ピストンを探す -エンジンから異音-

宝石のような鍛造ピストン

キャブレターの油面を確認しようと思ったらエアジェットを燃焼室に吸い込んでしまったことに気づき、ついにエンジンを開けてみると、1番のピストンに大きなガタを確認した話の続き。エンジントラブルからの異音の話の始めから読みたいかたはこちら。

ピストンの摩耗

1番のピストンにガタが見つかったので、泣く泣くシリンダーを外す。前にも話したが、Wはシリンダー間に空気の通路があり、そこにオイルの行き還りのパイプがある。パイプとシリンダーには1ミリぐらいの隙間があり、そこに前輪が巻き上げたゴミが溜まる。オイルのパイプを抜くと、そのゴミがクランクケースに入ってしまうのだ。

幸い、根元に液体ガスケットを盛っておいたおかげで、隙間にゴミは入っていなかったようだ。「雨の日は走らない」を徹底しているのが功を奏しているのだろう。

シリンダーとピストンを外し、部屋に持ち込む。ピストンの外径を計測すると、1番と2番のスカート部で0.2ミリ違った。ガタがあまりなかった2番のピストンを、1番のシリンダーに入れてみたがガタは感じられなかった。結論はこうだ。

エアジェットを吸い込んで、それが例えば排気側のスキッシュエリアに入った時、ピストンの前方は下に押され、その反動で吸気側のスカートがシリンダーに押さえつけられる。エアジェットが燃焼室内にいられたのは数分のことだと思うが、そんな短い間でもピストンを0.1ミリ削ったわけだ。

今思えば、あの金属音を聞いた時に、すぐにエンジンを止めるべきだった。今、後悔しても、あのピストンはもう戻ってこない。

代わりのピストンを探す

ピストンの摩耗がカンカン音=スラップ音とわかった今、その音を消すには、ピストンを交換するしかない。我がWは、BEETのボアアップキットを組んである。というか組んであるエンジンを買った。だから、そのボアアップキットのピストンを手に入れなければならない。検索してみたが、もはやそんなものはなかった。

では、どうすべきか。ここで浮かび上がってくるのが、以前からやりたいと思っていた、エンジンをアシストスリッパークラッチになった2世代目のW800のものに換装することだ。クラッチが軽くなるのは、おじいちゃんの夢だ。しかし、その夢はすぐに砕ける。ヤフオクに出品されていない。今までもちょくちょく探しているが、W800のエンジンは、あまり出てこない。

やっぱり純正部品じゃないと、こういう時困るよなぁ と感じて思いついたのが、W800のシリンダーとピストンを買うことだ。純正部品だから、その後のトラブルにも対応しやすい。そう思ってカワサキのホームページにいく。

なんと欠品中ではないか。ピストンすら無い。現行車種なのに・・・ 純正部品だからって、全然安心できないじゃん!

W800には、できないらしい。仕方ない、他のW650ボアアップキットを探す。しかし無い。いや、ひとつだけある。ビトーR&Dのものだ。ただこれは高い。ウオタニを導入する前なら良かったが、すでにかなり出費しているので厳しい。

W800のボアアップキットならあるのではと探してみた。この場合、ノーマルスリーブをボーリングする構成なので、別途スリーブを手配する必要があるのが難点だ。しかし、そんな心配は無用だった。販売終了ばかりなのだ。現行車種なのにだ!

どうしよう・・・

あっ W400のシリンダーとピストンあるじゃん

ご存知の通り、W400はW650のストロークダウンモデル。つまりシリンダーとピストンは同じ。(品番違うけど、基本は同じはず) そして我がWは元々400だったので、分解された400のエンジンが1機あるのだ。それを使えば、スラップ音から解放される!

しかしなぁ 675ccになっちゃうよなぁ・・・

とりあえず探してみる。シリンダーはあっさり見つかった。排気量の表示はどうなってるんだっけ? と思って見てみると、なんとつるっとのっぺらぼうだった。なるほど。シリンダー内壁を観察すると、ピストンの下死点の痕が、シリンダーライナーの最下端よりだいぶ上にある。かなりのショートストロークだということがわかる。

さてピストンはどこにしまったっけ? 

いくら探してもみつからない。これではシリンダーがあっても意味が無い。持ってたはずのものを買うのは悔しいが、念の為カワサキ純正部品のサイトを見てみる。

欠品中

まじか(´・ω・`) もうだめだ

スラップ音から逃れる方法は、もはや一択。 ビトーR&DのW650ボアアップキットのみだ。

あらためて、ビトーR&Dのホームページに行ってみると、キットの部品が単品で販売されていた。これだよ、これ! こうあるべきでしょ

ビトーのボアアップキットの入手

覚悟を決めて、148500円のビトーR&Dのボアアップキットを買うことにした。実際に購入する前に、もう一度巷の評価を確認しようと、ネットで検索する。まったくもって覚悟ができていない。しかしこの潔の悪さが、すごい効果をもたらした。

検索結果に、アップガレージのページがあった。クリックすると、なんとそこには新古のビトーのボアアップキットが、ほぼ半値で販売されていたのだ。まじかよ!

ためらうことなく購入。2日後には宝石のようなピストンが我が家にやってきたのである。

原因の判明 -エンジンから異音-

CRキャブレター

3000回転付近でするエンジンからの異音と1番シリンダーのみ湿っぽいのを、点火系のトラブルと推測し、ウオタニを装着するも問題は解決しなかった。このエンジントラブルの話を始めから読みたい方はこちら。

点火系が問題では無いとすると、エンジン内部に何らかの問題があるというのか? やはりもうここでエンジンをバラしてみないとならないところまで来た気もする。そう思いながらも、左右のシリンダーの湿り気が違うことに、なにか理由を見いだせないかとネットを検索する。

そこでたどり着いたのが油面。油面の高さに左右差があると、燃調にも差が出るというのだ。えっ? という印象。油面なんてある程度の範囲に収まっていればいいんじゃないの?

どうやら違うらしい。油面が高ければ吸い出されやすく、逆は吸い出されにくいのだそうだ。まじか・・・知らんかった。

キャブレターを分解する

油面を確認するためにキャブレターを取り外す。サイレンサー型エアクリーナーなので、取り外しは意気込まなくてもできる。完成時に内径が小さすぎて、キャブレターにもサイレンサーにも、はめづらかった自作ダクトは、伸びて丁度よいサイズになっている。これはこれで問題かもしれないが、今後の経過観察対象としよう。サイレンサー型エアクリーナーの製作話の1話めはこちら。

難なくキャブレターを取り外し自分の部屋に持ち込んだ。CRキャブレターの油面測定方法は下記の通り。

フロートチャンバーケースをはずす

エンジン側を下にした状態から、フロートチャンバー側を持ち上げていく

フロートチャンバーケースの合わせ面が15度~30度の時に、フロートチャンバーケースの合わせ面とフロートの底の高低差を計測する。基準は14±1ミリ。測定する場所はメインノズルの真横

これは一人でやるのは無理そうなので、キャブレタースタンドを2×4の端材で作った。

CRキャブレターの油面調整のため、キャブレターホルダーを製作

スタンドに載せ、CRを何度も回転させてみるのだが、フロートのベロがフロートバルブのピンに当たった時を見定めるのが難しい。老眼もかなり影響しているが、見づらいのも間違いない。

ところが、よくよく観察していると、ピンとベロが接触したあと更に傾けても、測定している部分の距離は、すぐには変わらないことがわかった。先入観としては、徐々に縮まっていくと思っていたが、そうでは無いらしい。

老眼鏡をかけて、食い入るようにキャブレターを覗き込んでいて、あることに気がついた。右のキャブレターにある部品が、左には無いのである。

吸入側の下部にある真鍮製の六角形の部品。エアジェットが左のキャブレターには無い。

( ̄▽ ̄;)

これか

エアジェットはパーツリスト上の25番

これが緩んで吸い込まれたんだ

そしてプラグの電極を潰したんだ

エンジンに異常を感じ路肩に寄せた時に聴こえた金属音は、エアジェットが燃焼室内で暴れていた音だったんだ

熱かったろうに・・・

なんとか下道に降りた時には金属音がしなくなっていたのは、溶けて消えてったんだね

サヨウナラ

これはもう間違いなくエンジンを開けなければならない

ちなみに油面高さは左右ともに適正値の14ミリだった。

CRキャブレター

エンジン分解

エンジンを分解するに当たって、音の原因を推察してみた。

吸い込んだエアジェットがバルブが噛んで、バルブステムがちょっと曲がっている。

エアジェットを潰した影響でコンロッドのスモールエンドがなにやらなってる

できることならシリンダーヘッドまでで、せめて腰上で解決して欲しい。

エアガンでシリンダーの中央の通路のゴミを吹き飛ばす。ここにゴミが溜まっていると、シリンダーを外した時にゴミが全てクランクケースに落ちていくからだ。一応、中央のボルト4本とオイルの行き還りパイプには、隙間を液体ガスケットで塞いではいる。ただ、完璧とは言い難い。

シリンダーヘッドカバーを外した。目視では特に何も異常な点は見当たらない。上死点に合わせて、タペットクリアランスを測定する。1番の排気外側だけが、規定より狭かった。なにか関係するのだろうか? ベベルシャフト側のベベルギアがちょっと黒く焼けたように見える。気のせいだろうか?(これは後々、新しい問題となってくるが今は気づいていない)

カムシャフトカバーを外す。カムシャフトにも特に問題は無さそうだ。

以前 もう30年ぐらい前の話になるが、当時XLR250に乗っていた。高速で八王子から都心まで通っていたのだが、若いので結構ぶん回していた。ある日突然、エンジンがカンカン鳴るようになった。その時は、3000回転とかだけではなく、ずっと鳴っていた。すぐになんとかすればいいものを、走るものだから、そのままにしておいた。

数日後、走行中にエンジンが止まった。夏のすごく暑い日の午後で、家まで押して歩くのが大変だった。後日シリンダーヘッドカバーを外して驚いた。カムチェーンが無いのだ。そしてカムの山が異常な削れ方をしていた。おそらくだが、回し過ぎてカムチェーンがギア飛びし、バルブタイミングが狂ってバルブとピストンが接触するようになった。(これがカンカン段階)

バルブがピストンに当たるから、その力はタペットを押しカムを削ったのだろう。直すのにフルオーバーホールが必要だった。

その時のことがあったから、異音には割と神経質だったのだが、今回は鳴らない時は鳴らないというところが、ここまでエンジンを開くに至らなかった原因だろう。

べベルシャフトの連結を解放し、シリンダーヘッドを外す。上死点で止まっているふたつのピストン。1番は傷だらけだ・・・ 

エアジェットを何度叩いたのだろう。シリンダーヘッドをひっくり返してみる。ああ・・・ なんか深い傷が・・・その傷には、1ミリぐらいの真鍮の粒がくい込んでいた。

ふと思いついて、ピストンの前後を交互に押して、ガタを確認してみた。2番は小さな動きだ。対して1番。かなりガタがある。カタッ カタッ とはっきりガタを感じる。

これか スラップ音だったんだ

異音と燃調の関係 -エンジンから異音-

MotoDXプラグ

ツーリングへ向かう高速でエンジンがおかしくなり、翌日ファイバースコープを使って燃焼室内を観察していたら、ピストンに挟まれてファイバースコープが抜けなくなった話の続き。始めの話はこちら

ファイバースコープの救出

ファイバースコープが潰れて、これ以上キックペダルが動かなくなった。まじでヤバい( ̄▽ ̄;)

待て こんな時は落ち着くんだ。慌てて動くと良くない方向にしか行かない。

この状況から抜け出すには、クランクを逆転するしかない。どうやったらクランクを逆転出来るか考えろ

そうだ ギヤを入れて、タイヤを逆転だ

ローに入れて、リヤタイヤを両手でつかみ逆転させた。ファイバースコープのコードを引っ張ってみるも、ビクともしない。

ローじゃダメだ

シフトペダルをガチャガチャさせて5速に入れた。タイヤを逆転させてみる。しかし、ファイバースコープはがっちりと動かない。

もう一度

タイヤを地面に叩きつけるように逆転させると、ファイバースコープのコードが動いた。引っ張りあげてみる。

ちぶれてるぢゃん(´;ω;`)

今朝手に入れたファイバースコープは、登板早々にひしゃげてしまった。レンズの保護板がもげかけている。エンジンの中に落とすとやばいのでむしり取った。

幸い画像には問題なかったので、観察を続ける。ピストンヘッドにさっきまでなかった丸い傷があった。ファイバースコープの先端によるものだろう。

結局わかったことは、カーボンは想像していたより、堆積していなかったことだけだった。

プラグの交換

新しいプラグを買いにナップスにやってきた。W650用はCR8Eだ。見つけた。安いな。ここでふと思いついた。なんかいいプラグ無いのか?

イリジウムとMotoDXという2種類があった。イリジウムは1度入れたことがあったので、MotoDXとやらにしてみるか。ただ、普通のプラグより2000円近く高い。しばし逡巡するも、ツーリングに行っていたらそれぐらい消費していたことを考えれば、まったく問題ないなとふたつ手に取りレジに向かった。

帰宅して箱から出てきたMotoDXプラグは、それほど変わった見た目ではなかった。イリジウムみたいに中心電極が細い。早速交換して試運転に出てみた。

エンジンは特になんの支障もなく始動した。アイドリングの音にも異常は感じられない。走り出した。

エンジンブレーキがかかるぐらいの2500回転ぐらいのアクセルオフの時に、カラカラと小さく聞こえる音が気になる。今までには無かった。ただ、それもエンジンが暖まってくると聞こえなくなった。

異音との闘いの始まり

Wで通勤してみることにした。プラグが湿っぽかったので、スロージェットだけ1番手下げた。セッテイングは下記の通り。

ASSJJNC段数MJ
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長く走るのはまだ不安が残るが、途中の横浜新道で高速のテストもできる。しかしそれは、横浜新道を待たずに現れた。

カンカンカンカン

3000回転ぐらいで、ものすごい打撃音がする。なんだこれは? とてもじゃないけど、この回転は維持できない。

横浜新道に入ると、そのカンカンな回転数がちょうどいい速度域となった。非常に煩わしい上に、それ以上回転が上がらない。これでは走れない! 走行車線に潜り込んで、だましだまし走った。

家の近くの川沿いの道で、カンカン音を維持させながら走り、帰宅してすぐにプラグチェックする。周りは黒く中心電極は白い。カンカン音は1/4開度の3000回転だ。そこが薄くなったか? スロージェットを60に戻してみた。

ASSJJNC段数MJ
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翌日も通勤セッティング。冷間時のエンジンブレーキの際のカタカタ音は無くなった。ただ、あまり変化は無いので、戸塚パーキングでジェットニードルのクリップを2段下げてみる。ちょっといいかなと思いつつ会社に着いた。

ASSJJNC段数MJ
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帰りの横浜新道下りの上り坂で、1/8~1/4のパーシャルでの脈動がひどく、かぶりそうになる。戸塚パーキングでジェットニードルのクリップを4段上げて、薄方向に振ってみた。

ASSJJNC段数MJ
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カンカン音がやんだ。

結局、燃調が濃かったという結末だった。

ところが、やんだと思ったが、まだかすかに音は聞こえていた。小さくなっただけだった。更に謎な音が増えた。フロントフォークに少し大きめなショックが伝わると、3000回転でなくてもカンカン音と同質の音が、カカカカカンと響くようになった。

ジェットニードルを1段太くして、更に薄方向にしてみた。

ASSJJNC段数MJ
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1/4パーシャルの不安定感が若干ながら薄らいだ。小さいカンカン音は変わらない。ちなみに51シリーズのジェットニードルは太さを細くすると、クリップ段数1段分も同時に薄方向になる構造になっている。さらにクリップ段数を変えてみた。

ASSJJNC段数MJ
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あまり変化は感じられない。プラグは中心はきつね色で周辺は黒い状態。スロージェットを一段薄くしてみた。

ASSJJNC段数MJ
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1/4パーシャルの不安定さは少し改善した 3000回転のカンカンはまだかすかにある。よーし こうなったら

ASSJJNC段数MJ
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禁断の全替えで薄方向へ動いた。低回転域からアクセルオープンのパワー感が無くなった。Mノズルで無くなったような感覚だった。これは間違いなく失敗だ。ファイバースコープで両シリンダー内を観察してみると、明らかに1番は湿っていた。これはもしかして点火系の問題なのでは?

今になって思えば単なる思いこみだが、この時は正解を発見した気分だった。イグニッションコイルかイグナイター。我がWは電装系はW400のものが多く残っている。いつかはイグナイターをW650にしたいと思っていた。意味があるかはわからないけど。

調べてみたが、もう廃番だった。そうなるとあれだ。ウオタニだ。

会社の二輪部員がBMWに入れて、いいと言っていた。最近インスタでDMすることがある、W乗りも入れていたので、劇的にいいのですかと訊いてみると、劇的までは言わないけどいいとのこと。よしウオタニ買おう。これでカンカンともオサラバよ。

次回はウオタニ導入の話

ファイバースコープで燃焼室内を見る -エンジンから異音-

ファイバースコープで見た燃焼室内

ツーリングへ向かう高速でエンジンがおかしくなり、帰宅してプラグを外してみると、外側の電極が潰れていた話の続き。始めの話はこちら

プラグの状態

1番のプラグの外側電極が潰れて、中心電極に触れるか触れないかという状態だ。これではまともな燃焼などしないだろう。この状態を見て真っ先に考えられるのは、なにか異物が侵入して、ピストンヘッドとプラグの間にはさまったのではないかということだ。

吸気は新造したサイレンサー型エアクリーナーで、パワーフィルターがついており、そんな異物が入るとは思えない。エアクリーナーからキャブレターまでは、自作したウレタンゴムのダクトしかなく、吸気経路内に外れるような部品は無い。一体全体何が起きたのか?

ピストンヘッドにカーボンが堆積して外側電極を潰したとか。現状どれだけのクリアランスがあるのか調べてみよう。潰れた外側電極をマイナスドライバーで直してから粘土で包み込み、エンジンに取り付けたあとキックを何回か踏みおろした。プラグを外す。

ピストンヘッドに押され粘土は潰れていたが、少なくとも1ミリの厚みは残っている。ということはカーボン堆積説は無いということか。ふと、中心電極の碍子と、周りとのすき間にマイナスドライバーを差し込んで、こじってみた。いや なんでこじるのって思うかもしれないけど、なんかこじっちゃった。

中心電極がずれている

あれ? 動く

中心電極がこころなしか動いたような。反対のすき間にマイナスドライバーを突っ込んでこじってみる。確かに動く。何度もやってたら碍子も外れた。ここが壊れるってどういうことだ? 

とりあえずプラグは交換するしかない。型番を写真におさめる。と、ここである疑念が湧く。このプラグはW650の指定されたものなのだろうか? このブログの読者ならご存知だと思うが、我がWは元々400だった。エンジンを650に載せ替え、リアディスクブレーキ化に合わせてフレームを650にし、改造車検をとった。そんな理由から、いまだにW400の部品が多く残っている(特に電装系)。プラグも十分その可能性がある。

調べてみると思った通り、ついていたプラグはW400指定のCPR8EA-9だった。W650はCR8Eだ。この違いも、もしかしたら今回のトラブルに関係しているかもしれない。400と650では燃焼室やピストンヘッドの形状が違うとか。でもクリアランスは確認したしなぁ

ああ ピストンヘッドの打痕が見たい

「プラグ 電極 潰れ」で検索していると、ファイバースコープで燃焼室内を観察しているブログを見つけた。Amazonのファイバースコープ販売のリンクもあった。しかも安い。即買った。例によって翌朝届いていた。

ファイバースコープで観察

早速梱包を剥がして取り出した。専用アプリを使うらしい。説明書に描かれたQRコードを読み取り、リンクを開く。てっきりgoogle playが開くと思っていたが、そうではなかった。レイアウトの崩れた、中国語サイトだ。

日本語に翻訳してそれらしいアプリをダウンロードしようとすると、このサイトからこんなもん落としたら危険だよと警告が出る。一瞬ためらったが実行した。ままよ

アプリがインストールされたのでファイバースコープをUSB端子に刺そうとすると刺さらない。 わお typeBかよ せっかく早朝届けていただいたのに、変換アダプター買うのに10時まで待たなきゃならんのか・・・

ふと、思いついて先代のスマホを見に行くと、まんまとtypeBだった。 ヨシヨシ 先ほどとは違い、無警戒でインストール。庭に行きWのスパークプラグを外す。

ファイバースコープをプラグホールに差し込む。ファイバースコープを通して、プラグが取り付けられる雌ネジがスマホに映し出された。

その穴にファイバースコープを入れようとするのだが、なかなか入らない。Wはプラグホールの入口から、スパークプラグの座面まで10センチぐらいある。それほど硬くないファイバースコープのケーブルを持って、真のプラグホールに進入させるのは結構難しい。

1度ファイバースコープを取り出し、ファイバースコープの向きとスマホに映し出された画像のむ気を合わせる。そして、ゆっくりプラグホールに差し込んだ。近づく真のプラグホール。それが画像の中心に居続けるように操作し、少しずつ奥へ進める。さながら内視鏡を駆使する医師か? 今年は大腸内視鏡検査行かねば・・・

ファイバースコープの先端が真のプラグホールへの進入に成功した。写っているのはピストンヘッド。バルブリセスが見える。ただ、これがピストンヘッドのどこを見ているのかわからない。記憶にあるバルブリセスの配置とも少々違う。

試しにキックペダルを操作してピストンを上下させてみた。近づくピストン。離れるピストン。

なるほど、バルブリセスの配置がおかしく見えたのは、シリンダーの内壁を鏡のように反射して見ていたからだ。よっつ見えてる内のふたつがなんとなくピンボケだったのはそういうことだ。

プラグホールは前に傾いているから、ファイバースコープは燃焼室の後方寄りを見ているということも次第にわかってきた。もう少しピストンヘッドの中心を見たいのに、傾いてる以上に後方寄りの画像な気がする。ファイバースコープを差し込んだまま、キックペダルを動かした。

ガッ

そんな音は聞こえはしなかったが、そんな感じでキックペダルが動かなくなった。同時にファイバースコープも動かなくなった。

( ̄▽ ̄;)

ファイバースコープがピストンに潰されて、抜けなくなってしまった。まじで出てくる汗。

突然のトラブルとつぶれた電極の謎 -エンジンから異音-

外側電極がつぶれたプラグ

パワーフィルター化もフロントフォークのオーバーホールも完了し、迎えた社内の二輪部による春ツーリング当日。集合場所は関越自動車道の下り高坂サービスエリア。圏央道に乗るべく、国道134号を西へWを走らせていた。

茅ヶ崎海岸インターチェンジのランプウェイに乗りかけたところで、ETCのインジケーターランプが点灯していないことに気づく。やばいやばい 路肩に寄せてエンジンを止めた。

財布をポケットから引きずり出し、ETCカードを探す。 あれ? 無い まじか、他の何に入れたんだ? 会社のETCカードならある。これを入れるのもありだが、あとの処理がめんどくさいぞぉ。もしかして入ってるかと思い、シートを外してカードリーダーの蓋を開けた。 あれ? 入ってる

もう一度抜き差ししてイグニッションスイッチをONにしてみるも、ランプは点灯しない。そう言われてみると、電装ボックスを新造して以来、初めてETCの動きを確認したのだった。つまり、あれ以来動いていない。

まずはヒューズを確認してみた。 めっちゃ固いヒューズホルダーで、ヒューズが抜けない。これじゃあ、わかんねえじゃん! ちょっとイライラがつのる。朝日に透かしてみると、ヒューズのウェイブが確認できた。オーケー問題無い。

ならばアースか? アースはZRXのタンク流用のために新造したタンク取付金物(半完成)の取付ボルトに、単独でとめられている。これを、USB電源たちのアースと共締めにしてみた。もちろんUSB電源は作動確認済みだ。

ところが、やはりランプは点灯しない。 さあ困った。 ETC無しでツーリングか。初めに高速から降りる予定がスマートインターだったはず。だめだ。

カードリーダーにささっているコネクターを確認する。 きちんとささっている。 というか、これは抜けない? 電源取り出しのための線の途中にコネクターがあったので抜き差ししてみる。 おっ ランプが点灯した。 

時計を見ると15分ロスしていた。こりゃ完全に遅刻だ。だが、どうせインカムの同期に手間取って、1時間は出発しないのが、うちの二輪部の伝統。慌てることは無い。15分ロスったとLINEを入れて発進した。

茅ヶ崎ジャンクションを左へ圏央道に入る。なんとなくエンジンの回転に雑味を感じる。それと寒い。今日は夏日になるとのことだが、晴天の朝は放射冷却で冷えるとのことで、12度ぐらいしかない。アクセルを握る右手の力も、あまり元気じゃない。

シリンダーヘッドカバーの裏に潜りこまさんばかりに膝を締める。段違いになっている内回りの影から逃げるように走行車線に移り、いやいやながらアクセルを開けて加速が始まったその時だった。

ばすーーー!

本当にそうだったか定かでは無いが、記憶での印象はそんな音とともにエンジンが止まった。すかさずクラッチを握る。

やっちまった・・・

初めに思ったのは、ベベルシャフトのスナップリングの断裂。そのせいで停止したカムシャフト。燃焼室に突き出したままのバルブにぶち当たるピストン。なぜそんな心配をするかはこちら

惰性で路肩を走らせる。ほんの少しだけの上り坂の重力を受けて早々にWが止まった。えっ? なんとエンジンは動いていた。ただ、「キン キン」と金属音が聞こえた。(これも確かに聴いた気がしている)

エンジンが動いているということは、ベベルシャフトのスナップリングは無事ということだ。試しにアクセルを吹かしてみる。

バボパスンッ バボバボパスンッ

かなりの不整脈だが、回転はあがる。そろーりそろーりクラッチをつないで走り出した。幸い出口がすぐそこだ。

パスンパスン言わせながら、なんとか高速を降りて、歩道にWを止めて観察する。見た目はなんともない。二輪部のグループLINEに、現状を伝える。去年の春ツーリングでは転倒し、今年はみんなに会うことすらできなかった。俺のツーリングは15キロで終わった。帰りがあるから30キロだけど。

途中、このパスンパスンはキャブレターの同調狂ったのかなと思い、CRのトップキャップを外して確認してみたが、そんな様子は無かった。では点火系の不具合か?

下道を15キロ、裏道をよってつないで、ようやく家にたどり着いた。家には、今日から作業に入る外壁塗装業者さんが来ていた。よろしくお願いしますとか挨拶をしている俺を見て、嫁がびっくりしていた。

業者さんに2階の窓周りのコーキングを日曜日にやらせてくれ(彼らが言うには、ペンキで十分だとのことだが、せっかく足場もあるのでやっておこうと)と伝えると、仕上がりに影響するから先にやってくれとのこと。

う~む ツーリングがコーキングかい(´・ω・`)

これから故障の原因を探り出して、秩父に向かわなければ、と思っていたのだがそうはいかなかった。いや、むしろWが、遊んでる場合じゃないぞ、家の事やれ。と、自ら故障したとか。春の青い空の下、せっせとコーキングをしたのであった。

3時過ぎにコーキング作業を終えて、Wのプラグを外してみた。2番は異常ない。1番を外してみる。

おおっ 

外側の電極がつぶれ、中心電極に接触しそうになっているではないか。これって、ピストンが当たったっていうことか?

いや 当たるわけないだろ  つづく