランクケースを引っ張り出す。なんと、ボスがない。潔いほどにきっぱりとない。

W400にはボスが無い

なるほど、じゃあ切ろう(´・ω・`)

しっかり養生して、ポリープ切除手術を開始。ルーターを使って削っていく。良性のポリープだったので、全摘せずに干渉する部分だけ切除。

ポリープの切除手術

クランクケースを塗装する

パーツクリーナーを使っても落とせない染み付いた汚れや、前輪が巻き上げた小石などで傷ついてしまったクランクケースを塗装するのに使うのは、つや消しシルバーの耐熱スプレー。大昔にXLR250のクランクケースをこの耐熱つや消しを塗ったことがあるが、なんとなく奥行きのない平坦な感じになってしまったのを覚えている。はたして今回はどうなるだろう。

なかなか面倒くさいマスキングを終えて、スプレーを吹く。やっぱり平坦なしあがりに。なんでこのスプレーはこんなにも平坦になるんだろう。多分メタリック感を出す粒々の大きさが相当細かいんだろうな。だから均一な銀になってる。平坦なんて言ったらメーカーは怒るな。

クランクケースの塗装

クランクケースを閉じる

クランクケースの合わせ面は液体パッキンを使う。このパッキン、可使時間が短いので手際の良い作業が必要。そして、薄く塗らなければならないらしいのだが、薄いって具体的にどれぐらいのことなんだろうか?

うすーく丁寧に、しかし手早く発見、無理を得るとクランクケースを食べ、クランクケースを閉じる合わせ面が練習密着しているのを確認してからボルトを・・・

ボッ ボルト!

なんと、手早く作業をしなければならないというのに、ボルトが分解した時にビニール袋に収めたままになっていた。ロアケースのボルトも含めると、その本数は30本近い!(汗) こいつらを1本1本掃除して、モリブデングリスを塗って締め付けなければならない・・・

先の読めない自分を呪いながら、ボルトをふきふきグリスを塗り塗りするのであった。

トランスミッションをいじる -W650エンジンのレストア&モディファイ-

トランスミッションのドッグクラッチ

完全にばらし終えたW650とW400のエンジン。トランスミッションに注目していく。

ボールベアリングの滑り

トランスミッションのベアリングのはめあい部分のクランクケースが擦れて光っている。これはボールベアリングが滑っているのではないか?

ベアリングのクリープで擦れて光ったクランクケース

トランスミッションはクランクケースにボールベアリングで支えられている。このボールベアリングには溝が掘られ、クランクケースの溝と共にはめられたキーによって、スラスト方向の動きが抑制されている。

回転方向は上下のクランクケースに挟まれていて、その締め付け力によって固定されている。よって構造的にはこの滑りを抑えることは出来そうにない。

この滑りは、調べてみると、クリープと呼ぶらしい。無い方がいいらしい。そりゃそうだろう 接着剤で固定するのもありらしいので、組み立てる時はネジロックで固定することにしよう。

ポジティブニュートラルファインダー

Wのトランスミッションにはポジティブニュートラルファインダーという、停止時に1速からニュートラルに入りやすい機構が設けられている。これによって信号待ちでニュートラルに入らず、1速と2速を行ったり来たりすることがない。

逆にこれがあるおかげで、動いていない時に2速以上に入れることができない。押しがけする時、1速よりも2速の方がかけやすい。

大体止まる時は1速まで下げずに2速からニュートラルに入れてるし、そもそもそんな機能がついてるとは知らないから、1速からニュートラルに入れる時も足の操作を加減してるし。

ポジティブニュートラルファインダーいらねー

じゃあ、どうやってポジティブニュートラルファインダーの息の根を止めるか。ポジティブニュートラルファインダーがその機能を実現するために特別に用意されているものは、直径4ミリぐらいのボールが三つだけ。

このボールがギアのシャフトに接する面に120度刻みで埋め込まれている。ギアが回転している時、つまりバイクが動いている時は、ボールは遠心力によって穴の中に隠れている。

ポジティブニュートラルファインダーの球

バイクが止まるとギアの回転が止まり、遠心力を失ったボールは下方に移動する。シャフトにはボールの直径の半分の深さの溝が掘られており、移動してきたボールはその溝にはまる。

ポジティブニュートラルファインダーの溝

ギアはトランスミッションのシャフト上を軸方向に、1速の位置、ニュートラルの位置、2速の位置と移動する。シャフトの溝は1速の位置とニュートラルの位置の間に掘られているため、ボールがつっかえてしまい2速の位置までギアが動くことができない。

このボールにはエンジンの外へ出ていってもらおう。

エクストラスペシャルワイドミッション

W400とW650のミッションを組み合わせて、エクストラスペシャルワイドなミッションを作る。使うのはW400の1速2速、W650の3速4速5速だ。1速はW400で5速はW650で決まり。逆だとクロスになってしまうから。

境目になるところのギア間の減速比の変化率が大きくなってしまうので、どこを境目にするかが悩みどころ。低いギアの方がつながりの悪さをパワーで何とかしてくれるのではないかと思うのと、1、2間より2、3間の方が無理がなさそうなのでここにした。

アッパークランクケースの上に組み替えたドライブシャフトとアウトプットシャフトを仮組みして動作を確認する。

アッパーケースに仮組み

各ギア、きちんと噛み合っている。変速動作を再現してギアを左右に移動させて、隣のギアとドッグクラッチでの噛み合いも問題なさそうだ。

トランスミッションのドッグクラッチ

念のためロアーケースに組んでみると、なぜかアウトプットシャフトが収まらない。よく見るとキックシステムのギアと1速のギアがぶつかっている。

なんで?

ああ そうか 

キックペダルを踏み下ろした回転力は、アウトプットシャフトの1速ギアを回転させる。このギアはニュートラルの時はアウトプットシャフトとは噛み合っていないのでアウトプットシャフトは回転しない。回転力はアウトプットシャフトと噛み合っているドライブシャフトの1速のギアを回す。このギアはドライブシャフトそのものなので、ドライブシャフトが回転し、クラッチを経由してクランクシャフトを回転させる。

エンジン後部に備わったキックシステム

つまりキックシステムと関わる1速ギアは、W650のものでなければならないのだ。

まじか・・・

エクストラスペシャルワイドミッションのポイントは、W400の1速ギアを使うことだというのに。

はたと思いつく。

W400用キックオプションってあったじゃん

すぐにカワサキの純正部品を調べてみると、アッセンブリーでは廃番になっていたが、スパーギアだけはまだ売っていた。ついでにW650用のキックスパーを調べてみると、こちらは廃番。部品が入手できなくなっていくのは怖い。急いで注文。

届いたW400用キックスパーギアと、W650のそれ。大きさが違う。

左がW400のスパーギアで右がW650のそれ

これを組み込んでエクストラスペシャルワイドミッションの完成。しかしこのセットでいくと、ザムに特注しているリアスプロケットの丁数では合わないことに気づく。だめもとでザムの担当者に丁数の変更願いをメールしてみる。

数日後

まだ製作していなかったということで、なんとOK。助かった(;^ω^)

※追記 このミッションの組み合わせは、まったくお勧めできません。いいところもありますが、悪いところがものすごく悪いので、決してまねしないでください。