シリンダーヘッドをリフレッシュする -W650のボアアップ-

カーボンを落とした左と落とす前の右

Wを810にボアアップしようとしている話の続き。一番はじめの話はこちら。

ベベルギアケースユニットのベアリングの交換を無事に終え、W650のカムシャフトとW400のシリンダーヘッドの相性を確認のために、プラスチゲージでカムシャフトのクリアランスを測定する。

3箇所あるジャーナルの内、1箇所がプラスチゲージのゲージを超える幅まで潰れていた。ここで測定範囲の違うプラスチゲージに変えるべきだったがまあこれぐらいは大丈夫だろうと判断した。これがとんでもない間違いだった。

燃焼室、ポートのカーボンを落としてきれいにする。下の写真の右側が清掃前、左側が清掃後だ。

外部は古い塗料と汚れを落として再塗装に備えた。バルブガイドのがたをノギスを使ってチェックする。

アストロプロダクツで買ったタコ棒とコンパウンドでバルブのすり合わせを行う。

光明丹を使って、バルブとシートの当たり幅を確認する。

ベベルギアの刃当たり調整も行った。

字で書くとあっという間だが、この作業にはかなりの時間がかかった。

最後に念のためカムシャフトの動きを確認しようと、カムシャフトキャップを本締めした時にそれはわかった。

カムシャフトが動かない・・・

ボルトを締める工程において、作業途中でかかる中間トルクも、前後のボルトで同一になるように注意して締め付けてあげると、なんとか動くぐらいになった。いやでもこれって

あっという間に焼き付くってよ!

何度も締め直して確認すると、最後に閉める一番外側のボルトを規定トルクで締め付けた瞬間にカムシャフトが動かなくなることが分かった。その場所はプラスチゲージで測定した時に、一番クリアランスが狭かった場所だ。

プラスチゲージでもう一度測定してみると、カムシャフトクリアランスの許容範囲より小さなクリアランスしかなかった。

ダメもとでサンドペーパーで削ってみる。しばらく頑張ってみたが変化はない。今までの作業は全くもって無駄になるのか? 結構たいへんだったぞ 何かいいものないかな? と、ホームセンターに行ってみる。

あった

こんなおあつらえ向きのものが存在するのかっていうほどのステンレス製のシム。

だが、買って帰ってきたものの、加工がめんどくさくて使うのをやめた。結局、家にあったバーベキュー用の厚めのアルミ箔をシリンダーヘッドとカムシャフトキャップの合わせ目に貼ることにした。

4点あるジャーナルのうち右側2点にだけ同じ厚さのシムを入れているのでカムシャフトキャップに微小な歪みが生じている気もするがそこは目をつぶる。やっていることはすでに破綻している。

プラスチゲージでクリアランスを確認すると目論見通りカムシャフトクリアランスの許容範囲内に入ってきた。

よしよしこれでカムシャフトは軽く回るはずと気を良くしながらカムシャフトキャップを組み立てた。カムシャフトを手で回してみる。

おっ 重い(^_^;)

そりゃそうだ。シムを入れた鉛直方向にクリアランスはできたが、水平方向は一切広がっていない。

ち〜ん

これでW400のシリンダーヘッドを使う作戦は終了した。

全ての作業をW650のシリンダーヘッドでやりなおした(;^_^A

W400のシリンダーヘッドでの作業でも思ったことだが、ちょっと解せないことがある。それはベベルギアの当たり調整をする際、0.15ミリのシムを一度外して調整し調整後そのシムを戻すというところだ。

いい当たり具合に調整したのに最後に0.15mm足す意味がわからない。まあ、愚か者には想像もつかない、立派な理由があるのだろう。

ところで、こんな作業の中、カムシャフトキャップを締め付ける6ミリのボルトが何本も伸びてだめになった。過去に経験したことなので驚きはしなかったが、手持ちのボルトでも足りなくなってしまった。仕方ない注文しよう。カワサキオンラインショップへいく。検索すると、なんと欠品中ではないか。

まったく カワサキは・・・

仕方がないのでミスミにいく。六角穴付きフランジボルトにした。大事な強度区分は10.9だ。これでシリンダー戻ってくるのを待つばかりだ。

ベベルギヤケースユニットのベアリング交換 -W650のボアアップ-

ばらばらになったベベルギヤケースユニット

ビトーR&Dのボアアップキットを組み込む話の続き。1回目はこちら

シリンダーをボーリング作業に出している間に、シリンダーヘッドの整備を行っている中で、ドライブベベルギヤのベアリングを交換しなければならなくなったのだが、その作業をするための特殊工具が廃盤になっていた。

ベアリングハウジング治具M45×1.0の自作

作るにあたって、このベアリングハウジング治具なるものが、なんのために必要なのかを考察する。この特殊工具の出番は二回ある。一回目は、ベアリングハウジングにねじ込まれたベベルギヤケースを緩める時。二回目は、ベベルギヤとベアリングをプレスして外す時だ。ただ、この二回目のプレスの際は、治具は無くても作業はできるので、ベベルギヤケースを緩めることさえできればいいと思う。

ベアリングハウジング治具には、内側にネジが切られている。そのネジがM45×P1.0なわけだが、そこにベアリングハウジングをねじ込む。ベアリングハウジング側面には、180度離れて二つの穴が開けられていて、その穴にベアリングハウジング治具からネジが差し込まれて、ベアリングハウジングをホールドする。ベベルギヤケースを緩める力は、この2本のボルトに全てかかるわけだ。特殊工具の外側は平面があり、万力で押さえられるようになっている。

手っ取り早くM45でピッチ1.0のナットを探したが、さすがにそんなものはなかった。そこで考えたのが、Lアングルを2個組み合わせて、四角い筒を作るということ。四角い筒なら、万力で押さえられるし、工作も簡単だ。

大事なのは、ベアリングハウジングをホールドする2本のボルト。ベベルギヤケースの締め付けトルクが98N・mと、かなり大きい。手持ちの強度区分の高そうなM6のボルトを使うことにしよう。

ベアリングハウジングの径より小さいLアングルを使用して、そのふたつをつなぐように更に小さいLアングルを溶接した。

位置を慎重に合わせて、ボルト用の穴をあけてタップをたてる。基本的にはこれで完成。

自作ベアリングハウジング治具の使用

完成したベアリングハウジング治具を使用して、ベベルギヤケースを緩めるわけだがこのトルクに耐えられるような万力が無い。今までも、しっかりした万力は欲しかったのだが、なんとかごまかして作業してきた。

検索してみると、想像していたより安い金額だった。早く買えばよかった。ネットでの注文も考えたが、アストロプロダクツに行ってみた。ついでにタコ棒とコンパウンドも購入した。

万力も揃ったので作業開始。ベアリングハウジングのネジの保護のためにビニルテープを巻き、治具の中に収め、回転防止のボルトをねじ込んでいく。ベアリングハウジングの穴に、2本のボルトが同じぐらいの長さが差し込まれているか確認して、万力にセットする。

メガネレンチをかけて、力を込める。それなりに力は必要だったが、あっけなく緩んだ。そのままベベルギヤケースを取り去る。すると現れるのが、ベベルギヤ取り付けナットだ。

ベベルギヤ取り付けナット用ソケットの自作

このナットは90度刻みで4点の切り欠きがあり、そこに爪をかけて締めたり緩めたりする。ナット自身は奥まった場所にあるので、ソケット状の工具でしかアプローチできない。

これはもう、それらしい大きさのソケットを加工するしかない。問題は、これまた59N・mと、そこそこ大きなトルクで締め付けられているので、自作したソケットの4つの爪が消し飛ばないかが心配なところだ。

ナットの切り欠きの直径を測り、それに近い内径のソケットを選び出した。まず、このソケットのナットがかかる部分をベビーサンダーで切り落とす。この時、0.5ミリほど、ナットがかかるギザギザを残しておいた。このギザギザを頼りに、しかし基本目検討で4つの爪をけがく。

けがいた線が残るように、不要な部分をベビーサンダーで切り落としていく。爪はどんどん小さくなっていき、トルクに耐えられるのか不安になってくる。とにかく削り過ぎないようにだけ注意した。

4つの爪は、だいぶそれらしい大きさになったはずだった。ただ構造上、1箇所だけはめて大きさを確認することができない。はまる時は3箇所は同時だろう。それまでは、どこが合っていないかがわからない。

それでも、2箇所だけ半がけみたいのを順繰りやって、その時の感触で削るべき場所を判断して削っていった。そしてその瞬間が訪れた。4箇所いっぺんにはまったのだ。その後、微調整をして、ソケットは完成した。

自作ベベルギヤ取り付けナット用ソケットの使用

完成したソケットでナットを緩めるには、ベベルギヤを押さえなければならない。それには、ベベルギヤホルダーという特殊工具が必要になる。これは、手持ちのべベルシャフトを切って、万力ではさめるように平面を作った。

自作ベベルギヤホルダーを万力ではさみ、それにナットが上になるようにベベルギヤをはめる。そのロックナットに自作ベベルギヤ取り付けナット用ソケットをはめる。「爪よ飛ぶな」祈りながら力を込めた。

クッ という感触でロックナットが緩んだ。(ニヤリ)

ベアリングのリムーブとセット

ベベルギヤとベアリングの取り外しにはいつものように、油圧ベンダーのポンプを使ってやった。

ばらばらになったベベルギヤケースユニット。

ベアリングを圧入し、ベベルギヤを圧入する際は、その向きに注意。ベベルギヤをはずす時はベアリングにかかってはいけない力がかかってしまうので、間違えたら最後。こういう時に、本気で逆に入れてしまうのが俺。自分ダブルチェックで方向を確認してから圧入した。

ベベルギヤ取り付けナットを締め付ける。

ねじロックを塗布して、ベベルギヤケースを締め付けて完成。

ベベルギヤケースユニットを立てて置いて、ベベルギヤを指で回すと抵抗なく回った。

※本サイトのタイトルでは、「ベベルギア」だが、今回の記事では、カワサキが使っている「ベベルギヤ」を尊重しております。

ボーリング作業依頼とシリンダーヘッド -W650のボアアップ-

美しいCP CARRILOのピストン 

5回続いたエンジントラブルの話から、W650ボアアップの話が始まります。今回が1回目。

ボーリング作業依頼

アップガレージで見つけたビトーR&DのW650ボアアップキット。CP CARRILOの鍛造ピストンが、まるで宝石のように美しい。

シリンダーライナーを交換するボアアップになるのだが、この作業をどこかでやってもらう必要がある。ちなみに今までにこのような作業を依頼した経験は無い。ネットで検索して、2~3の候補を見つけた。

ところが、キット付属の説明書に、「信頼できる内燃機関専門工場または当社までご依頼ください」とあったのだ。どう考えても、ビトーR&Dさんにやってもらうのが間違いない。ということで問い合わせフォームから連絡してみた。

数日後回答をいただく。作業についての疑問点を営業さんに丁寧に対応いただき、作業を依頼することになった。ボアアップキットは日本の各地を巡ったあと、親元に帰るわけだ。

ここで、ボアアップしてもらうシリンダーだが、W400のものにすることにした。本ブログの熱烈読者ならご存知の通り、我が家にはW400のエンジンがバラバラながら1機ある。そしてW400とW650のボアは等しく、72ミリだ。今のシリンダーはBEETのボアアップキットが組まれているので、これを温存しておくという訳だ。ピストンが無いから意味はないのだが。

W400シリンダーのフレッシュアップ

W400のシリンダーを観察する。黒い塗装がはがれかかっており、腐食もしている。両気筒の間の通路に、ゴミも付着している。こんな汚いシリンダーを送ることはできないので、きれいにしなければならない。

ひどい付着はスパチュラでこそぎ落とす。腐食はワイヤーブラシタイプの先端パーツを使い、ルーターで削り落した。今回はじめて、ブラシが軸と平行に先端に出ている竹ぼうきみたいな形のものを使ったのだが、フィンの間を削るにはもってこいのものだった。

きれいになったシリンダーと、ボアアップキットのピストン、シリンダーライナー、Oリングを箱に詰めて、ビトーR&Dに送った。作業は3週間ほどかかるとのことだ。

ベベルギアの破損

シリンダーの加工の間に、シリンダーヘッドのフレッシュアップをすることにした。バルブをはずし、燃焼室内のカーボンを落とす。エアジェットを嚙みこんでできた傷や凹みを、ルーターで削りすぎないように平らにする。

続いて少々気になっていたベベルギアを観察する。ドライブ側のベベルギアの歯に、1点欠けているような所があったのだ。老眼鏡に、拡大鏡を装着して見てみる。やはりそこは欠けていた。それどころか、ギア全体がガタガタになっているではないか。

これは完全にやばいやつだ。

試しにカムシャフトを仮組みして手で回してみる。カムシャフト1回転ごとでも、ベベルシャフト1回転ごとでもない、ある周期でゴリゴリッという音がする。これはエアジェットとは関係ない。前回の組立の際の、ベベルギアの当たり調整ミスだろう。焼けたように黒かったのも、これが理由なんだろう。せっかくW810になるのに、このベベルギアに目をつむるわけにはいかない。

そんな時はやはりW400の部品だ。ロフトから段ボールに入ったシリンダーヘッドをおろして、中身を確認する。

ベベルギアは、傷も無く、焼けたりもしていない。そこで思いつく。このシリンダーヘッドごと使えばいいんじゃないの?

ということで、このシリンダーヘッドの現状を確認しよう。

W400のシリンダーヘッドまわりの確認

まずはカムシャフト。W400だったころに、W800のカムシャフトに交換するという流用チューンを読んだことがあった。W800の方がハイカムになっているとのことだ。じゃあW650のカムシャフトとは違うのかということで、カム山の高さを確認してみた。

上がW650で、下がW400。W650は36.7ミリ、W400は35.2ミリと、W650の方が1.5ミリ高かった。ということは、カムシャフトはW650を使うことにしよう。次にドライブベベルギアを確認してみる。シリンダーヘッドに装着された状態で指で回してみると、ちょっと重い感じがする。これはエンジンをばらすときに、シリンダーヘッドボルトが噛んでしまい、サンダーで頭を落としたということがあったのだが、その時の切削粉が流れ込んでいるからだろう。ということでパーツクリーナーでじゃぶじゃぶ洗浄してみる。

変化はない。ドライブベベルギヤケースユニットをシリンダーヘッドから外してみた。

W650のドライブベベルギアケースユニットも外して比較してみる。明らかにW400のものは重い。どうしたものか? エンジンオイルを注入して、電気ドリルでぐるぐる回してみたが、変わることはなかった。これは使えない。ベアリングを交換する必要がある。

サービスマニュアルで調べると、4つの特殊工具が必要だった。

  • ベアリングハウジングからギアケースを押さえる【ベアリングハウジング治具M45×1.0】
  • ベベルギア取付ナット用【ソケットレンチ】
  • ベベルギアを押さえる【ベベルギヤホルダ】
  • ベベルギアを回転させる【ベベルギヤドライブビット】

これらを買いそろえると、なんと4万円近くするではないか・・・

数日考える

考えた結果、重いベベルギアも、ガタガタのベベルギアも使えないので、特殊工具を買うことにした。ただし、ベベルギヤホルダとベベルギヤドライブビットは、手持ちのベベルシャフトをぶった切って作ることにしたので、予算は半分の2万円で済む。早速買おう!

勢い込んで注文しようとしたが、なんと廃番になっていた・・・

おいおいカワサキ W800は現行車種だろ

どうなる?

ピストンを探す -エンジンから異音-

宝石のような鍛造ピストン

キャブレターの油面を確認しようと思ったらエアジェットを燃焼室に吸い込んでしまったことに気づき、ついにエンジンを開けてみると、1番のピストンに大きなガタを確認した話の続き。エンジントラブルからの異音の話の始めから読みたいかたはこちら。

ピストンの摩耗

1番のピストンにガタが見つかったので、泣く泣くシリンダーを外す。前にも話したが、Wはシリンダー間に空気の通路があり、そこにオイルの行き還りのパイプがある。パイプとシリンダーには1ミリぐらいの隙間があり、そこに前輪が巻き上げたゴミが溜まる。オイルのパイプを抜くと、そのゴミがクランクケースに入ってしまうのだ。

幸い、根元に液体ガスケットを盛っておいたおかげで、隙間にゴミは入っていなかったようだ。「雨の日は走らない」を徹底しているのが功を奏しているのだろう。

シリンダーとピストンを外し、部屋に持ち込む。ピストンの外径を計測すると、1番と2番のスカート部で0.2ミリ違った。ガタがあまりなかった2番のピストンを、1番のシリンダーに入れてみたがガタは感じられなかった。結論はこうだ。

エアジェットを吸い込んで、それが例えば排気側のスキッシュエリアに入った時、ピストンの前方は下に押され、その反動で吸気側のスカートがシリンダーに押さえつけられる。エアジェットが燃焼室内にいられたのは数分のことだと思うが、そんな短い間でもピストンを0.1ミリ削ったわけだ。

今思えば、あの金属音を聞いた時に、すぐにエンジンを止めるべきだった。今、後悔しても、あのピストンはもう戻ってこない。

代わりのピストンを探す

ピストンの摩耗がカンカン音=スラップ音とわかった今、その音を消すには、ピストンを交換するしかない。我がWは、BEETのボアアップキットを組んである。というか組んであるエンジンを買った。だから、そのボアアップキットのピストンを手に入れなければならない。検索してみたが、もはやそんなものはなかった。

では、どうすべきか。ここで浮かび上がってくるのが、以前からやりたいと思っていた、エンジンをアシストスリッパークラッチになった2世代目のW800のものに換装することだ。クラッチが軽くなるのは、おじいちゃんの夢だ。しかし、その夢はすぐに砕ける。ヤフオクに出品されていない。今までもちょくちょく探しているが、W800のエンジンは、あまり出てこない。

やっぱり純正部品じゃないと、こういう時困るよなぁ と感じて思いついたのが、W800のシリンダーとピストンを買うことだ。純正部品だから、その後のトラブルにも対応しやすい。そう思ってカワサキのホームページにいく。

なんと欠品中ではないか。ピストンすら無い。現行車種なのに・・・ 純正部品だからって、全然安心できないじゃん!

W800には、できないらしい。仕方ない、他のW650ボアアップキットを探す。しかし無い。いや、ひとつだけある。ビトーR&Dのものだ。ただこれは高い。ウオタニを導入する前なら良かったが、すでにかなり出費しているので厳しい。

W800のボアアップキットならあるのではと探してみた。この場合、ノーマルスリーブをボーリングする構成なので、別途スリーブを手配する必要があるのが難点だ。しかし、そんな心配は無用だった。販売終了ばかりなのだ。現行車種なのにだ!

どうしよう・・・

あっ W400のシリンダーとピストンあるじゃん

ご存知の通り、W400はW650のストロークダウンモデル。つまりシリンダーとピストンは同じ。(品番違うけど、基本は同じはず) そして我がWは元々400だったので、分解された400のエンジンが1機あるのだ。それを使えば、スラップ音から解放される!

しかしなぁ 675ccになっちゃうよなぁ・・・

とりあえず探してみる。シリンダーはあっさり見つかった。排気量の表示はどうなってるんだっけ? と思って見てみると、なんとつるっとのっぺらぼうだった。なるほど。シリンダー内壁を観察すると、ピストンの下死点の痕が、シリンダーライナーの最下端よりだいぶ上にある。かなりのショートストロークだということがわかる。

さてピストンはどこにしまったっけ? 

いくら探してもみつからない。これではシリンダーがあっても意味が無い。持ってたはずのものを買うのは悔しいが、念の為カワサキ純正部品のサイトを見てみる。

欠品中

まじか(´・ω・`) もうだめだ

スラップ音から逃れる方法は、もはや一択。 ビトーR&DのW650ボアアップキットのみだ。

あらためて、ビトーR&Dのホームページに行ってみると、キットの部品が単品で販売されていた。これだよ、これ! こうあるべきでしょ

ビトーのボアアップキットの入手

覚悟を決めて、148500円のビトーR&Dのボアアップキットを買うことにした。実際に購入する前に、もう一度巷の評価を確認しようと、ネットで検索する。まったくもって覚悟ができていない。しかしこの潔の悪さが、すごい効果をもたらした。

検索結果に、アップガレージのページがあった。クリックすると、なんとそこには新古のビトーのボアアップキットが、ほぼ半値で販売されていたのだ。まじかよ!

ためらうことなく購入。2日後には宝石のようなピストンが我が家にやってきたのである。

原因の判明 -エンジンから異音-

CRキャブレター

3000回転付近でするエンジンからの異音と1番シリンダーのみ湿っぽいのを、点火系のトラブルと推測し、ウオタニを装着するも問題は解決しなかった。このエンジントラブルの話を始めから読みたい方はこちら。

点火系が問題では無いとすると、エンジン内部に何らかの問題があるというのか? やはりもうここでエンジンをバラしてみないとならないところまで来た気もする。そう思いながらも、左右のシリンダーの湿り気が違うことに、なにか理由を見いだせないかとネットを検索する。

そこでたどり着いたのが油面。油面の高さに左右差があると、燃調にも差が出るというのだ。えっ? という印象。油面なんてある程度の範囲に収まっていればいいんじゃないの?

どうやら違うらしい。油面が高ければ吸い出されやすく、逆は吸い出されにくいのだそうだ。まじか・・・知らんかった。

キャブレターを分解する

油面を確認するためにキャブレターを取り外す。サイレンサー型エアクリーナーなので、取り外しは意気込まなくてもできる。完成時に内径が小さすぎて、キャブレターにもサイレンサーにも、はめづらかった自作ダクトは、伸びて丁度よいサイズになっている。これはこれで問題かもしれないが、今後の経過観察対象としよう。サイレンサー型エアクリーナーの製作話の1話めはこちら。

難なくキャブレターを取り外し自分の部屋に持ち込んだ。CRキャブレターの油面測定方法は下記の通り。

フロートチャンバーケースをはずす

エンジン側を下にした状態から、フロートチャンバー側を持ち上げていく

フロートチャンバーケースの合わせ面が15度~30度の時に、フロートチャンバーケースの合わせ面とフロートの底の高低差を計測する。基準は14±1ミリ。測定する場所はメインノズルの真横

これは一人でやるのは無理そうなので、キャブレタースタンドを2×4の端材で作った。

CRキャブレターの油面調整のため、キャブレターホルダーを製作

スタンドに載せ、CRを何度も回転させてみるのだが、フロートのベロがフロートバルブのピンに当たった時を見定めるのが難しい。老眼もかなり影響しているが、見づらいのも間違いない。

ところが、よくよく観察していると、ピンとベロが接触したあと更に傾けても、測定している部分の距離は、すぐには変わらないことがわかった。先入観としては、徐々に縮まっていくと思っていたが、そうでは無いらしい。

老眼鏡をかけて、食い入るようにキャブレターを覗き込んでいて、あることに気がついた。右のキャブレターにある部品が、左には無いのである。

吸入側の下部にある真鍮製の六角形の部品。エアジェットが左のキャブレターには無い。

( ̄▽ ̄;)

これか

エアジェットはパーツリスト上の25番

これが緩んで吸い込まれたんだ

そしてプラグの電極を潰したんだ

エンジンに異常を感じ路肩に寄せた時に聴こえた金属音は、エアジェットが燃焼室内で暴れていた音だったんだ

熱かったろうに・・・

なんとか下道に降りた時には金属音がしなくなっていたのは、溶けて消えてったんだね

サヨウナラ

これはもう間違いなくエンジンを開けなければならない

ちなみに油面高さは左右ともに適正値の14ミリだった。

CRキャブレター

エンジン分解

エンジンを分解するに当たって、音の原因を推察してみた。

吸い込んだエアジェットがバルブが噛んで、バルブステムがちょっと曲がっている。

エアジェットを潰した影響でコンロッドのスモールエンドがなにやらなってる

できることならシリンダーヘッドまでで、せめて腰上で解決して欲しい。

エアガンでシリンダーの中央の通路のゴミを吹き飛ばす。ここにゴミが溜まっていると、シリンダーを外した時にゴミが全てクランクケースに落ちていくからだ。一応、中央のボルト4本とオイルの行き還りパイプには、隙間を液体ガスケットで塞いではいる。ただ、完璧とは言い難い。

シリンダーヘッドカバーを外した。目視では特に何も異常な点は見当たらない。上死点に合わせて、タペットクリアランスを測定する。1番の排気外側だけが、規定より狭かった。なにか関係するのだろうか? ベベルシャフト側のベベルギアがちょっと黒く焼けたように見える。気のせいだろうか?(これは後々、新しい問題となってくるが今は気づいていない)

カムシャフトカバーを外す。カムシャフトにも特に問題は無さそうだ。

以前 もう30年ぐらい前の話になるが、当時XLR250に乗っていた。高速で八王子から都心まで通っていたのだが、若いので結構ぶん回していた。ある日突然、エンジンがカンカン鳴るようになった。その時は、3000回転とかだけではなく、ずっと鳴っていた。すぐになんとかすればいいものを、走るものだから、そのままにしておいた。

数日後、走行中にエンジンが止まった。夏のすごく暑い日の午後で、家まで押して歩くのが大変だった。後日シリンダーヘッドカバーを外して驚いた。カムチェーンが無いのだ。そしてカムの山が異常な削れ方をしていた。おそらくだが、回し過ぎてカムチェーンがギア飛びし、バルブタイミングが狂ってバルブとピストンが接触するようになった。(これがカンカン段階)

バルブがピストンに当たるから、その力はタペットを押しカムを削ったのだろう。直すのにフルオーバーホールが必要だった。

その時のことがあったから、異音には割と神経質だったのだが、今回は鳴らない時は鳴らないというところが、ここまでエンジンを開くに至らなかった原因だろう。

べベルシャフトの連結を解放し、シリンダーヘッドを外す。上死点で止まっているふたつのピストン。1番は傷だらけだ・・・ 

エアジェットを何度叩いたのだろう。シリンダーヘッドをひっくり返してみる。ああ・・・ なんか深い傷が・・・その傷には、1ミリぐらいの真鍮の粒がくい込んでいた。

ふと思いついて、ピストンの前後を交互に押して、ガタを確認してみた。2番は小さな動きだ。対して1番。かなりガタがある。カタッ カタッ とはっきりガタを感じる。

これか スラップ音だったんだ

ASウオタニの導入 -エンジンから異音-

ASウオタニのSP2コントロールユニット

ツーリングに向かう途中でエンジントラブル。その後3000回転での異音に悩まされている話の続き。1番始めから読みたい方はこちら。

ファイバースコープで燃焼室内を確認したところ、1番だけ湿っていた。これは点火系に間違いない。W650のイグナイターはもう廃番。となったらウオタニだ。

ということでウオタニが家に届いた。購入したのは、SPⅡフルパワーセット 税込6万円弱。なかなかの出費だが、イグニッションコイルの寿命も超えてるし、イグナイターはW400のだし、いい機会だろうということにしよう。覚悟を決めて購入。そして配達された。

ASウオタニ SP2フルパワーキット

幸いにも、W650専用が存在している。

ASウオタニのSP2コントロールユニット

ウオタニのイグニッションコイルを取り付け

プラグコードはセットに入っておらず、説明書によると、新品を用意することとなっていたが、今回は純正流用とした。まずは古いイグニッションコイルをはずす。ウオタニとの大きさの比較。

ASウオタニと純正のイグニッションコイル比較

プラグコードの根元のキャップナットっぽいやつを緩めると、プラグコードは抜ける。

コイルからプラグコードを抜く
コイルから抜いたプラグコード

こうして利用すれば、古いプラグコードの長さを有効に使える。抜き出したプラグコードを、ウオタニのイグニッションコイルにつないでも、元の状態をと同様の長さ感になるように印をつける。

プラグコードの長さを、純正時と同じになるように印をつける

プラグコードの被覆を18ミリ剥ぎ取るとあるので、つけた印から先端が18ミリ以上あるのを確認し、剥ぎ取り作業を開始する。印にカッターで垂直に刃を入れる。

印をつけた部分に、カッターの刃を入れる

カッターの刃を芯線まで届かせてはいけない。あっ 自分、電気工事士です。電線の皮を剥くのはプロです。全周ギリギリまで刃を入れたら、ペンチで被覆を甘噛みして引っ張れば被覆は剥ぎ取れる。

被覆剥ぎ取り完了

出てきた芯線を18ミリ残し切断する。

芯線を18mmにカット

端子を圧着する前に、ゴムブーツをプラグコードにかぶせておく。その際、シリコンスプレーを吹いて、滑りをよくしておいた。このような潤滑剤は、ゴムブーツの膨らんだ部分=イグニッションコイルにかぶさる部分には塗ってはいけないとなっているので注意。

ゴムブーツを挿入しておく

次に芯線を折り返し、端子を圧着するのだが、端子は周の1/8ぐらいが開放された筒状態の部分で被覆を押さえる。この開放した端部がギザギザになっていて、いかにも食い込みそうなのだが、このまま圧着してもそうはならなそうなので、ギザギザの先端を内側に向けておいた。

コネクターのギザ部分を内側に折って、被覆に食い込むようにする

折り返した芯線をギザギザの対面になるように端子にプラグコードを差し込み、プライヤーを使って圧着させた。簡単に抜けないか、端子を軽く引っ張って確認する。

コネクター圧着完了

端子を圧着し終えたら、イグニッションコイルに端子部を差し込み、ゴムブーツをイグニッションコイルのマニホールド部分に被せる。前述してある通り、この部分に潤滑剤は塗ってはいけないとなっているので注意。そして親指をなんだか痛めている俺には、この作業は結構きつい。

イグニッションコイルにプラグコードセット完了

プラグコードが接続できたら、あとは車体に取り付けるだけ。特に難しいことは無いが、製品名のステッカーが逆さまになってしまうのが、少々残念。

イグニッションコイルセット完了

コントロールユニットの取り付け

コントロールユニットのサイズは、純正イグナイターとほとんど同じだった。本来ならば、純正イグナイターを外して、そこにウオタニのコントロールユニットを取り付けたいところだが、ウオタニのコントロールユニットには取付穴などが用意されていないので、それなりの準備が必要だ。今回は、異音の解決が早急な目的なので、そんな時間は無い。シート下のETCカードリーダーの上に置くことにする。

ウオタニのコントロールユニットは、進角と最高回転数を調整できるようになっている。このボリューム調整は、コントロールユニットをZRX400のタンク流用のために新造した電装ボックスに納めてしまうと、簡単にはできない。仮に改造前の純正状態でも、純正イグナイターの位置に納めてしまうと、簡単にはできないだろう。そういう意味では、セッティングが決まるまでは、シート下がいちばんいいのかもしれない。

配線の接続は、純正ワイヤーハーネスのコネクターが直接刺さるのではなく、25センチ程の変換コード的なものを介す形となる。これを新造電装ボックス内で接続して、シート下の空間に一端を出し、ウオタニコントロールユニットに接続する。これでウオタニSP2フルパワーセットのインストールが完了した。

ウオタニの効果

今まで書いた作業を朝起きて始めて2時間ぐらい。これから試運転も兼ねて40キロ離れた会社まで行く。

朝の始動はキックと決めている。ステップを畳み、ブレーキペダルを後方に反転させる。キックペダルを展開し、チョークレバーを引いてイグニッションスイッチはオフのまま、キックペダルを1回踏み込む。

ぼふぉっ

これで初爆の種を燃焼室内に入れる。イグニッションスイッチをオンにしてクラッチレバーを握り、キックペダルを時計の7時まで踏み下ろす。そのまま10時まで戻したらクラッチレバーを離しキックペダルを踏み下ろす。

ぶろろろろん

始動は問題無しだ。

川沿いの道に出る。アクセルを開ける。今まで感じていた雑味が無い。燃焼がシルキーだ。音も明らかに小さい。

更に大きな道に出る。問題の3000回転は?

んーむ だめだぁ まだカンカン音がする(´・д・`)

ウオタニはとてもいいけど、このカンカン音で、点火系の問題では無いことがわかってしまった。

ついに、エンジンばらすしか無いのか?

異音と燃調の関係 -エンジンから異音-

MotoDXプラグ

ツーリングへ向かう高速でエンジンがおかしくなり、翌日ファイバースコープを使って燃焼室内を観察していたら、ピストンに挟まれてファイバースコープが抜けなくなった話の続き。始めの話はこちら

ファイバースコープの救出

ファイバースコープが潰れて、これ以上キックペダルが動かなくなった。まじでヤバい( ̄▽ ̄;)

待て こんな時は落ち着くんだ。慌てて動くと良くない方向にしか行かない。

この状況から抜け出すには、クランクを逆転するしかない。どうやったらクランクを逆転出来るか考えろ

そうだ ギヤを入れて、タイヤを逆転だ

ローに入れて、リヤタイヤを両手でつかみ逆転させた。ファイバースコープのコードを引っ張ってみるも、ビクともしない。

ローじゃダメだ

シフトペダルをガチャガチャさせて5速に入れた。タイヤを逆転させてみる。しかし、ファイバースコープはがっちりと動かない。

もう一度

タイヤを地面に叩きつけるように逆転させると、ファイバースコープのコードが動いた。引っ張りあげてみる。

ちぶれてるぢゃん(´;ω;`)

今朝手に入れたファイバースコープは、登板早々にひしゃげてしまった。レンズの保護板がもげかけている。エンジンの中に落とすとやばいのでむしり取った。

幸い画像には問題なかったので、観察を続ける。ピストンヘッドにさっきまでなかった丸い傷があった。ファイバースコープの先端によるものだろう。

結局わかったことは、カーボンは想像していたより、堆積していなかったことだけだった。

プラグの交換

新しいプラグを買いにナップスにやってきた。W650用はCR8Eだ。見つけた。安いな。ここでふと思いついた。なんかいいプラグ無いのか?

イリジウムとMotoDXという2種類があった。イリジウムは1度入れたことがあったので、MotoDXとやらにしてみるか。ただ、普通のプラグより2000円近く高い。しばし逡巡するも、ツーリングに行っていたらそれぐらい消費していたことを考えれば、まったく問題ないなとふたつ手に取りレジに向かった。

帰宅して箱から出てきたMotoDXプラグは、それほど変わった見た目ではなかった。イリジウムみたいに中心電極が細い。早速交換して試運転に出てみた。

エンジンは特になんの支障もなく始動した。アイドリングの音にも異常は感じられない。走り出した。

エンジンブレーキがかかるぐらいの2500回転ぐらいのアクセルオフの時に、カラカラと小さく聞こえる音が気になる。今までには無かった。ただ、それもエンジンが暖まってくると聞こえなくなった。

異音との闘いの始まり

Wで通勤してみることにした。プラグが湿っぽかったので、スロージェットだけ1番手下げた。セッテイングは下記の通り。

ASSJJNC段数MJ
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長く走るのはまだ不安が残るが、途中の横浜新道で高速のテストもできる。しかしそれは、横浜新道を待たずに現れた。

カンカンカンカン

3000回転ぐらいで、ものすごい打撃音がする。なんだこれは? とてもじゃないけど、この回転は維持できない。

横浜新道に入ると、そのカンカンな回転数がちょうどいい速度域となった。非常に煩わしい上に、それ以上回転が上がらない。これでは走れない! 走行車線に潜り込んで、だましだまし走った。

家の近くの川沿いの道で、カンカン音を維持させながら走り、帰宅してすぐにプラグチェックする。周りは黒く中心電極は白い。カンカン音は1/4開度の3000回転だ。そこが薄くなったか? スロージェットを60に戻してみた。

ASSJJNC段数MJ
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翌日も通勤セッティング。冷間時のエンジンブレーキの際のカタカタ音は無くなった。ただ、あまり変化は無いので、戸塚パーキングでジェットニードルのクリップを2段下げてみる。ちょっといいかなと思いつつ会社に着いた。

ASSJJNC段数MJ
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帰りの横浜新道下りの上り坂で、1/8~1/4のパーシャルでの脈動がひどく、かぶりそうになる。戸塚パーキングでジェットニードルのクリップを4段上げて、薄方向に振ってみた。

ASSJJNC段数MJ
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カンカン音がやんだ。

結局、燃調が濃かったという結末だった。

ところが、やんだと思ったが、まだかすかに音は聞こえていた。小さくなっただけだった。更に謎な音が増えた。フロントフォークに少し大きめなショックが伝わると、3000回転でなくてもカンカン音と同質の音が、カカカカカンと響くようになった。

ジェットニードルを1段太くして、更に薄方向にしてみた。

ASSJJNC段数MJ
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1/4パーシャルの不安定感が若干ながら薄らいだ。小さいカンカン音は変わらない。ちなみに51シリーズのジェットニードルは太さを細くすると、クリップ段数1段分も同時に薄方向になる構造になっている。さらにクリップ段数を変えてみた。

ASSJJNC段数MJ
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あまり変化は感じられない。プラグは中心はきつね色で周辺は黒い状態。スロージェットを一段薄くしてみた。

ASSJJNC段数MJ
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1/4パーシャルの不安定さは少し改善した 3000回転のカンカンはまだかすかにある。よーし こうなったら

ASSJJNC段数MJ
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禁断の全替えで薄方向へ動いた。低回転域からアクセルオープンのパワー感が無くなった。Mノズルで無くなったような感覚だった。これは間違いなく失敗だ。ファイバースコープで両シリンダー内を観察してみると、明らかに1番は湿っていた。これはもしかして点火系の問題なのでは?

今になって思えば単なる思いこみだが、この時は正解を発見した気分だった。イグニッションコイルかイグナイター。我がWは電装系はW400のものが多く残っている。いつかはイグナイターをW650にしたいと思っていた。意味があるかはわからないけど。

調べてみたが、もう廃番だった。そうなるとあれだ。ウオタニだ。

会社の二輪部員がBMWに入れて、いいと言っていた。最近インスタでDMすることがある、W乗りも入れていたので、劇的にいいのですかと訊いてみると、劇的までは言わないけどいいとのこと。よしウオタニ買おう。これでカンカンともオサラバよ。

次回はウオタニ導入の話

ファイバースコープで燃焼室内を見る -エンジンから異音-

ファイバースコープで見た燃焼室内

ツーリングへ向かう高速でエンジンがおかしくなり、帰宅してプラグを外してみると、外側の電極が潰れていた話の続き。始めの話はこちら

プラグの状態

1番のプラグの外側電極が潰れて、中心電極に触れるか触れないかという状態だ。これではまともな燃焼などしないだろう。この状態を見て真っ先に考えられるのは、なにか異物が侵入して、ピストンヘッドとプラグの間にはさまったのではないかということだ。

吸気は新造したサイレンサー型エアクリーナーで、パワーフィルターがついており、そんな異物が入るとは思えない。エアクリーナーからキャブレターまでは、自作したウレタンゴムのダクトしかなく、吸気経路内に外れるような部品は無い。一体全体何が起きたのか?

ピストンヘッドにカーボンが堆積して外側電極を潰したとか。現状どれだけのクリアランスがあるのか調べてみよう。潰れた外側電極をマイナスドライバーで直してから粘土で包み込み、エンジンに取り付けたあとキックを何回か踏みおろした。プラグを外す。

ピストンヘッドに押され粘土は潰れていたが、少なくとも1ミリの厚みは残っている。ということはカーボン堆積説は無いということか。ふと、中心電極の碍子と、周りとのすき間にマイナスドライバーを差し込んで、こじってみた。いや なんでこじるのって思うかもしれないけど、なんかこじっちゃった。

中心電極がずれている

あれ? 動く

中心電極がこころなしか動いたような。反対のすき間にマイナスドライバーを突っ込んでこじってみる。確かに動く。何度もやってたら碍子も外れた。ここが壊れるってどういうことだ? 

とりあえずプラグは交換するしかない。型番を写真におさめる。と、ここである疑念が湧く。このプラグはW650の指定されたものなのだろうか? このブログの読者ならご存知だと思うが、我がWは元々400だった。エンジンを650に載せ替え、リアディスクブレーキ化に合わせてフレームを650にし、改造車検をとった。そんな理由から、いまだにW400の部品が多く残っている(特に電装系)。プラグも十分その可能性がある。

調べてみると思った通り、ついていたプラグはW400指定のCPR8EA-9だった。W650はCR8Eだ。この違いも、もしかしたら今回のトラブルに関係しているかもしれない。400と650では燃焼室やピストンヘッドの形状が違うとか。でもクリアランスは確認したしなぁ

ああ ピストンヘッドの打痕が見たい

「プラグ 電極 潰れ」で検索していると、ファイバースコープで燃焼室内を観察しているブログを見つけた。Amazonのファイバースコープ販売のリンクもあった。しかも安い。即買った。例によって翌朝届いていた。

ファイバースコープで観察

早速梱包を剥がして取り出した。専用アプリを使うらしい。説明書に描かれたQRコードを読み取り、リンクを開く。てっきりgoogle playが開くと思っていたが、そうではなかった。レイアウトの崩れた、中国語サイトだ。

日本語に翻訳してそれらしいアプリをダウンロードしようとすると、このサイトからこんなもん落としたら危険だよと警告が出る。一瞬ためらったが実行した。ままよ

アプリがインストールされたのでファイバースコープをUSB端子に刺そうとすると刺さらない。 わお typeBかよ せっかく早朝届けていただいたのに、変換アダプター買うのに10時まで待たなきゃならんのか・・・

ふと、思いついて先代のスマホを見に行くと、まんまとtypeBだった。 ヨシヨシ 先ほどとは違い、無警戒でインストール。庭に行きWのスパークプラグを外す。

ファイバースコープをプラグホールに差し込む。ファイバースコープを通して、プラグが取り付けられる雌ネジがスマホに映し出された。

その穴にファイバースコープを入れようとするのだが、なかなか入らない。Wはプラグホールの入口から、スパークプラグの座面まで10センチぐらいある。それほど硬くないファイバースコープのケーブルを持って、真のプラグホールに進入させるのは結構難しい。

1度ファイバースコープを取り出し、ファイバースコープの向きとスマホに映し出された画像のむ気を合わせる。そして、ゆっくりプラグホールに差し込んだ。近づく真のプラグホール。それが画像の中心に居続けるように操作し、少しずつ奥へ進める。さながら内視鏡を駆使する医師か? 今年は大腸内視鏡検査行かねば・・・

ファイバースコープの先端が真のプラグホールへの進入に成功した。写っているのはピストンヘッド。バルブリセスが見える。ただ、これがピストンヘッドのどこを見ているのかわからない。記憶にあるバルブリセスの配置とも少々違う。

試しにキックペダルを操作してピストンを上下させてみた。近づくピストン。離れるピストン。

なるほど、バルブリセスの配置がおかしく見えたのは、シリンダーの内壁を鏡のように反射して見ていたからだ。よっつ見えてる内のふたつがなんとなくピンボケだったのはそういうことだ。

プラグホールは前に傾いているから、ファイバースコープは燃焼室の後方寄りを見ているということも次第にわかってきた。もう少しピストンヘッドの中心を見たいのに、傾いてる以上に後方寄りの画像な気がする。ファイバースコープを差し込んだまま、キックペダルを動かした。

ガッ

そんな音は聞こえはしなかったが、そんな感じでキックペダルが動かなくなった。同時にファイバースコープも動かなくなった。

( ̄▽ ̄;)

ファイバースコープがピストンに潰されて、抜けなくなってしまった。まじで出てくる汗。

突然のトラブルとつぶれた電極の謎 -エンジンから異音-

外側電極がつぶれたプラグ

パワーフィルター化もフロントフォークのオーバーホールも完了し、迎えた社内の二輪部による春ツーリング当日。集合場所は関越自動車道の下り高坂サービスエリア。圏央道に乗るべく、国道134号を西へWを走らせていた。

茅ヶ崎海岸インターチェンジのランプウェイに乗りかけたところで、ETCのインジケーターランプが点灯していないことに気づく。やばいやばい 路肩に寄せてエンジンを止めた。

財布をポケットから引きずり出し、ETCカードを探す。 あれ? 無い まじか、他の何に入れたんだ? 会社のETCカードならある。これを入れるのもありだが、あとの処理がめんどくさいぞぉ。もしかして入ってるかと思い、シートを外してカードリーダーの蓋を開けた。 あれ? 入ってる

もう一度抜き差ししてイグニッションスイッチをONにしてみるも、ランプは点灯しない。そう言われてみると、電装ボックスを新造して以来、初めてETCの動きを確認したのだった。つまり、あれ以来動いていない。

まずはヒューズを確認してみた。 めっちゃ固いヒューズホルダーで、ヒューズが抜けない。これじゃあ、わかんねえじゃん! ちょっとイライラがつのる。朝日に透かしてみると、ヒューズのウェイブが確認できた。オーケー問題無い。

ならばアースか? アースはZRXのタンク流用のために新造したタンク取付金物(半完成)の取付ボルトに、単独でとめられている。これを、USB電源たちのアースと共締めにしてみた。もちろんUSB電源は作動確認済みだ。

ところが、やはりランプは点灯しない。 さあ困った。 ETC無しでツーリングか。初めに高速から降りる予定がスマートインターだったはず。だめだ。

カードリーダーにささっているコネクターを確認する。 きちんとささっている。 というか、これは抜けない? 電源取り出しのための線の途中にコネクターがあったので抜き差ししてみる。 おっ ランプが点灯した。 

時計を見ると15分ロスしていた。こりゃ完全に遅刻だ。だが、どうせインカムの同期に手間取って、1時間は出発しないのが、うちの二輪部の伝統。慌てることは無い。15分ロスったとLINEを入れて発進した。

茅ヶ崎ジャンクションを左へ圏央道に入る。なんとなくエンジンの回転に雑味を感じる。それと寒い。今日は夏日になるとのことだが、晴天の朝は放射冷却で冷えるとのことで、12度ぐらいしかない。アクセルを握る右手の力も、あまり元気じゃない。

シリンダーヘッドカバーの裏に潜りこまさんばかりに膝を締める。段違いになっている内回りの影から逃げるように走行車線に移り、いやいやながらアクセルを開けて加速が始まったその時だった。

ばすーーー!

本当にそうだったか定かでは無いが、記憶での印象はそんな音とともにエンジンが止まった。すかさずクラッチを握る。

やっちまった・・・

初めに思ったのは、ベベルシャフトのスナップリングの断裂。そのせいで停止したカムシャフト。燃焼室に突き出したままのバルブにぶち当たるピストン。なぜそんな心配をするかはこちら

惰性で路肩を走らせる。ほんの少しだけの上り坂の重力を受けて早々にWが止まった。えっ? なんとエンジンは動いていた。ただ、「キン キン」と金属音が聞こえた。(これも確かに聴いた気がしている)

エンジンが動いているということは、ベベルシャフトのスナップリングは無事ということだ。試しにアクセルを吹かしてみる。

バボパスンッ バボバボパスンッ

かなりの不整脈だが、回転はあがる。そろーりそろーりクラッチをつないで走り出した。幸い出口がすぐそこだ。

パスンパスン言わせながら、なんとか高速を降りて、歩道にWを止めて観察する。見た目はなんともない。二輪部のグループLINEに、現状を伝える。去年の春ツーリングでは転倒し、今年はみんなに会うことすらできなかった。俺のツーリングは15キロで終わった。帰りがあるから30キロだけど。

途中、このパスンパスンはキャブレターの同調狂ったのかなと思い、CRのトップキャップを外して確認してみたが、そんな様子は無かった。では点火系の不具合か?

下道を15キロ、裏道をよってつないで、ようやく家にたどり着いた。家には、今日から作業に入る外壁塗装業者さんが来ていた。よろしくお願いしますとか挨拶をしている俺を見て、嫁がびっくりしていた。

業者さんに2階の窓周りのコーキングを日曜日にやらせてくれ(彼らが言うには、ペンキで十分だとのことだが、せっかく足場もあるのでやっておこうと)と伝えると、仕上がりに影響するから先にやってくれとのこと。

う~む ツーリングがコーキングかい(´・ω・`)

これから故障の原因を探り出して、秩父に向かわなければ、と思っていたのだがそうはいかなかった。いや、むしろWが、遊んでる場合じゃないぞ、家の事やれ。と、自ら故障したとか。春の青い空の下、せっせとコーキングをしたのであった。

3時過ぎにコーキング作業を終えて、Wのプラグを外してみた。2番は異常ない。1番を外してみる。

おおっ 

外側の電極がつぶれ、中心電極に接触しそうになっているではないか。これって、ピストンが当たったっていうことか?

いや 当たるわけないだろ  つづく

オイル注入 そして完成 -倒立フォークのオーバーホール-

駒込ピペットでオイルレベル調整

要交換部品を新しくして、ピストンロッドまで組み上がり、フォークオイルを入れるところまで到達した。倒立フォークオーバーホールの話を始めから読みたい方はこちら

フォークオイルを入れる

我がWのフロントフォークは2007ZX6Rのものだ。こいつのフォークオイルの量は、オーバーホールした際は525ccと決められている。あくまでもこれは目安で、厳密にはオイルレベルでの管理となる。フォークオイルレベルゲージなんて、たまにしか使わないので持っていない。前回これが必要になった時は、ブレーキホースのエア抜き用のシリンジとビニルホースを使った。今回はこれ。

2液性のウレタン塗料の硬化剤計量用の、安い駒込ピペットのようなものだ。こいつに、求められたオイルレベルにマスキングテープを貼って、それに合わせてフォークオイルを吸い取ることによって、指定されたオイルレベルを実現する。精度はフォークオイルレベルゲージと遜色ないし、なんてったって安い。

オイルをある程度入れてから、自作ピストンロッドプーラーを持ってピストンロッドロッドを数回スライドさせてエア抜きをする。この動作を繰り返していると、中空のピストンロッドが吸い上げたフォークオイルがピストンロッドプーラーに溜まり、やがてその上端から溢れ出す。ピストンロッドプーラーの側面には、オイル抜けの穴をあけておいた方が良いかもしれない。

オイルレベルを調整したら、あとはスプリングを入れて蓋をするだけって、ほとんど終わった気持ちになる。スプリングを入れ、続いてカラーを差し込んだ。その勢いで溢れ出すフォークオイル。

うわ〜(´・д・`)

再びオイルまみれになるフローリング。さほど勢いよくカラーを入れたつもりはないが、ピストンロッドとカラーの小さいすき間に、オイルが流れこむ間を与えずにカラーを差し込んでしまったのだろう。フロントフォークというのは大きな水鉄砲みたいなものだ。

また、オイルレベル調整からやり直さなければならない。飛び出たフォークオイルを掃除してから、カラーを抜く。すっと抜きかけたが、思い直してゆっくり引き抜く。スプリングはアルミの針金で引っ掛けて取り出した。針金が太かったせいもあるが、なかなか引っ掛からず苦戦した。相当無駄な時間とオイルを費やして、オイル注入が終わった。

プリロードアジャスターの修理

ここで、フォークキャップを取り付けるのだが、分解する際に間違ったところにスパナをかけたことで、プリロードアジャスターが機能しなくなってしまった。これを直さなければならない。

プリロードアジャスターは、フォークキャップの外に調整ボルトがあり、それを回すと内部にあるボルトが回転する。このボルトに、ネジが切ってあるアルミの板が取り付けられていて、ボルトが回転すると上下するようになっている。アルミの板はスプリングに押されたカラーの力を受けていて、板が下がればスプリングを圧縮するという構造だ。この板が、ボルトの端部にある、2辺しか平らなところがないナットに密着して動かなくなってしまっている。

板を押さえて、そのナットを回せば良さそうだが、板はフォークキャップの中にあり、押さえようがない。板はフォークキャップそのものとは同時には回らない構造なので、フォークキャップを押さえられればよいが、これはこれで押さえようがない。(今思えば、フォークキャップを締め付ける際に工具をかける部分なら押さえられた気がするが、当時は思いつかなかった)

プリロード調整できなくてもいいか

なんて思ったりもするが、すると最高にプリロードをかけた状態になってしまう。それはすごくいやだ。逆なら諦められたが・・・

間違ってこうなった逆の動きをしてみても、元には戻らなかった。まいった(*´д`*)

落ち着いて観察してみる。これはどういう構造になっているのか? これは?

フォークキャップの内部の先端に先端にスナップリングがある。こいつは、プリロードアジャスターの回転の限界を制御している。こいつを外せば、回転が続き、分解できるのではないか? やってみる

アルミの板の位置を制御している部品がフォークキャップから外れた。動かなくなっていたアルミの板をモンキーで押さえ、例のナットにスパナをかけて力を入れると、無事に緩んだ。

あとは元に戻し、スナップリングをかける。プリロードアジャスターナットを回してみると、何事も無かったかのように、アルミの板は上下してくれた。

そんなこんなで片方やるのに、買い物含めて丸1日かかったフロントフォークのオーバーホール。翌日に残ったもう1本を、1時間半で終わらせた。

材料代
部品代10656円
フォークオイル1800円

特殊工具
フロントフォークオーバーホールスタンド1000円(材料買えばこれぐらい)
ピストンロッドプーラー300円
フォークオイルシールドライバー2699円

フロントフォークのオーバーホールは、なにをやるにも、ゆっくりやること