バックステップ取り付け その2

完成したバックステップ右側

WR’sのバックステップをWにつける話の続き。

ステップを取り付けてみて分かった問題点は次の通り。

  1. ステップ取り付けプレートのボルトがキックペダルに当たる
  2. シフトロッド両端のオフセットが過大

この二つを解決していく。

ボルトの沈頭化と右ステップ

キックペダルと当たってしまったボルトは、よくある六角ボルト。M12×P1.25というサイズのせいか、ミスミの中ではフランジ付きとかはなく、これ一択だった。このボルトは頭が大きすぎて、沈頭化は無理。

WR ‘sのバックステップでも使われているボタンキャップボルトで検索。ボタンキャップボルトとは、鍋頭で六角レンチの穴が開いているやつ。結果はこれまた一択。表面処理が黒色酸化被膜となっており、いかにも錆びそうだが一択だから仕方ない。

ボルトの頭を沈める穴をあける。いわゆるザグリというやつだ。ザグリ用のキリなんて持っていないので、手持ちのホルソーをいくつも駆使してザグリする。

ああ フライス盤が欲しい

ザグリ加工を終えて取りつけた右ステップ。

完成したバックステップ右側

キックペダルとボルトの頭の干渉はなくなって

ステップ取付プレート固定ボルトとの干渉を解消

この通り、無事キックは踏み下ろせるようになった。

ブレーキペダルは跳ね上げて、ステップは畳んで、キックペダルとの干渉を防ぐ

ペダルの踏力をマスターシリンダー側のアームに伝えるのは、このカラー。ペダルの高さ調整を兼ねるので、エキセントリックになっている。

ペダルの高さ調整をするエキセントリックカラー

シフトロッド両端の過大オフセットの解決と左ステップ

シフトシャフトの先端につくシフトレバーと、ステップのシフトペダルとのオフセットが大き過ぎて、シフトロッドがかなり斜めになってしまう。このままでもシフトチェンジはできるだろうが、おそらく操作感は重くなるだろう。

そこで、シフトレバーの取付部にオフセットがゼロになる長さのパイプを溶接して、その先端に新たなレバーを溶接するものをつくることにした。

シフトレバーのオフセットをなくすためにパイプを溶接

ほぼほぼできたところで仮付けして、シフトロッドの長さを測る。

正チェンジならシフトロッドの長さは?

逆チェンジにできるかも確認。

逆チェンジならシフトロッドの長さは?

逆チェンジにする必要は前々から感じていた。左にターンしながら加速するときに、シフトペダルをかきあげようとした左足のつま先がアスファルトに接触し、後方に持っていかれることが何度もあった。逆チェンジならこんなことにはならない。

完成したシフトレバー

延長したシフトレバー

パイプの先端についているレバーは、純正シフトレバーを使った。そして完成した左ステップ。結局、逆チェンジを採用。

完成したバックステップ左側

バックステップ取り付け その1

左ステップ取付完了(暫定)

リアブレーキがディスクになるのに伴って、バックステップを替えようと思う。

今までビートのバックステップを使っていたが、このバックステップは、キックが使えなかった。せっかくのキックは使えるようにしたい。

W650でキックができるバックステップといえば、ペイトンプレイスかコワースがある。まあ、どちらもドラムブレーキ用だから使うことはできないが、その構造は参考になる。

ペイトンプレイスのバックステップはキックペダルが届かない位、後ろに下げているらしく、わりと悪名高かったりする。

コワースがどうやってキックペダルから回避してるかというと、ステップは可倒式で、ブレーキペダルはステップを軸として、後ろにぐるっと回るのだ。この構造を真似させてもらおう。

ブレーキペダルが足で踏む部分のアームとマスターシリンダーを押す部分のアームが別構造になっていれば、コワースと同じように、キックペダルから逃れられるはずだ。

そんな構造のバックステップはないかと、毎夜ヤフオクを巡回していると、WR’sのバックステップが、二つのアームがビスで連結されていることがわかった。想像するに、同じパーツを使いながら、モデルごとに、連結する角度を変えて対応しているのではないだろうか。

そんなWR’sのバックステップの中でもZRX1100用やZX-10用が、ベースとなるプレートがシンプルな形状の複数枚構造であり、フレームに取り付く最後の1枚を取り替えるか、もう1枚新造することによって、Wに簡単に着きそうなことがわかった。

ステップは可倒式ではないが、商品写真を観察すると、簡単に可倒式のものに替えられるように見える。

これらが出品されるのを逐一チェックして、納得いくものに入札、そして落札。届いた商品をチェック。

やはりステップバーはM8のボルトで固定されている。ペダルの軸はステップバーとは別のカラーになっているので、可倒式のステップバーに交換するのも簡単だ。可倒式のステップバーを注文する。

ペダルのアームとマスターシリンダーのアームを結ぶビスを外してみると、ペダルのアームは自由に動くようになった。このまま動きっぱなしだとブレーキが効かないので、ちょうどいいところで止めないといけないのだが、ちょうどいいところにネジ穴がある。

恐らくブレーキスイッチを作動させるためのステーを出すためのネジ穴だろう。このネジ穴に偏心させたカラーを取り付けて、ペダルの高さ調整も同時に行えばいいだろう。ちなみにブレーキスイッチは油圧のものが付いていた。

Wに取り付ける方法を考察する

最もベースとなる条件は、バックステップを取り付けるボルトの一つは標準のステップ取り付け用のネジ穴で、もうひとつはピボットシャフトの上にあるプレートに開いている穴を利用することだ。この方法は続Z1000Jさんのオマージュ。

ざっくり言うと、今説明した二か所で固定されたプレートにバックステップを取り付ける感じ。ステップを後ろに下げることがメインの目的ではないので、このプレートに付けた上で出来るだけ前にしたい。

その条件で考えると、ブレーキペダルはキックペダルの外につく。これによって、車体中心からプレート外面の距離の最小値が決まる。この位置になるように木板でステップ取り付けプレートを作る。

木製板でステップの位置を模索

このプレートにステップを仮付けして、たたんだステップが、キックペダルの可動範囲に干渉しないか確認する。

キックペダルとステップのクリアランス

う~ん ギリギリ

クリアランスを作るには、ステップを上や後ろへ動かせばいい。だが、上や後ろへの移動は肉体的に辛くなる。ポジションの妥協点とクリアランスの合計が5ミリになるところを探し出しステップの位置を決定。

ステップ取り付けプレートの外面は、今の木製ステップ取り付けプレートよりもクリアランスの半分の2.5ミリ外側になるようにする。この位置を元にプレートの厚みを10ミリとして、それを支えるカラーとボルトの長さを決めた。そしてCADでステップ取り付けプレートの図面を作り、材料を例によってミスミで注文する。

CADでステッププレートを設計

ステップ取り付け板の加工と取り付け

届いたアルミ板を加工。切断はバンドソーなので切断工程が少なくなるように、出来上がりの大きさに出来る限り近い大きさで板を注文している

アルミ板に型紙を置く

穴あけはボール盤、端面の削りはベビーサンダーで仕上げたステップ取り付けプレート。フライス盤が欲しい。

ボール盤で孔あけ

それにしても、やっていることは十代の終わりの頃のまま。まさに「19のままさ」

ステッププレート完成

加工が終わったステップ取り付けプレートをWに取り付ける。プレートがくの字に曲がっているのは、ピボットシャフトを避けた上で、フレームと平行になるようにしている。

ステッププレートを取りつける

ステップのベースを取り付ける、このベースによって、ポジションを三段階変えることができる。これはWR’sが与えた機能。

ステップのベースを取りつけ

そのベースの上にステップの本体を取り付ける。かっこいい!

左ステップ取付完了(暫定)

キックペダルを避けるために外に出したせいもあるのだろうが、シフトロッドの角度が良くない。

シフトロッドがかなり斜め

シフトシャフト側のレバーはこのぐらいまで出さなきゃいけないだろう。

シフトシャフトとの接合はこれぐらいのオフセット

右側に目を移すと、なんとステップ取り付けプレートの取り付けボルトの頭が、キックペダルの根元に当たって踏み下ろせない・・・ ボルトの頭をプレートに埋め込むしかないが、六角穴付きボルトに替えないとだめだな。

うわっちょ! ボルトが当たってキックペダルが降りないじゃん

フレーム交換とチューブレス化

フレームの比較

エンジンの組み立てについてつらつらと話してきたが、クランクケースを組み立てた段階でフレームに載せている。話はそこまで戻る。

フレームの交換

エンジンを載せるためにフレームを交換する。家の中で邪魔だったフレームがようやく外に出た。

庭に出てきたフレーム
艶消し 美しいトップチューブ

目指していた美しいシートレール

つや消し シートレール

もはや前後の足回りとフレームだけになっていたW400をさらにぱらす。リア周りは問題なくバラせたが、フロントのアクスルシャフトが固くて全然緩まない。エンジンが載っていないせいで、力をかけると倒れそうになる。無理はできないのでインパクトでやってみたが、それでも緩まない。

あきらめよう

センタースタンドを支点にウィリー状態でフロント周りをステムごとごっそり抜き取る。あとでこの逆をやるかと思うとちょっとげんなりする。

完バラできたので、新旧の比較。

フレームの比較

シートレールがスッキリしているのと、タンデムステップのステーが短くなっている。

タンデムステップバーの長さ比較

組み立てをスムーズにするために仮スタンドを作った。針金でアンダーチューブに固定する。センタースタンドもひょんなことから解放されないように針金で固定した。

仮スタンド

フレームをぶっ倒すことは杞憂に終わり、無事フロント周りが取り付いた。フレームに合わせて、つや消しブラックで仕上げた、トップブリッジ。

つや消しトップブリッジ

ここまで来たところでクランクケースを閉じただけのエンジンを搭載。クランクケースを閉じただけと言っても結構重い。

この日は雨が降り出しそうだったので、タープを張って作業。

ここから数日天気が悪いので、腰下の両側のカバーを塞ぐまで作業を進めた。

スイングアームの仮付け

天候が回復した週末。エンジンの組み立てよりも、リアアクスルシャフトのカラーの注文を先行させるために、スイングアームを取り付けた。

ZRX1100のスイングアームが取り付いたW650。

仮組みスイングアーム

ボンネビルT120のホイールを取り付ける。チェーンは520にコンバート。520へのコンバートはフレームとチェーンのクリアランスを大きくするという目的もあるが、そもそもW650用のオフセットスプロケットが520しか存在しない。

チェーンカバーを取り付けるためのステーが今にもチェーンに干渉しそう。ここは要加工だ。

チェーンカバーのステーに当たりそうなチェーン

リムとチェーンのクリアランスで考えるとタイヤ幅は160が上限のようだ。

ホイールとのクリアランス測定
チェーンラインに問題なし

チェーンラインは問題ないようなので、リアアクスルシャフトのカラーは、机上の計算通りのものを注文することとする。購入先はいつものようにミスミ。前から何度も言ってるけど、すごい便利なサイト。カラーなどを好みのサイズで作ってくれる。

リアタイヤの選定

一応我がWは、ストリートトラッカーとかカフェトラッカーを目指しているので、タイヤのパターンは、あの特徴的な平行四辺形のブロックパターンがベスト。

幅は旋回性とかは無視して見た目重視。できる限り太い160が理想。

見落としがちなスピードレンジは、180km/hであるS。これはW650の標準装着タイヤのスピードレンジがSのため、二輪部品量販店でこれより低いスピードレンジのタイヤの交換を断られてしまうからだ。トラッカーの定番、ダンロップのK180には替えてもらえない。

こういった条件で探してみると、まず平行四辺形ブロックパターンは全くない。仕方ないので、ニュアンスが近いパターンのオフ車用のタイヤの中から探す。なかなかいいのがいくつか見つかったが、そのどれもサイズのラインナップが150、その上が170となっている。

160には魅力的なパターンのタイヤがない。

いや、本当はある。ドカティスクランブラーに使われているダイヤが、160でパターンもかっこいいのだ。けれども、これがいつ見ても欠品中。

毎夜毎夜悩みに悩んで、結局選んだタイヤが、ピレリANGEL ST

ロードタイヤじゃん!

今回はパターンではなくタイヤ幅重視。タイヤは太いほどかっこいい!

チューブレス化

チューブレスのタイヤを選んだということもあるが、アルミから幅広鉄リムに代わり、少しでもホイール系を軽量化するべく、チューブレス化することにした。

選んだのはアウテックスのチューブレスキット。なぜだか、ボンネビルT120用は、他のモデルと比べて1割ほど安かった。ラッキー♪

作業のスタートはリムの下地調整だが、ヤフオクで手に入れたこのホイール、腐食もない、塗料の剥がれもない、製造の継ぎ目もない状態。説明書の通りの洗浄作業のみで下地処理は終了。

マイペットでホイール洗浄
チューブレスキット 施工前

続いてニップルの頭にテープを貼っていく。このホイールは32本スポークだから、一般的なホイールより11%ほど作業が速い。だから1割安いのかも(ウソ)

つぎにこのチューブレスキットの肝である粘着テープの貼り付け。テープは柔らかく透明。ずれないようにガイドラインを引く。

テープ貼り前のガイドライン

空気が入らないように張る必要があるのだが、全く難しいことはなかった。空気なんて入る気がしない。これはエア漏れなんかしない。テープが透明なので、それがはっきりとわかる。

チューブレスキット 耐熱両面シールテープ作業中
チューブレスキット 耐熱両面シールテープ

最後に保護テープを貼って作業終了。

チューブレスキット完成

このチューブレスキット、作業後は速やかにタイヤを装着して空気を充填することによって、テープの密着を高める必要があるとのこと。このままタイヤ装着へと作業はうつる。

タイヤを自分で入れるために用意しておいたのが、タイヤレバー、リムプロテクター、ビートワックス、空気入れ、そしてPPバンド。PPバンドはタイヤを絞って保持することでタイヤ交換が簡単にできるらしい。詳しくは「PPバンド タイヤ交換」で検索を。

簡単にできたと言えばできたのだが、結構インナーマッスルを使う。特にこの日は昼にカヤックで海に出たので、体力的には条件が悪かった。

さらにリムプロテクターがタイヤに引き込まれて、タイヤの中に入ってしまい、それを取り出すのに相当苦労し、終わった時はヘロヘロだった。

今回用意した足踏み式の空気入れは800kpaまで入れられる高圧タイプ。これで400kpaまで入れて一晩放置。翌朝空気圧をチェックして下がっていないことを確認。200kpaまで落としてチューブレス化は完成した。

タイヤバランス作業

カムシャフトとベベルシャフト -W650エンジンのレストア&モディファイ-

押されているロッカーアームを移動させてしまって、元に戻せなくなったために、カムシャフトキャップを外さなければならなくなった話の続き。

カムシャフトキャップの固定ボルトを全て緩めてカムシャフトキャップを浮かすと、カチンという音と共にスプリングに押されてロッカーアームが正しい位置に戻った。固定ボルトをそれぞれの穴に戻していく。

太いボルトをトルクレンチで規定トルクで締め付け、細いボルト締め付けを始める。徐々に締め付ける力を上げながら3周。ここから規定トルクで締め付けていく。

問題のボルトに到達。さっき、いくら締め付けてもトルクレンチがカチっと言わなかったボルトだ。

さっきと同様、いくら回してもヌルヌルと手ごたえは変わらずにトルクレンチは回り続ける。

マジかー 絶対やべえ

そう思ってトルクレンチを回し続けていた時にそれは起きた。

ピンッ

小さく乾いた音と共に、トルクレンチにかかっていた手応えがなくなった。

ピンッておい 終わったな・・・

しばし動きを止めて呼吸を整える。そしてそっとボルトを摘み上げた。

ボルトが途中から折れている。シリンダーヘッド側のネジがやられていると思ったが、そうではなかった。そうか、雌ネジがダメになったのなら、あんな音はしないか。

締めている時に折れたボルトと、緩めている時に折れたボルトって、どっちが摘出大変なんだっけ? シリンダーヘッド外さなきゃダメかな? ヘリコイルぶち込まなきゃダメかな?

これからやらなければならない作業を思い浮かべ、軽く意識を失いかけながらカムシャフトキャップのボルトを緩める。

残ってたボルトの先端。

幸いにも指で回して取り去ることができた。それにしてもこのボルト、過去に過度なトルクで締め付けられていたのか? 代わりのボルトをW400をバラしたパーツを入れておいた袋から取り出し、カムシャフトキャップを組み立てた。

バルブクリアランスの測定作業に復帰。でも今思えば、動かしてはいけないロッカーアームを動かしたことによって、折れる可能性があったボルトを取り替えることができたわけだ。ある意味持ってるぜ

測定の結果、二つのシムを新たに購入し、バルブクリアランスの調整を終えた。

ベベルタワーを組み立てる

話は前後するが、シリンダーヘッドを組み立てる前に戻る。シリンダーヘッドを組み立てる前に、ベベルシャフトにスナップリングを入れておけとサービスマニュアルに書いてある。シリンダーヘッドを取りつけると、ベベルシャフトが上のベベルギアケースに重なり、入れづらくなるからだろう。言われたとおりにやろうとした。

このスナップリングは、上下2分割になっているベベルシャフトを固定するためのものだ。スナップリングプライヤーで広げつつ、ベベルギアに噛み合うためにセレーションが切ってあるベベルシャフトの先端からスナップリングを入れた。

えぇっ?

ベベルシャフトにかけられたスナップリングは、明らかに変形して広がっている。ただ広がっているだけでなく、細くなった部分から折れるように曲がってしまった。思い起こせば、このスナップリングをばらした時も、こんな感じになっていた気がする。

途方に暮れながらここで作業は中断した。サービスマニュアル的には、このスナップリングを入れておかないと、シリンダーヘッドを組み立てられないからだ。

ウェビックの純正部品販売で注文。念のため多めにと思ったが、在庫が2個だけだった。

スナップリングが家に届いた。他の作業を進めたかったのと、シリンダーヘッドを組み立ててもスナップリングを入れられそうなので、すでにシリンダーヘッドはついている。前回の失敗をふまえて、ベベルシャフトの途中からスナップリングを入れることにした。先端から入れると、越えなければならない無駄なふくらみがある。

スナップリングプライヤーでスナップリングを広げながらベベルシャフトにスナップリングを入れる。必要以上にスナップリングを広げないようにだ。だが、入ったスナップリングは広がってしまっていた。

これ どうすればいいんだよ?

同じことで困った人がいないか検索してみたけど出てこない。

あと1個しか残ってないスナップリングを手に途方に暮れる。

広げないようにスナップリングを入れる。それはもうこれしかない。スナップリングをねじって広げ、ベベルシャフトに入ったら戻すのだ。

やってみた。入った。そこから本来のはめる場所に移動する。これもおっかなびっくり。しかもすげえやりづらい。上ベベルシャフトがスプリングに押されて下がってくるので、ドライバーのビットでつっかえ棒をしながらの作業。

はまった。でもなんとなくゆるい。ただこれより広げずに入れることは無理。つまり誰がやっても、これぐらいゆるい感じになるはず。

ああ 走ってる途中にこのスナップリングがぶち折れたらどうなる? 

上のベベルシャフトは下がってベベルギアからはずれるだろうな

するとカムシャフトの回転が止まるだろ

バルブは燃焼室に突き出たまま止まるんだよ

ヒョーーーー

不安をかかえたまま、ベベルタワーのカバーを引き上げるのであった。

シリンダーとシリンダーヘッド -W650エンジンのレストア&モディファイ-

カムシャフトをセット

エンジンの腰下の部分が完成した。作業はエンジン上部へと移動していく。

シリンダーとピストン

ピストンヘッドには物凄い厚みのカーボンが溜まっていたので、これを除去する。

ピストンヘッドにこびりついたカーボン

カーボンを剥がしてみると、ピストンヘッドはツルツルだった。こんなんでもカーボンって溜まるんだね。

カーボンを取り去ったピストン

コンロッドにピストンを取り付けて、シリンダーを装着する。ただし、Wのピストンは左右同じ位置にある。1人だと非常にシリンダーに入れづらい。

クリアファイルを切って、ピストンリングコンプレッサーのようなものを作り、シリンダーをメインチューブから紐で吊るして作業する。

クリアファイルごとシリンダーに吸い込まれる。

だめだ、薄すぎた

単気筒なら  

多気筒でも、せめてピストンの位置が違えば

スマートに進まない作業は気持ちが悪い

シリンダーヘッド

シリンダーヘッドは燃焼室はもちろんのこと、ポートにも相当なカーボンが溜まっていたのでバルブ周りをすべてバラして掃除をした。

バルブスプリングコンプレッサーでバルブ周りを分解する

カーボンが堆積したシリンダーヘッド

シリンダーヘッドにもカーボンが堆積

カーボンを取り去ったシリンダーヘッド

カーボンを取り去ったシリンダーヘッド

そのシリンダーヘッドをシリンダーの上にかぶせる。シリンダーとシリンダーヘッドは共締めだ。

ボルトを締め終わったら、フライホイールの上死点マークをあわせてから、シリンダーヘッドの上に指定の回転位置にあわせてカムシャフトを載せる。その上からかぶせるようにカムシャフトキャップをセットする。このカムシャフトキャップというのは、ロッカーアームがじゃらじゃらくっついている、カムシャフトを固定する部品だ。

カムシャフトをセット

2種類の太さの何本ものボルトを仮締めしてから、太い方のボルトを規定のトルクで決められた順番で締めていく。太い方が締め終わったら、続いて細い方を締めにはいる。

ここで、なにやらおかしい1本が現れた。締めても締めてもトルクレンチがカチって言わない。めねじがダメになっていく感覚に似てる

( ̄▽ ̄;)

意味が無いとわかっていても、トルクレンチにかける力を瞬間的に強めて、矯正的にカチッといわせる。よし、これでOK(と、自分に言い聞かせる) 

バルブクリアランス調整

ここから、バルブクリアランス調整に入る。Wのバルブクリアランス調整は変わっていて(いや、これが普通なのか?)、ロッカーアームとバルブの間に挟んだ、シムで調整する。よくある(いや、こっちがマイノリティか?)ロッカーアームの先端のネジで調整するタイプではない。

このタイプのメリットは、ネジの緩みが起こり得ないという信頼性の高さだが、適した厚みのシムがなければ調整は一切できないデメリットがある。今回はW400分のシムもあるので多少安心だ。

このシムを取り替えるにはロッカーアームが邪魔になるのだが、Wは面白い方法で解決している。ロッカーアームが水平に移動するのだ。これによってカムシャフト周りを分解することなく、シムを交換してバルブクリアランスを調整できる。

1番シリンダー側からシクネスゲージでバルブクリアランスを測定し、それを一つ一つメモしていく。続いて2番シリンダー。ロッカーアームの下にシクネスゲージを差し入れ・・・

あれ? シクネスゲージが入らない

ロッカーアームを揺さぶってみても、カタっとも動かない。こんなミッチミチなバルブクリアランスってありか? 他のところのシムと替えてみよう。そう思ってロッカーアームをずらし始める。

むむ 動かない (そりゃそうだろ)

プラスチックハンマーで叩いてみよう (やめとけって)

少しずつ動いてるぞ (そろそろ気づけって)

カチン!

何だこの音は? 抑えられていたものが解き放たれて、伸びあがったところを金属の壁にぶつかったような音だ。

(抑えていたロッカーアームが外れてバルブスプリングが伸び、バルブがバルブシートに当たった音だよ)

うっわー そうか 1番シリンダーが圧縮上死点の時は、2番シリンダーは排気上死点だ。ロッカーアームがバルブを押していたんだ。

バルブを指で押してロッカーアームを元の位置に戻そうとする。

いやあ 無理だってわかってるさ ちょっとやってみただけだよ

カムシャフトキャップをばらさないとダメだな あのボルト せっかく締まったのに(いや締まってないって)

おろかな自分を呪いながら、カムシャフトキャップのボルトをゆるめはじめるのであった。