カーボンフェンダーをつくろう その2

アップフェンなら成り立った

取付金具の検討

フェンダーの製作と並行して、取付金物の製作も進めていた。アウターチューブ側は、既成のものにするしかない。ZX6Rのアウターチューブに合うサイズの、チープじゃない金物にしたい。そこで見つけたのがゼファー400のスタビライザー。しかしこれは、タイヤとの離隔が無さすぎてダメ。いつかこれはヤフオクに出品することにしよう。

ゼファー400用のスタビライザーの部品を利用しようと思うも無理なことがわかった

なかなか見つからなかったが、なんとモンキー用の部品で、ちょうどいいサイズのクランプを発見。すぐに購入して届いたものも、悪くないでき。

これと型にしたフェンダーをWにセットして、このふたつを結ぶ金物の試作を、透明PET板で作った。以前、シートを作った時の余りだ。

透明プラスチック板で、金具の試作品をつくる

金具の製作

しっかりした感じを出したいので、4ミリ厚のアルミ板を購入。CADで書いてプリントしたものを型紙としてけがく。

CADで書いた金具を型紙として、アルミ板にけがく

バンドソーをジグソーを駆使して切り出す。

切り出されたアルミ板

作業台にクランプし、曲げる側を厚鉄板でサンドして、大きいモンキーではさんで曲げる。曲げ角度はスラントゲージで測定してそろえる。

曲げ角度をスラントゲージで測定しながら曲げる

曲げ完成。

曲げ終わったアルミ板

やすりやサンダーで仕上げた。見た目は結構いい感じ。

完成したフェンダー取付金具

完成した金具でフェンダーを取付

ところが、透明PET板で作った試作品は厚みが3ミリだったこと。型にしたフェンダーは雄型だったため、できたフェンダーは大きくなっていたこと。二つの理由でフェンダーが収まりきらない。

金具が厚すぎてフェンダーに密着しない
金具が厚すぎてフェンダーに密着しない

フェンダーを削って納めるも考えたが、金具の厚みを3ミリで作り直すことにした。

作り直した金具での取付

3ミリ厚のアルミ板でもなかなか厳しい上に、フェンダーの取り付け面とアルミの曲げを合わせるのにかなり苦労した。しかもフェンダーの裏側のナットの接触する面が、表側の面と平行でないため、金物へのボルトの密着が悪く、今3なでき。

完成したフロントフェンダー

しかも、型のフェンダーの切り出しを、左右アンバランスなまま進めてしまい、当然のことながら、出来上がったフェンダーも左右アンバランスなものになってしまった。前から見ると、、右上唇をあげているシニカルな表情。

取り付け金具の高さを調整して、シニカルさを減少させ、作業終了。いやー、色々と反省の多いフェンダー製作だった。

と、思いながらWをしまおうと前進させると、

フロントタイヤから「キュッ」という音が。この音は、ゴムとプラスチックが擦れる音では?

まさかタイヤとフェンダーが当たっている? いやいや、そんなはずはない。クリアランスはしっかりとってある。気のせいに違いない。

そう自分に言い聞かせながら、さらにWを押し進め、バイクテントの所定の位置でフロントブレーキをかけた。

「キュッ」

またあの音・・・

そこで突然腑に落ちた。倒立フォークのフロントフェンダーは、アウターチューブに取り付けてはダメだということを。倒立フォークのバイクたちが、わざわざアクスルシャフト支持部からステーを上方に伸ばしてフェンダーを支えているのには、理由があるということを。

ごった・・・

※ごったというのは、大切なポイントを見逃して失敗した時に使うセリフ。しんごったの略。

スタビライザーを手に入れたり、厚み違いの金物を作り直したりしたことが走馬灯のように脳内を流れる。しばししばし硬直。

まあ仕方ないので、フォークが縮んでもタイヤが届かないところにつければいいやと、アップフェン仕様にする。なんかかわいい。

アップフェンダーとなったが、ちょっとかわいい

いろいろ勉強もしたし、次はもっとうまくできるはず。

カーボンフェンダーをつくろう 

完成したカーボンフェンダー(クリア塗装前)

フェンダーは必要か?

倒立フォーク化は、ほぼ完成した。なぜ、「ほぼ」かというと、フロントフェンダーがついていないからだ。フォークはZX6Rのものだから、それ用を手に入れれば、あっけなく完成するかもしれない。しかし、我がWに装着したZX6Rの年式のフロントフェンダーは、インナーチューブを保護する部分のボリュームがかなりでかいのだ。これは我がWの全体的なイメージにはそぐわない。

雨の日は基本的には走らない。だからフロントフェンダーなんて無くてもいいと思っていたのだが、晴れていても案外路面に水はある。それは車が出すエアコンの結露水。信号待ちで小さな水たまりができる。それを気づかず乗り入れると、Wのフロントタイヤにまとわりつく水。

その水は遠心力に負けてフロントタイヤから引き剥がされ、大部分はWのエンジンを微少ながら冷やす。そいつらより少しだけがんばったやつが、ヘッドライトの前方の空中に放り出される。

そいつは、やがて勢いを失い、後方へと軌道を変える。そして必ずと言っていい確率で俺の顔面にヒットするのだ。

これがウザイ

「早くフェンダーをつけないと」 と思う瞬間だ。

どんなフェンダーにする?

どんなフェンダーにしたいかと言うと、やはりショート。他車流用で、いいのがないかヤフオクで検索の日々が続く。

前々から気になっていた、カーボンもいいなと思っている時にみつけたのが、ネクスレイのフェンダー。GB350やZ650RS用があり、なかなかかっこいい。ただし値段もそこそこする。どうせ取付金具は使えないし、カーボンで自分で作るのもいいなって気になってくる。

でもなぁ フェンダーみたいな形は、ごまかし効かないよなぁ

「カーボン 自作」で検索してみる。なんちゃってカーボンで、元の製品にカーボンクロスを1枚貼り付ける方法があるのを知る。FRP資材販売サイトで紹介していたのは、車のボンネットをなんちゃってカーボンにする過程。なるほど それもありだな とも思う。

フェンダーの自作

ということで汎用のフェンダーを入手。これを自分の好みの形に切ってあぶって曲げて加工する。

既製のフェンダーを切ってあぶって曲げて、型にする

取付金具とつながる部分は、パテを盛って、上部が平らな山を作る。くるむのはやめて雄型にすることにしたので、この山のエッジが出せるのか、ちょっと疑念あり。

完成した雄型フェンダー
取付金具を受ける部分を平面にする

カーボンクロスなどの材料は、なんちゃってカーボンボンネットを紹介していた販売サイトで購入した。見た目がカーボンカーボンする、綾折りというやつにした。離型剤は、スーパーで買った洗濯糊。専用の物は高価だが、成分は同じらしい。

離型剤は安い洗濯のりで代用

カーボンクロスを切り出す。高いのでギリギリサイズ。端からほつれていくので、マスキングテープを貼って切ってみた。

カーボンクロスを必要な大きさに切る

1枚積層するのにどれだけの樹脂が必要なのか検索する。300g/㎡ぐらいみたいなので、それを基に樹脂を混合する。刺激的に臭い。これは怒られるやつだ。つうか体にかなり悪そう。本気のマスクが必要。

始めの積層の準備は万端

雄型に樹脂を塗りたくったあと、カーボンクロスをのせる。はっきり言えることは、ギリギリサイズはアウト。ケチらずに少し余裕を持った方が失敗しない。

仮に紙でこのフェンダーをくるんだら、絶対しわができるだろうが、カーボンクロスは3次元曲面に、きれいに張りついた。そのためには、端のマスキングテープは剥がさなければならない。マスキングテープをはがすと、カーボンクロスの繊維を引っ張るので、うかつにやると繊維が抜けたり、乱れたりする。これが、ギリギリサイズだと良くない理由。

直射日光で硬化を促す いいのか悪いのか・・・

縁に厚みをつくる

2層重ねたところで型からはずしたカーボンフェンダー

2層重ねたところで、型からはずした。3層目の縁をくるむことで、縁の厚みを出すためだ。型からはずしたら整形し、縁の裏側に厚みを出すための芯となるよう、樹脂をひたした紐をはりつける。

縁の厚みを作るために紐で縁取る

硬化したところで、3層目の準備をする。カーボンクロスは大きめに切る。くるむのだから当然と言えば当然だが。

3層目のカーボンクロスを準備

くるむところまで一気にやると、失敗する予感しか無いので、縁の手前まで樹脂を含浸させることにした。くるむのは翌日にする。

2段階にした、くるみ作業だが、クロスの復元力に負けて、簡単な作業ではなかった。どうしても、くるんだクロスが、はね起きてしまうのだ。ヒートガンで硬化を促進させてはみたが、あまり効果はなかった。くるんだクロスの先端をマスキングテープでとめる。最終的には瞬間接着剤で固定してから樹脂を含浸させた。この方法が正解かもしれない。

縁をくるんだカーボンクロスは、裏側でマスキングテープによっておさえる

表面の平滑化

3層の積層が終わった。表面の仕上げをするために、樹脂だけを2回塗った。最後の1回はインパラの樹脂とした。インパラを使う理由はわかるが、ノンパラを使う理由はわからない。接着強度だろうか? ここから仕上げのために、耐水ペーパーで削っては樹脂を塗るを繰り返す。もう何度やったかわからない。なかなか平(曲面だが)にならず苦労した。

仕上げのために樹脂を何度も塗り重ねる

できあがってみると、なかなかいいんじゃないの? というでき。ツヤが出ると初めてわかるでこぼこも、なんとか抑え込めた。ただ、この先とんでもないことが待っていることに、今は気づきもしないのである。

完成したカーボンフェンダー(クリア塗装前)

ステムシャフト圧入 -W650を倒立フォーク化-

アンダーブラケットにステムシャフトを圧入する

ミスミに注文していたステムシャフトの調整用カラーが届いた。

アンダーブラケット側はブラックアルマイトで、トップブリッジ側はホワイトアルマイトだ。なんでこうしたんだっけ? どっちもブラックでよかったような。

測定してみると、ほとんど指定の大きさに作られていた。加工公差の-0.2で、求めている寸法に近くなる作戦は失敗したようだ。これはもう手作業で削るの確定だ。

圧入方法の模索

ステムシャフトを抜いた時のように、油圧ベンダーを使ってステムシャフトを圧入する。

ステムシャフトを抜いた記事はこれ

ただ、その時はプレスされる物が短かったので、油圧ベンダーのプレートに空いている穴に溝型鋼を差し込んで、そいつで油圧を受け止めたが、今度は少なくともステムシャフトの長さ分は、油圧を受け止める受けを延長して作らなければならない。

油圧が4tとして(根拠は無い)それに耐える引っ張り強度のLアングルを柱として、それに耐えるせん断強度のボルトかぁ なんか結構、金かかりそうだな・・・

と思っていたある日の通勤電車の中。なんか昨日呑みすぎたからだりぃ スマホを見るのすら疲れるので、ドア横の椅子の仕切りによっかかって目を閉じ、思考をめぐらす。

油圧を簡単に受け止める方法はないか?

はっ!

単管パイプで組めば材料代かからないじゃん!

会社にたくさんある単管パイプと直交クランプで、門型プレスを作るのだ。

ステムシャフトに調整用カラーを圧入

日曜日に出社。早速、単管パイプ門型プレスの作成を始める。元気よくと言いたいところだが、昨夜は花見で呑みすぎ。軽いめまいすらする。

棚から2本出した単管パイプに、油圧ベンダーのプレートの穴を利用して油圧ベンダーを固定する。圧を受けるのはこの単管パイプの他にもう2本。接触箇所は合計8箇所だから、4tとして1箇所500キロ。それぐらいは大丈夫だろう。

その4本の両端から合計8本の柱を下げて、40センチ下に油圧を受け止める台を作る。書くとあっという間だが、ああだろこうだろ3時間はかかってしまった。倒れそうだ。

単管パイプ門型プレスが完成した。

単管パイプと油圧ベンダーで作った門型プレス

ここからが本番。まずはカラーのツバの外径を少し小さくする。これは基本外径とツバの外径の差のミニマム値があり、どうしてもほしい数値で作ってもらえなかったため。ここは精度がいらないところなので、グラインダーでさっさと削る。

次に内径を測定する。27.9ミリ指定で、測定値は28ミリ。ノギス補正で28.1ミリだ。内径の目標値は28.13ミリなので、このままいけるかも。試しに入れてみることにする。

カラーをトーチで炙る。

圧入前にトーチであぶる

熱膨張の計算だと、たいして大きくはならないけど念のため。アチアチやりながらシャフトを通して、押しパイプをかぶせて単管パイプ門型プレスにセットした。

コスコス 油圧ポンプのレバーを上下させる。クッションで敷いておいた薄ベニヤに、ステムシャフトがめり込んでいく。

なんかこれはヤバイ

導入部分でこうだと、最後までカラーを押しきれない未来が浮かんできた。油圧をリリースして、ステムシャフトを取り出す。カラーは手で入れたところからたいして進んでいないところで、ガッチリ止まっている。プレスを使って抜くも、結構極まってた。

内径を削って広げることにする。カラーの内径より細いパイプにサンドペーパーを両面テープで貼り付け、カラーを通し、少しづつ回転させながら軸方向に反復移動させる。

調整用カラーの内径を拡大する

目標は0.1ミリ。アルマイトがきれいになくなるころに、0.1ミリ削れた。ステムシャフトに入れてみると、アンダーブラケット部分よりかすかに1段細いベアリング部分との手ごたえが軽くなっていた。これでいってみるか。

表面を滑らかにするために600番のサンドペーパーで仕上げて再度挑戦。ガストーチで炙ってからステムシャフトを通し、押しパイプをかぶせて単管パイプ門型プレスにセットした。

この段階で、さっき止まったところまで入っている。これはいく気がする。コスコス、油圧ポンプのレバーを上でさせる。あれ、進まないか? と不安になってきたところで、「コン」といって油圧が小さく解放された感じがした。カラーが入り始めたようだ。

ステムシャフトに調整用カラーを圧入する

その後も、レバー操作4回に1回のペースでコンコン、カラーは入っていった。最後はステムシャフトの抜け止めのスナップリングに当たり、そのスナップリングがカラーに押されて回転しなくなったのを確認して、圧入を完了とした。

ステムシャフトに調整用カラーの圧入完了

アンダーブラケットにステムシャフトを圧入

この段階でカラーの外径を測定する。35.62ミリだ。元が35.5ミリだったから、0.12シマリばめということか。このアンダーブラケットにささっていたステムシャフトは35.33ミリ。これは結構きつかった。アンダーブラケットの内径から、はめあい公差により算出される数値は35.2016ミリぐらい。間をとって、35.25ミリをめざして削っていこう。

少しづつ回しながら、鉄ヤスリで削ること30分。ようやく35.3ミリになったところで、紙ヤスリに持ち替える。鉄ヤスリの削り目を消したころに1度計測し、さらに削り続けたまに計測するがほとんど変化が無い。これは狙いぎりぎりまで鉄ヤスリだな。

調整用カラーの外径調整が終了

腱鞘炎が悪化することが懸念されるこの作業もようやく終わりか? ついに35.25ミリになった。アンダーブラケットにさしてみる。やばい、少しスコっと入った( ̄▽ ̄;) 35.3ぐらいで、1度ためしておくべきだったか・・・

アンダーブラケットにステムシャフトを圧入完了

まあ、カラーの先端はオイルシール部分だから、ちょっとゆるくても問題なし!

アンダーブラケットにステムシャフトを圧入完了

単管パイプ門型プレスにセットして圧入。コンコン言うことなく、すうーっと圧入は完了した。

トップブリッジ側の調整カラーも、同様の作業を行う。

トップブリッジと調整用カラー

調整用カラーはトップブリッジ上面から0.5ミリ下がりを設定していたのだが、0.8ミリだったので調整用カラーを押しはずして削り直し。

圧入したが、調整用カラーとトップブリッジ上面の段差が想定より大きい

3度目で、きっちり0.5ミリとなり、今回の倒立フォーク化、いちばんの難所を乗り越えた。

トップブリッジに調整用カラーを圧入完了

はめあい公差 -W650を倒立フォーク化-

はめあい=穴と軸の大きさの関係

トップブリッジのねじれも修正できたので、ステムシャフトを圧入する準備にかかろう。

手に入れたZRX1100のステムシャフトがかすかに歪んでいたので、ショップにお願いすることができなくなっていた。そうなるとカラー(ステムシャフトの径の違いの調整用)も自分でなんとかしなければならない。内径、外径はどうすればいいのか? ネットで検索して勉強した。

穴に棒(軸)をつっこむのに、その大きさ太さ加減を「はめあい」というらしい。「はめあい」と打って確定すると、予測変換にハートマークが出る(笑) ゆるいのがスキマばめ。きついのがシマリばめ。ふたつの中間が中間ばめだ。

はめあいには細かくレンジが決められていて、公差クラスと呼ばれる。穴の場合は「H7」のように、大文字のアルファベットと数字で表現され、軸はアルファベットが小文字になる。アルファベットが若い方が緩めとなり、数字が大きいほど最大値側の精度が下がる。

この公差クラスを目安として、ステムシャフトの直径調整用カラーの寸法を決めていこう。

ステムシャフトとアンダーブラケットの採寸

はめあい交差は1000分の1レベルのスケール感になるので、ノギスではなくマイクロメーターが必要になる。とはいえマイクロメーターでも100分の1までだが。

ZRX1100のステムシャフトの圧入部を測定する。25.18ミリ。これは3か所を測定したものの最多値。

アンダーブラケットの穴径を測定する。これは相変わらずノギス。穴径マイクロメーターは、安いものが無く、手が出なかった。この辺がDIYのあまいところ。35.1ミリだった。さて、この穴に対してどれだけの太さのステムシャフトが圧入されていたのか、このアンダーブラケットから押し抜いたステムシャフトの軸径を測定する。

35.33ミリ はめあい公差表で確認すると、とんでもないシマリばめとなる。確かにきついのはきつかったが・・・

ここはノギス補正で、穴径には0.1ミリ足すことにしよう!

それでもまだ軸径マイナス穴径は、0.13ミリもある。ちなみに、35Φレンジの

軸の公差は、u6 +76,+60となっている。大きい数字で比較しても、0.076ミリに対して0.13ミリだ。公差表にはp6を超えるシマリばめはかかれていない。ということで、目指す公差はu6としておこう。

調整用カラーの内径

使用するZRX1100のステムシャフトの外径が28.18ミリ。28Φレンジの公差は、U7 -40,-61となっているので、中間値の-50を使用して、

28.18 – 0.050 = 28.13

となるので、内径の目標値は28.13ミリとなる。

調整用カラーの外径

アンダーブラケットの内径が35.2ミリ。公差はu6にするということだったけれど、ここはひとクラス下げて t6 +64,+48とする。いつかこのシャフトを抜く日が来るとしたら、調整用カラーがアンダーブラケット側に残らないようにするためだ。中間値の-56を使用して、

35.2 + 0.056 = 35.256

が、外径の目標値になる。

いや違う

調整用カラーはステムシャフトにシマリばめで圧入されているので、元の外径より公差分太くなっている。なので、

35.256 – 0.050 = 35.206

となり、35.206が外径の目標値になる。

さて、これをミスミのCナビで注文するのだが、さすがのミスミも、ここまで半端な数字は指定できない。精度が高い指定でも、ベースのサイズが0.5ミリ刻みで公差はH7だ。これをあえて精度が低い指定を選んでみたりして、いちばんよさそうなのを決定。あとは、来てみてやってみて、ダメならいつもの手作業で修正して、なんとかしてみよう!

トップブリッジのねじれを修正す -W650を倒立フォーク化-

左右が大きくねじれたフロントフォーク

Z1000のトップブリッジの猛烈なねじれを発見した話の続き。

Z1000のトップブリッジは使えないので、Ninja1000のトップブリッジが使えないか考える。入手した直後は、トップブリッジとアンダーブラケットの間隔が大きすぎて使えないと思っていたが、ステムシャフトを入手して計測してみると、ぎり使えなくはないことがわかっていた。Ninja1000のトップブリッジには、メインスイッチが取り付けられるようになっているので、Wのハンドルロックの位置に合えば、導入がずいぶん易しくなる。

届いたNinja1000のハンドルステム

難点はバーハンドル用ではないので、ハンドルポストの取付け用の細工をほどこさなければならないことか。

Z1000のトップブリッジが出ていないか、ヤフオクを探索する毎日。そんな中、出品されているもので「曲がりあり 要修正」というものがよくあることに気づいた。

要修正か・・・ 要修正?

そうか ねじれているZ1000のトップブリッジを、トーチで炙ったら修正できるんじゃないのか? だめで元々、絶対ゴミでしかないのだから、試してみる価値はある!

修正作業

会社の倉庫の棚は単管パイプで組んだものだ。単管パイプの直径は49ミリぐらい。ZX-6Rのフロントフォークのトップブリッジ側の径が50ミリとほぼ同じなので、薄い鉄板をかませて棚の単管パイプにトップブリッジを固定する。

単管パイプをくわえて、トップブリッジのねじれを修正する。

真ん中の穴に、Ninja1000のアンダーブラケットから抜いた(正確には、抜くために事前に切断した)ステムシャフトをさす。

きっとこの辺が歪んだんだろうという辺りをガストーチで炙る。手袋越しに温度を確かめながら。

こんぐらいでワンチャン

ステムシャフトに単管パイプをさして、ぐいっと曲げてみる。変わったかな? 単管パイプとステムシャフトを水平器で交互に見比べる。まだ全然ねじれていた。またトーチで炙る。

炙っては単管パイプでこじってを繰り返すこと30分。あれだけねじれていたトップブリッジが、おおむね満足できるぐらいまで、両フォークとステムシャフトの3本の軸が平行になった。

走ってる時にパキンとか割れなきゃいいな( ̄▽ ̄)

フレーム交換とチューブレス化

フレームの比較

エンジンの組み立てについてつらつらと話してきたが、クランクケースを組み立てた段階でフレームに載せている。話はそこまで戻る。

フレームの交換

エンジンを載せるためにフレームを交換する。家の中で邪魔だったフレームがようやく外に出た。

庭に出てきたフレーム
艶消し 美しいトップチューブ

目指していた美しいシートレール

つや消し シートレール

もはや前後の足回りとフレームだけになっていたW400をさらにぱらす。リア周りは問題なくバラせたが、フロントのアクスルシャフトが固くて全然緩まない。エンジンが載っていないせいで、力をかけると倒れそうになる。無理はできないのでインパクトでやってみたが、それでも緩まない。

あきらめよう

センタースタンドを支点にウィリー状態でフロント周りをステムごとごっそり抜き取る。あとでこの逆をやるかと思うとちょっとげんなりする。

完バラできたので、新旧の比較。

フレームの比較

シートレールがスッキリしているのと、タンデムステップのステーが短くなっている。

タンデムステップバーの長さ比較

組み立てをスムーズにするために仮スタンドを作った。針金でアンダーチューブに固定する。センタースタンドもひょんなことから解放されないように針金で固定した。

仮スタンド

フレームをぶっ倒すことは杞憂に終わり、無事フロント周りが取り付いた。フレームに合わせて、つや消しブラックで仕上げた、トップブリッジ。

つや消しトップブリッジ

ここまで来たところでクランクケースを閉じただけのエンジンを搭載。クランクケースを閉じただけと言っても結構重い。

この日は雨が降り出しそうだったので、タープを張って作業。

ここから数日天気が悪いので、腰下の両側のカバーを塞ぐまで作業を進めた。

スイングアームの仮付け

天候が回復した週末。エンジンの組み立てよりも、リアアクスルシャフトのカラーの注文を先行させるために、スイングアームを取り付けた。

ZRX1100のスイングアームが取り付いたW650。

仮組みスイングアーム

ボンネビルT120のホイールを取り付ける。チェーンは520にコンバート。520へのコンバートはフレームとチェーンのクリアランスを大きくするという目的もあるが、そもそもW650用のオフセットスプロケットが520しか存在しない。

チェーンカバーを取り付けるためのステーが今にもチェーンに干渉しそう。ここは要加工だ。

チェーンカバーのステーに当たりそうなチェーン

リムとチェーンのクリアランスで考えるとタイヤ幅は160が上限のようだ。

ホイールとのクリアランス測定
チェーンラインに問題なし

チェーンラインは問題ないようなので、リアアクスルシャフトのカラーは、机上の計算通りのものを注文することとする。購入先はいつものようにミスミ。前から何度も言ってるけど、すごい便利なサイト。カラーなどを好みのサイズで作ってくれる。

リアタイヤの選定

一応我がWは、ストリートトラッカーとかカフェトラッカーを目指しているので、タイヤのパターンは、あの特徴的な平行四辺形のブロックパターンがベスト。

幅は旋回性とかは無視して見た目重視。できる限り太い160が理想。

見落としがちなスピードレンジは、180km/hであるS。これはW650の標準装着タイヤのスピードレンジがSのため、二輪部品量販店でこれより低いスピードレンジのタイヤの交換を断られてしまうからだ。トラッカーの定番、ダンロップのK180には替えてもらえない。

こういった条件で探してみると、まず平行四辺形ブロックパターンは全くない。仕方ないので、ニュアンスが近いパターンのオフ車用のタイヤの中から探す。なかなかいいのがいくつか見つかったが、そのどれもサイズのラインナップが150、その上が170となっている。

160には魅力的なパターンのタイヤがない。

いや、本当はある。ドカティスクランブラーに使われているダイヤが、160でパターンもかっこいいのだ。けれども、これがいつ見ても欠品中。

毎夜毎夜悩みに悩んで、結局選んだタイヤが、ピレリANGEL ST

ロードタイヤじゃん!

今回はパターンではなくタイヤ幅重視。タイヤは太いほどかっこいい!

チューブレス化

チューブレスのタイヤを選んだということもあるが、アルミから幅広鉄リムに代わり、少しでもホイール系を軽量化するべく、チューブレス化することにした。

選んだのはアウテックスのチューブレスキット。なぜだか、ボンネビルT120用は、他のモデルと比べて1割ほど安かった。ラッキー♪

作業のスタートはリムの下地調整だが、ヤフオクで手に入れたこのホイール、腐食もない、塗料の剥がれもない、製造の継ぎ目もない状態。説明書の通りの洗浄作業のみで下地処理は終了。

マイペットでホイール洗浄
チューブレスキット 施工前

続いてニップルの頭にテープを貼っていく。このホイールは32本スポークだから、一般的なホイールより11%ほど作業が速い。だから1割安いのかも(ウソ)

つぎにこのチューブレスキットの肝である粘着テープの貼り付け。テープは柔らかく透明。ずれないようにガイドラインを引く。

テープ貼り前のガイドライン

空気が入らないように張る必要があるのだが、全く難しいことはなかった。空気なんて入る気がしない。これはエア漏れなんかしない。テープが透明なので、それがはっきりとわかる。

チューブレスキット 耐熱両面シールテープ作業中
チューブレスキット 耐熱両面シールテープ

最後に保護テープを貼って作業終了。

チューブレスキット完成

このチューブレスキット、作業後は速やかにタイヤを装着して空気を充填することによって、テープの密着を高める必要があるとのこと。このままタイヤ装着へと作業はうつる。

タイヤを自分で入れるために用意しておいたのが、タイヤレバー、リムプロテクター、ビートワックス、空気入れ、そしてPPバンド。PPバンドはタイヤを絞って保持することでタイヤ交換が簡単にできるらしい。詳しくは「PPバンド タイヤ交換」で検索を。

簡単にできたと言えばできたのだが、結構インナーマッスルを使う。特にこの日は昼にカヤックで海に出たので、体力的には条件が悪かった。

さらにリムプロテクターがタイヤに引き込まれて、タイヤの中に入ってしまい、それを取り出すのに相当苦労し、終わった時はヘロヘロだった。

今回用意した足踏み式の空気入れは800kpaまで入れられる高圧タイプ。これで400kpaまで入れて一晩放置。翌朝空気圧をチェックして下がっていないことを確認。200kpaまで落としてチューブレス化は完成した。

タイヤバランス作業

フレームを塗装

天井からぶら下げて塗装中

サビ止めが塗り終わっていたフレームの上塗りを刷毛塗りで始める。

ところがさび止めを適当に塗ったおかげで、刷毛目がバッチリ出てしまい、仕上がりが酷い事になってしまった。つや消しだから、そんなに目立たないんじゃないかと思ったが、実際はそんなことはなかった。仕方ないので、フレーム全部を1度ヤスリ掛けして平坦にすることに。

こんなことなら初めからきちんと塗っておけばよかったと思うが、後の祭。

刷毛目のでこぼこが削られて平坦になっていくにつれ、錆止めの白が木目のように浮かび上がってきた。これはこれでおもしろい。ただ目指しているものではない。

ZX-10のブレーキでいけることが決定したので、まだ残していたドラムブレーキ用のブレーキペダルのマウントを切断する。もう後には戻れない。

結局フレーム塗装はスプレーでやることにした。はじめにカー用品コーナーで売ってるスプレー。これを一缶吹きまくった。

続いて、ガソリンやオイルから塗膜を守るために、二液性のウレタンスプレーを吹いた。これは自家塗装のサーフボードにも使っているが、水性ペンキの上に二液性ウレタンスプレーのクリアを吹いているのだが、全くはげることがない。

天井からぶら下げてスプレーする。二液性ウレタンスプレーはその日にしか使えないので、これまた一缶、時間をかけて使い切る。

天井からぶら下げて塗装中

つや消しブラックのフレームは、いい感じに完成した。

ヘッドチューブ

ノーマルフレーム(右)との比較

ノーマルとの比較

タンデムステップを受けるパイプの長さの違いが一目瞭然。サス取付ピンの根元のビートは、金属パテでつくったフェイク(苦笑)

ノーマルとの比較 タンデムステップ

今回のフレーム改造でいちばん目指していたのが美しいシートレール。満足できるものができた。

目指していた美しいシートレール