低圧縮化 -W650のボアアップ-

上:純正ベースガスケット 下:完成した増しベースガスケット

パイロットスクリューを増設して、セッティング中の話の続き。

スロージェットを42番にしたところで、アクセルを戻しても回転の下がりが鈍くなった。燃調が薄すぎるようだ。ここでついにパイロットスクリューを調整してみた。

セット名ASSJJNC段数MJPS
CRPS53/442517561401 3/4

これは微調整を繰り返した結果。アクセルオフで、しっかり回転が下がるようになった。ここが、低開度域の薄い限界だろう。

1/4パーシャルの脈動は、出し続けても運転には支障がないが、ちょっと気になる程度。ノッキングを無くすのは、キャブセッティングではこれが限界な気がする・・・

やるだけのことは、やったので、最後の手段。圧縮比を下げることにする。方法は、ベースガスケットを厚くすることによって、燃焼室容積を増やすという手法。ヘッドガスケットを厚くする方が、作業の安易度(そんな言葉あるのか?)が半端ないが、ヘッドガスケットを複数枚にするのは、やめた方がいいらしいのであきらめた。

ベースガスケットの製作

現在、ベースガスケットは2枚入っている。これは、ビトーR&Dのボアアップキットの指示の通り。圧縮比は10.7らしい。これを1枚使いにすると、圧縮比は11になるとのこと。

手持ちのベースガスケットの厚みを測ってみると、0.25ミリだった。この0.25ミリの違いで、圧縮比が10.7から11へ変わる燃焼室容積を計算してみる。

基準燃焼室容積 (不明の数値): Pn

基準ストローク容積(ボア^2 * 3.14 / 4 * ストローク) : Ps

ベースガスケットの厚み : t

ベースガスケットの厚みで増加する分の燃焼室容積(ボア^2 * 3.14 / 4 * t ) : Pg 

として

圧縮比 = ( Pn + Pg + Ps ) / (Pn + Pg)

この計算をもとに、ベースガスケットの厚みが0.5の時、圧縮比が10.7となり、ベースガスケットの厚みが0.25の時、圧縮比が11になるPnを導き出した。

導き出された燃焼室容積を基に、ベースガスケットを何ミリにすれば圧縮比を希望の値にできるのか計算してみる。その前に目指す圧縮比をいくつにするかだ。ノーマルW650は8.6。ボアアップ前のBEETボアアップキットは9.0。9台が目標だろう。

計算してみると、1.5ミリで9.7となった。1ミリのアルミ板で増しガスケットを作り、本物2枚ではさめば1.5ミリだ。9.7では思い切りが悪い気もするが、10.7からの変更だから、そこそこ変わるのではないかという思い。

買ってきた1ミリのアルミ板とベースガスケット。

ケガキ針でけがいて、ジクソーでざっくり切る。

ざっくり切り出した 増しベースガスケット

ジグソーの刃だが、アルミ用は目詰まりしないように目が粗くできているが、引っかかった時の衝撃で1ミリのアルミ板なんてすぐに曲がってしますので、あえて鉄用をチョイス。

ジグソーの刃

丸穴はホルソーであけたが、ハンドドリルなので精度は期待できず小さめの穴にしておいた。その後ルーターでけがき線ぎりぎりまで追い込んだ後、ヤスリで仕上げるという完全なる家内制手工業。

完成したベースガスケット。

上:純正ベースガスケット 下:完成した増しベースガスケット

我ながら悪くない出来。

ベースガスケットの組み込み

会社からの帰りの国道。ダブたんで信号待ちをしている真横に、後ろからやってきた黒いバイクが停まった。右手をあげて、こちらに合図をしているのを視線の端に感じて、そちらに顔を向ける。

「これW650ですか?」

「そう ボアアップしてるから800だけど」

「いやあ めちゃめちゃかっこいいですね!」

「ありがとう!」

素直に嬉しい。見るとその彼もWだった。キックペダルがついているから、おそらく650だろう。

「何キロ走ってます?」

そう訊かれて一瞬考えたが、

「8万キロ」

と、W400からの距離を答えた。初めの部品はワイヤーハーネスとタンクぐらいしか残ってないけど、俺にとってのWは、同じこの1台だ。

「へ~ エンジン綺麗ですよね オーバーホールとかしてるんですか?」

「うん 何度も」

明日も腰上だけだけどばらすよ は、心の中で言った。

「じゃあ気をつけて!」

信号が青になる直前にそう言うと、青信号の点灯とともに勢いよく発進した。彼に続いてダブたんのクラッチをリリースしながら、「かっこいいだけじゃなくて速いぜ」と呟いた。どこで抜こうか考えていたが、彼は車の間を抜けて、あっという間に見えなくなってしまった。 

翌日 もうすっかり手馴れた作業で、Wのエンジンをばらす。ただ、今回のばらし前に、左右のシリンダーの間をエアガンで掃除しなかった。それは、オイルパイプの根元を、液体パッキンで割としっかり塞いでいたからだ。しかし、甘かった。

戻りオイルパイプの根元についた小砂利

クランクケースにも入ってしまった。クランクシャフトに乗っかっている小石を、ピンセットで慎重に取り除きはしたが、果たしてこぼれ落ちたやつはなかったのだろうか・・・

ピストンにカーボンは、それほど堆積していなかった。そりゃそうだろう。まだ2000キロほどしか走っていない。

ピストンふたつ

外したベースガスケットをきれいにして再使用する。これはすでに経験ありで、オイル漏れは起きなかった。使うのはキタコの液体パッキン、クランクケース用。自作ベースガスケットを、純正再使用ベースガスケットでサンドイッチする。

ヘッドガスケットも再使用。キタコの液体パッキン、シリンダーヘッド用だ。これももちろん実績あり。このガスケットは4000円近くするので、頻繁な分解では交換できない。

10時から始めて昼は映画を観たけど、夕方には終わった。キックで始動してみる。

3回のキックで、エンジンはぬるっと活動を始めた。柔らかい。実に柔らかい。

高圧縮時代は、ケッチンを喰らって足首を痛めてから、キックでの始動はしていなかった。早朝の始動は、キックが静かでいい。

低圧縮化の結果

圧縮比を9.7にしても、完全にノッキングを無くすことはできなかった。ただ、アクセルを開けるのが嫌になるほどではなく、本当に無理目に開けた時だけ。かすかに聴こえるこの音は、もしかしてベベルギアから鳴ってるのか? なんて思えたりもして。ピストンに異常も見られなかったから、あんまり神経質にならなくてもいいのかなとも。

圧縮比を下げたことによるパワーダウンも、それほど感じられないし、これは十分成功と言えるだろう。

思えば1年前のツーリングから始まった長い不調期間も、これでようやく終わり。今年は気持ちよく春ツーに行けそうだ。次回からは完全に頓挫していた、ZRX400のタンクの流用とシートカウル制作の話を再開できそうだ。

バラとW

CRにパイロットスクリューを増設する

パイロットスクリュー

CRキャブレターにアイドルポート&パイロットスクリューを増設する加工を依頼することに決めた。加工してくださるところは、福岡のプロヘッドモーターファクトリーさん。加工していただくには、キャブレターをボディ単体までばらすか、丸ごと送ってオーバーホール作業込みの2択になる。詳しくはプロヘッドモーターファクトリーさんのサイトをご確認ください。

PS仕様CRキャブモディファイ受付開始のお知らせ

キャブレターを分解する

CRキャブレターをボディ単体までばらすのに気をつけた方がいいなと思ったのが、フロートバルブシートを押さえるビスの取り外し。

ビスの頭は対辺7ミリの六角で、プラスドライバーのための溝もきられている。しかし、プラスドライバーで緩められるような固さではない。迂闊にやると、なめてしまうだろう。

それじゃあってボックスドライバーではずそうと思ったら、メイン系のタワーと干渉してボックスドライバーが入らない。7ミリのスパナは手持ちが無かったので、仕方なくボックスドライバーの1/3程度を ヤスリで削って薄くした。ああ フィット

これ以上はばらせん! というところまでばらしたキャブレター本体。福岡へと旅立った。

3週間ほど経ち年末も押し迫った頃に、加工が終わったとの連絡をいただいた。冬休みに作業できるのはありがたい。今年は忙しすぎる。

PS加工されたキャブが戻ってきた

到着したキャブレターボディ。シリアルナンバーが刻まれている。なんかピカピカになって帰ってくることを想像していたが、いつもと変わらぬちょっとくすんだCRだった。 当たり前だが

そして増設されたパイロットスクリュー。

アイドルポートが小さく開いている。ピントが奥にいっちゃってる。

パイロットスクリューの先端とスローポートをつなぐ穴は、外からあけられ、詮をされている。パイロットスクリューの増設を自分でもできるのではと検討したが、この穴の加工精度はとてもじゃないけど無理と諦めた。

完バラしたCRキャブレターを組み立てる。キャブレターをバラした時は、たいていその日に組み立てるから問題ないが、今回はバラしてからだいぶ経っているので、記憶があやしい。スロットルバルブシャフトまわりのパーツの順番が特にやばい。

組み立てあがったCRをダブたんに装着した。セッティングは以下の通り。

セット名ASSJJNC段数MJPS
CRPS1145517831201

ジェッティングはなにも変えずに一旦変化をみようかとも思ったが、なんの意味もないのでやめた。スロージェットは薄方向へ2番手下げて45。ジェットニードルは逆に濃い方向へ1番手上げて5178のクリップ3とした。今回からセッティング表に新たに加わった、パイロットスクリューは1回転戻しだ。

試運転に出る。パーシャルの脈動が無い! 低回転はまだ濃いか? 中開度はもっと濃くできそうな気がする。ノッキングは変わらず小さく出ている。

家に戻り、サイドスタンドをかけてエンジンを止める。よしよし、いい感じだぞと思っていると、なにやらガソリン臭い。あわててキャブレターの下に手を突っ込み確認してみると、2番がオーバーフローしていた。

うわっ まじか めんどくさ

今組み立ててつけたばかりのキャブレターをバラすのは、かなり気が引けた。ちょっとやりづらいが、このままやろう。

フロートチャンバーを外して、フロートを指で優しく押し上げ、燃料コックを開いてみる。  ガソリンが出てきた。

ただ、フロートバルブの周りからと言うより、バルブシートの周りから出てきているように見える。これはバルブシートのOリングじゃないか?

車載のまま、バルブシート押さえ金具のビスを緩める。バルブシートを外してOリングを確認してみるも異常は無い。液体パッキンでも塗りたくって収めようかとも思ったが、一旦そのまま戻してみる。

再度、フロートバルブを押さえながら燃料コックを開くと、ガソリンは出てこなかった。多分、Oリングが歪んでついていたのだろう。

セット名ASSJJNC段数MJPS
CRPS2145517751201

ずいぶん柔らかくなる。通常発進程度ならノッキングしないが、ちょっと開け気味に行くと出る。走行加速も出る。まだ濃くできそう。

セット名ASSJJNC段数MJPS
CRPS3145517671401

ちまちま探るのは意味が無いと、手持ちでできるいちばん濃い(中開度以上)セッティングにしてみた。ノッキング無し! 相当無理なカバ開けすると、かすかに感じる程度。これだこれだよー

と、当初は思ったものの、通勤に使ってみると、いろいろわかってきた。まず、パーシャルの脈動がほんの少し気になる程度感じられること。そのままでも走り続けられるので、それほど問題は無いけど。

あとノッキング。完全に無くなったわけではなかった。急な上り坂の低回転からのガバ開け(しなくていいじゃん)や、交差点の左折、最減速の小さい90度ターンのブレーキからの倒し込み同時にアクセルオープンみたいの時に出る。

スロージェット下げてみようとNapsに行ってみたら、欲しい42番が品切れだった。仕方なくウェビックで注文する。去年の8月に買ったときは500円だったのに、800円になっていた。なんでもかんでも値上がりだ・・・

セット名ASSJJNC段数MJPS
CRPS4142517561401

これはだめだった。アイドリングが安定せず、アクセルオフでも回転が下がりきらない時がある。薄すぎだろう。パーシャルの脈動(そもそも小さいものだが)は無くなったような気がする。来週横浜新道でチェックしてみよう。

メグロK1からのWファミリーの本がモーターマガジン社から発売されました! 


ノッキングとパーシャル異常 -W650のボアアップ-

CRキャブレター

点火時期でノッキング対策

810ccになったうちのダブたん。それ以前より燃調を濃くはしてみたが、低回転からのアクセルワイドオープンでノッキングがひどい。まずは、デフォルト設定だったウオタニの点火時期を調整してみる。

高圧縮になってノッキングが出る場合は、点火時期を遅らせると良いらしい。一気にマックス遅らせてみる。ウオタニ的には「5」という設定だ。点火時期はクランクシャフトの回転角で10度遅らせる。高圧縮にチューニングされたエンジン向けとなっている。走らせてみる。

おー だいぶ違う でも消しきれていない。ここから、キャブセッティングで対応していく。1/4開度でのノッキングなので、スロージェットを濃い方向に換えていこう。

ジェッティングでのノッキング対策

セット名ASSJJNC段数MJ
ボアアップ後16251783135
変更116551783135

ノッキングはだいぶ良くなった。アクセルを開ける気がする。ただそうなると更に開けたくなるので、ノッキングが出る。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更216551772135

少しだけよくなった気がする。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更316551762135

微妙にさらに良くなったが、排気がガソリン臭くなった。信号待ちで、後ろに停まったやつがくしゃみしている。ちょっと濃いか・・・

蛇足かもしれないが、ジェットニードルを一番手細くすると、テーパーの始まりがクリップ1段分早いので、クリップ段数的にも濃くなる。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更416551774135

ガス臭いのでジェットニードルは1番手戻し、「Mノズル ノッキング」で検索したまめしばさんのブログにあった、クリップ段数での調整を参考にクリップ段数を変える。 劇的にいい! 開ける気がしてきた。ただ、1/4パーシャルで妙な脈動がある。無視してそのまま走ると、かぶった感じになってくる。

クリップ段数を下げて、中開度を濃くしたことによってノッキングが改善(まだ少し気になるけど)したということは、1/4開度でのノッキングと思っていたが、1/2開度だったということのようだ。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更516551775135

さらに良くなった。ラフのアクセルオープンでもノッキングしない。ただ、パーシャル(開度はやはり1/4程度)がおかしい。高速コーナーをパーシャルで抜けようとして、転けそうになった。言い過ぎだけど。

検索すると、CRは低開度のパーシャルでかぶるらしい。レース用キャブレターだから、そんなのは眼中ないとか。 いやいや、サーキットだって、パーシャル状態あるでしょ? スペンサーじゃないんだから(古)

セット名ASSJJNC段数MJ
変更616051776135

パーシャルの異常は和らぐ。とは言え、気持ちよく走れない。パーシャル状態が3秒続くと、ボベッ ボベッ と言い出す。開ければ回転は上がっていく。

通勤時、パーシャルが長く続いてしまう横浜新道では、開けて閉じてを繰り返す。ツーリングなんて絶対無理。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更716051787135

さらなるパーシャル異常を解決しようと、JNを太めた。クリップ段数を下げて、テーパーの開始位置はほとんど変わらない。ただ、これといった変化は無い。

ウオタニを導入したのに、やっていなかったプラグギャップの拡大をやってみた。変化は感じられなかった。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更815851787135

1/10ぐらいなら問題なし1/8~1/4パーシャルはぼべる。史上最悪な気もする。ただ、加速さえしてればノッキングもほぼ気にならず快適。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更915851807135

たいして変わった気はしない。810化後、初めて3/4開してみたが、ボッ ボッ ボッ ってなる。濃いか?

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1015851807120

↑を受けてMJをしぼる。1/4パーシャルの不安定はあるも、だいぶ走りやすくなった。MJは少なからず低開度にも影響があるということだろう。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1115551817120

1/4パーシャルの不安定は、ほぼ消えた。普通に走れる。まあちょっとノッキングはある。チリチリチリって感じ。これも、回転の上昇に合わせてアクセルを開けてあげれば発生しない。

そもそも強制開閉のキャブレターは、エンジンの状態に最適なアクセル開度をコントロールすることがライダーの使命であり魅力。言ってみれば醍醐味だと思う。

それはわかっているのだが、Mノズルの低回転からのガバ開けについてくる気持ちよさを知った今、このラフなコントロールは捨てられないのだ。CRに本来求めるべきではないのかもしれないと思いつつ、これをCRで実現したいと強く思う。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1215551807120

ノッキングつぶしにジェットニードルを1段濃いめにする。1/4パーシャルの不安定さが、すぐに顔を出した。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1315251807120

1/4パーシャルの不安定さは減ったが、変更11のセッティングの方が安定していた気がする。 ノッキングはチリチリしている。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1415251797120

1/4パーシャル不安定。 ノッキングは小さい。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1515051797120

1/4パーシャルはだいぶよく、ノッキングも小さいが、今までのベストではない。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1615051795120

変化無し

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1715051793120

1/4パーシャルは安定するも、ノッキングが出る。

さて、ここまでやってきたが、ノッキングを出さないようにするとパーシャルが安定せず、パーシャルを安定させるとノッキングは出るということから、抜け出すことはできなかった。どうしても、どちらか出るか、中途半端かだ。

やはりボアアップによる高圧縮比をなんとかしないとダメなんだろうか?

ノッキングやパーシャルでの異常をネットで検索していて、あるブログの記事を発見した。CRキャブレターに、パイロットスクリューを増設するというのだ。

プロヘッドモーターファクトリーさんのブログのパイロットスクリューの話

こちらのブログを読んでいただければわかるが、要約してみる。

CRキャブレターには、スロー系がスローポートしか存在しない。スロットルバルブ全閉時はスローポートの位置から、吸入負圧が不足するので、スロージェットを大きくせざるをえない。スロットルバルブが開くと、吸入負圧が大きくなり、スロージェットから多すぎる燃料が供給される。これが低開度での燃調を濃くしてしまう原因であり、パイロットスクリューを増設してアイドルポートをつくることで、それを是正できると。

よくよく読むとこの加工、故まめしばさんから引き継いでいるとある。本家のブログにも行ってみる。

まめしばさんのブログのパイロットスクリューの話

忘れていたが、確かに読んだことがある。これでパーシャル異常が解決できるのなら・・・

会社の二輪部員、S君に相談してみた。彼は以前、SRにCRを入れていたり、近々BMW R100RSにCRを導入しようとしている、生粋のCRマニアだ(FCRに浮気もしてたが)。

行動が速い彼は、すぐにそのショップに電話をして相談した。すると、シングル用のCRには、この加工はできない可能性が高いとのことだった。まだ現物がないので確かなことはわからないが、BMW R100RSは水平対向なのでキャブレターはシングル用となる。

そしてもうひとつ、今キャブレターを送ってくれれば、年内中に加工が終わるかもしれないとのことだった。

よし パイロットスクリュー増設加工に出そう

油温計を装着 -W650のボアアップ-

油温計モニターは、インシュロックで仮付け

オイルクーラーを取り付けるために、その前段にオイルプレッシャーバルブを設けておこうという作戦は失敗した。前の話はこちら。

それでもボアアップしたことによる危険な油温上昇の察知と、いつかつけたいオイルクーラーの効果を知るために、油温計はどうしてもつけておきたい。

油温計を探す

まずはどんな油温計にするか。アナログ好きの自分としては、デジタルではなく、針で数値を指し示すものがいい。探してみる。

出てくるのは、オイルフィラーキャップと交換するタイプ。Wの場合、オイルフィラーキャップはクラッチの上についているので、センサーが下に伸びていない。クラッチに跳ねあげられたオイルがかかることによって、油温を計測しているのだろう。まあ、それはいい。問題はメーターが小さすぎて読み取れないこと。危険を、すぐには察知できない。しっかり見ようとして視線を落とし続けたら、別の危険がやってくるし。

タコメーターの横につけられるアナログの油温計となると、T&Tかスタックの二択のようだ。大きさがちょうどいいのと価格の魅力から、T&Tの油温計にすることにした。


ただ、この油温計にはセンサーがセットされていなかった。さらに日本語の情報がない。英語の取扱説明書を見ると、「こういうセンサー用意してね」と書かれてはいたが、そういうセンサーが見つからなかった。手に入るセンサーは使えないのか? それを知るために、油温計のセンサーの作動原理を調べてみる。なるほど、温度によって抵抗が変わる金属の抵抗値で、温度を計測しているらしい。

ということは、求められているセンサーと抵抗値が違うセンサーだったとしても、抵抗を追加で、直列に入れたり並列に入れたりしてあげれば、正しく油温を指し示すようにできるに違いない。調整は難しいかもしれないが・・・

そこで思い立ったのが、一旦デジタルでもいいから、油温計を導入すること。というのは、非常に安価な油温計とセンサーのセットが、デジタルで存在していたのだ。あとは、これをどこに取り付けるかだ。

油温計センサー取付方法の模索

油温計やオイルクーラーを後付けする際に、よく使われている(ような)手法が、オイルフィルターとエンジンの間に、取り出しブロックをはさむ方法だ。しかしこの方法は、集合しているエキパイだとオイルフィルターの前方への張り出しを許してくれない。うちのだぶたんは、イージーライダースの集合管がついているので、これにあてはまる。

そこで検索して見つけた方法が、オイルプレッシャースイッチをはずして、アダプターをかます方法。これなら簡単に油温センサーを取り付けられる。アダプターは、ネジのサイズ、ピッチで複数用意されている。形状としては、長ナット(高ナット)の一端が雄ネジになっていて、ナットの腹に穴が開けられ、ネジが切られている。雄ネジが入口となり、雌ねじふたつが出口となる。W650の場合、オイルプレッシャースイッチのねじはPT1/8だ。

センサーを検索すると、デイトナからデジタルメーターとセットで、5000円以下のものを発見。センサーだけ買うつもりだったが、この安さならメーターもあった方が、のちの抵抗値調整も簡単だろうからと購入した。ネジはPT1/8だったので、アダプターも購入した。

油温計の取付

油温計とアダプターが届いたので観察する。

センサーの取付ネジからの先が長いので、アダプターの腹にあけられた穴だと、センサーの先端が反対側に当たって、締まりきらない。腹側に油圧スイッチを取り付ければいいか?

油圧スイッチを取り外す。オイルは抜いてあるので出ては来ない。幸い、油圧スイッチの先端は長くなかったので、アダプターの腹側に取り付けられる。

リフォームの時に使ったシールテープをネジ部に巻いて、アダプター、油圧スイッチ、油温センサーを取り付ける。油圧スイッチは進行方向に突き出すようにセットした。

ボアアップ後の初乗り

オイルを入れる。燃料コックを開く。CRにガソリンが貯まるのをしばし待つ。チョークレバーを引いてセルスイッチを押す。

キュルキュルキュルキュル

ブオン プスッ

810ccになったうちのダブたんは、あっさり目を覚ました。しかし、チョークレバーを戻した途端に止まった。もう一度チョークレバーを引いてセルスイッチを押してみる。

結果は同じ。チョークレバーを戻すとすぐに止まってしまう。何度やってもそれは変わらなかった。キャブセッティングを一切変えてないので、それが理由かもしれない。

セット名ASSJJNC段数MJ
ボアアップ前15851791120
ボアアップ後16251783135

試運転でチョークを引いてないとアイドリングしなかったことを受けて、濃いめのスタート。これが功を奏したか、エンジンは問題なく始動し、アイドリングもした。

油温計は36度を示している。まあ、気温だ(このときは夏)。暖機運転中に、徐々に数値が上がっていく。ボアアップして組んだエンジンの腰上を観察する。特に異常は見られない。油温センサーを取り付けたあたりを素手で撫で回してみたが、オイル漏れもなかった。よし出発だ。

810ccになったうちのダブたん。猛烈な変化は残念ながら感じられない。セッティングが出れば変わるのだろうか。それよりも、ノッキングがひどい。アクセルをゆっくり開ければ、なんともないが、エンジンの回転に対して少しでもアクセル開度が大きいと、チリチリ音を立てている。圧縮比が高まったから当然か。まずはデフォルトのままのウオタニで調整していこう。

油温計の方も少々問題があった。センサーが走行風をしっかり受ける場所にあるからだろう、走り出すと温度がぐんぐん下がるのだ。信号待ちで上昇し、正しい温度で安定する。ちなみに87度と表示されている。

ただ、オイルラインの脇道の袋小路に取り付けたセンサーが、正しい油温を感知しているのかは、かなり疑問だ。参考程度にしておこう。

今回取り付けた油温計はこれ


忙しくて全然更新できていませんでしたが、そろそろ暇になるので、これからはぽつりぽつりと更新していきます。2025/2/19

組み立ての開始 -W650のボアアップ-

ピストンの直径を測定する 78ミリ

Wを810にボアアップしようとしている話の続き。一番はじめの話はこちら。

シリンダーが届く

ボーリング作業を依頼してあったシリンダーが、ビトーR&Dから届いた。

シリンダーヘッドとの合わせ面は、面研されていて美しい。これから塗装していく訳だが、その前にピストンリングの合口隙間を調整していこう。

ピストンリングの合い口隙間を調整する

ボアアップキットの説明書にある通り、シリンダーのお尻からピストンを使ってピストンリングを所定の位置まで押し込み、シクネスゲージで合口隙間を測定する。

いくつかの隙間が小さかったピストンリングを、ヤスリを使って調整した。

同時に、ピストンピンのスナップリングの端部も、ヤスリで丸めておく。

鍛造ピストンをあらためて眺める。飾っておきたいぐらい美しい。

シリンダーとシリンダーヘッドを塗装する

これから、シリンダーとシリンダーヘッドを塗装する。色はシリンダーヘッドはガンメタリック、シリンダーはガンメタに少々シルバーを混ぜた、薄いガンメタとする。まあ、前回と同じなのだが、「クランクケースがシルバー→シリンダーが薄いガンメタ、シリンダーヘッドがガンメタ、カムカバーが薄いガンメタ」というグラデーションで塗り分けていく。

あるかわからないが次の塗装の機会のために、ガンメタとシルバーの混合比をメモに残しておく。シリンダーヘッドはガンメタ1/シルバー4の割合、シリンダーはガンメタ1/シルバー13という割合だ。

マスキングテープで塗装しない部分をマスクする。

塗料は、いつものように「おもしろ塗装工房」で購入したものだ。筆塗りとエアブラシのハイブリッドで塗装していく。

なんだか濃い・・・

薄いガンメタのつもりが、ガンメタリックそのものと、さして変わりがない。グラデーションよどこへ? 仕方が無いので、カムカバーはシルバーにしておいた。暑いし(作業は夏)臭いから屋上で塗ってみたら、吹いた塗料が綿菓子みたいになってたいへんだった。

組み立てる

いろいろと準備が整ったので、組み立てに入る。まずはベースガスケット。ビトーR&Dのボアアップキットには、ベースガスケットが2枚入っている。1枚だと圧縮比が11.0:1となり、2枚だと10.7:1になる。2枚でもだいぶ高圧縮だ。3枚いれたいところだ。ちなみに手持ちの(中古だが)ガスケットと比べてみると、まったく同じもののように見える。

2枚のベースガスケットをセットし、ピストンをコンロッドに取りつける。ピストンリングコンプレッサーは、前回と同じく釣り竿のケースから切り出したプラスチックの板。前回の失敗を踏まえて、シリンダー側をできる限りまっすぐに切り出した。ここが平らでないと、でっぱっている部分がシリンダーに飲み込まれてしまう。

シリンダーをトップチューブから垂らした紐でぶら下げ、キックペダルを押し下げピストンをシリンダーに入れていく。シリンダーは固定されているわけではないので、キックペダルでの操作は、ごく微小だ。

ピストンリングコンプレッサーは成功だった。今まで何度か経験したシリンダーへのピストンの挿入の中で、最もスムーズに作業ができた。Wは360度クランクなので、ピストンが同じ位置なので本当に入れづらいのだ。

排気量の変更の構造変更を申請するために、ピストンの直径とストロークの長さを写真に撮っておく。

続いてシリンダーヘッドをのせるわけだが、その前にベベルシャフトを立てて置く。そしてこの段階でベベルシャフトのサークリップを入れておくのが大事。

上の写真の左側が、車体にセットした時の下になる。サークリップをこちらから入れると、すんなり入るが、右側から入れるとスプリングの台座のふくらみを越えなければならないので、サークリップが変形する。(写真のサークリップは左に歪んだもの、右に正常なもので、置き方としては逆になってしまった。) こう置いてサークリップを入れろと言われれば、誰だって左側から入れるだろうが、後述のように作業すると、右側からしか入れられなくなる。いつもこれで悩んでいたのだが、このブログの読者さんが下から入れれば大丈夫だと教えてくれた。

ただ、シリンダーヘッドを外さない限りベベルシャフトは取り外せず、よってこの方法はできないので、シリンダーヘッドを外さない限り、ベベルシャフトのサークリップは外さない方がよいと思う。しかし、サービスマニュアルに沿って漫然と作業すると、いつの間にか外してしまうので注意が必要。

発熱対策

ボアアップしたことによってエンジンの発熱量があがり、オーバーヒートが懸念される。以前から取りつけたいと考えていたオイルクーラーをこの機会に装着しようといろいろ調べると、オイルフィルターの後ろにオイルライン取り出しユニットを入れる方法は、W650にはリスクがあることがわかった。

というのも、W650(もちろんW400もW800も)は、オイルリリーフバルブがオイルフィルターの後ろにあるらしいのだ。オイルリリーフバルブは、オイルラインに異常な圧力がかかった時に、バルブを開放し油圧を下げる役割をしている。仮に、オイルクーラーからの戻りのオイルラインが詰まったとすると、上昇する油圧は解放されず、オイルクーラーコアを破裂させる可能性があるとのことだ。

それを回避する方法がある。俺にとっての神ブログ=続…Z1000Jさんが公開している。

それをマネさせてもらおうと、例によって余っているW400のオイルパイプとリリーフバルブを使って加工を始めた。

リリーフバルブの位置は、前述のブログを参考にしている。それほど、みちみちな場所ではなさそうなので、たぶん大丈夫(笑) むしろ、リリーフバルブの位置を左右間違えないかが心配(よくやるタイプ) 十分にチェックを重ねたうえで、オイルパイプに穴をあける。それでもたまに逆にあけてしまったりする自分が恨めしい。

ピッチが違うが、ねじが立つ厚みがたいしてないので仮固定ぐらいは問題ないだろうからと、タップを立てておく。オイルラインの中でリリーフバルブの先端が抵抗にならないように、丸みをつけて落としておいた。

が、結局このオイルパイプ加工は失敗した。アーク溶接でこれを完成させる技術を持ち合わせていなかったのが原因。TIG溶接機を本気で買いたいと思わせた出来事であった。

シリンダーヘッドをリフレッシュする -W650のボアアップ-

カーボンを落とした左と落とす前の右

Wを810にボアアップしようとしている話の続き。一番はじめの話はこちら。

ベベルギアケースユニットのベアリングの交換を無事に終え、W650のカムシャフトとW400のシリンダーヘッドの相性を確認のために、プラスチゲージでカムシャフトのクリアランスを測定する。

3箇所あるジャーナルの内、1箇所がプラスチゲージのゲージを超える幅まで潰れていた。ここで測定範囲の違うプラスチゲージに変えるべきだったがまあこれぐらいは大丈夫だろうと判断した。これがとんでもない間違いだった。

燃焼室、ポートのカーボンを落としてきれいにする。下の写真の右側が清掃前、左側が清掃後だ。

外部は古い塗料と汚れを落として再塗装に備えた。バルブガイドのがたをノギスを使ってチェックする。

アストロプロダクツで買ったタコ棒とコンパウンドでバルブのすり合わせを行う。

光明丹を使って、バルブとシートの当たり幅を確認する。

ベベルギアの刃当たり調整も行った。

字で書くとあっという間だが、この作業にはかなりの時間がかかった。

最後に念のためカムシャフトの動きを確認しようと、カムシャフトキャップを本締めした時にそれはわかった。

カムシャフトが動かない・・・

ボルトを締める工程において、作業途中でかかる中間トルクも、前後のボルトで同一になるように注意して締め付けてあげると、なんとか動くぐらいになった。いやでもこれって

あっという間に焼き付くってよ!

何度も締め直して確認すると、最後に閉める一番外側のボルトを規定トルクで締め付けた瞬間にカムシャフトが動かなくなることが分かった。その場所はプラスチゲージで測定した時に、一番クリアランスが狭かった場所だ。

プラスチゲージでもう一度測定してみると、カムシャフトクリアランスの許容範囲より小さなクリアランスしかなかった。

ダメもとでサンドペーパーで削ってみる。しばらく頑張ってみたが変化はない。今までの作業は全くもって無駄になるのか? 結構たいへんだったぞ 何かいいものないかな? と、ホームセンターに行ってみる。

あった

こんなおあつらえ向きのものが存在するのかっていうほどのステンレス製のシム。

だが、買って帰ってきたものの、加工がめんどくさくて使うのをやめた。結局、家にあったバーベキュー用の厚めのアルミ箔をシリンダーヘッドとカムシャフトキャップの合わせ目に貼ることにした。

4点あるジャーナルのうち右側2点にだけ同じ厚さのシムを入れているのでカムシャフトキャップに微小な歪みが生じている気もするがそこは目をつぶる。やっていることはすでに破綻している。

プラスチゲージでクリアランスを確認すると目論見通りカムシャフトクリアランスの許容範囲内に入ってきた。

よしよしこれでカムシャフトは軽く回るはずと気を良くしながらカムシャフトキャップを組み立てた。カムシャフトを手で回してみる。

おっ 重い(^_^;)

そりゃそうだ。シムを入れた鉛直方向にクリアランスはできたが、水平方向は一切広がっていない。

ち〜ん

これでW400のシリンダーヘッドを使う作戦は終了した。

全ての作業をW650のシリンダーヘッドでやりなおした(;^_^A

W400のシリンダーヘッドでの作業でも思ったことだが、ちょっと解せないことがある。それはベベルギアの当たり調整をする際、0.15ミリのシムを一度外して調整し調整後そのシムを戻すというところだ。

いい当たり具合に調整したのに最後に0.15mm足す意味がわからない。まあ、愚か者には想像もつかない、立派な理由があるのだろう。

ところで、こんな作業の中、カムシャフトキャップを締め付ける6ミリのボルトが何本も伸びてだめになった。過去に経験したことなので驚きはしなかったが、手持ちのボルトでも足りなくなってしまった。仕方ない注文しよう。カワサキオンラインショップへいく。検索すると、なんと欠品中ではないか。

まったく カワサキは・・・

仕方がないのでミスミにいく。六角穴付きフランジボルトにした。大事な強度区分は10.9だ。これでシリンダー戻ってくるのを待つばかりだ。

ベベルギヤケースユニットのベアリング交換 -W650のボアアップ-

ばらばらになったベベルギヤケースユニット

ビトーR&Dのボアアップキットを組み込む話の続き。1回目はこちら

シリンダーをボーリング作業に出している間に、シリンダーヘッドの整備を行っている中で、ドライブベベルギヤのベアリングを交換しなければならなくなったのだが、その作業をするための特殊工具が廃盤になっていた。

ベアリングハウジング治具M45×1.0の自作

作るにあたって、このベアリングハウジング治具なるものが、なんのために必要なのかを考察する。この特殊工具の出番は二回ある。一回目は、ベアリングハウジングにねじ込まれたベベルギヤケースを緩める時。二回目は、ベベルギヤとベアリングをプレスして外す時だ。ただ、この二回目のプレスの際は、治具は無くても作業はできるので、ベベルギヤケースを緩めることさえできればいいと思う。

ベアリングハウジング治具には、内側にネジが切られている。そのネジがM45×P1.0なわけだが、そこにベアリングハウジングをねじ込む。ベアリングハウジング側面には、180度離れて二つの穴が開けられていて、その穴にベアリングハウジング治具からネジが差し込まれて、ベアリングハウジングをホールドする。ベベルギヤケースを緩める力は、この2本のボルトに全てかかるわけだ。特殊工具の外側は平面があり、万力で押さえられるようになっている。

手っ取り早くM45でピッチ1.0のナットを探したが、さすがにそんなものはなかった。そこで考えたのが、Lアングルを2個組み合わせて、四角い筒を作るということ。四角い筒なら、万力で押さえられるし、工作も簡単だ。

大事なのは、ベアリングハウジングをホールドする2本のボルト。ベベルギヤケースの締め付けトルクが98N・mと、かなり大きい。手持ちの強度区分の高そうなM6のボルトを使うことにしよう。

ベアリングハウジングの径より小さいLアングルを使用して、そのふたつをつなぐように更に小さいLアングルを溶接した。

位置を慎重に合わせて、ボルト用の穴をあけてタップをたてる。基本的にはこれで完成。

自作ベアリングハウジング治具の使用

完成したベアリングハウジング治具を使用して、ベベルギヤケースを緩めるわけだがこのトルクに耐えられるような万力が無い。今までも、しっかりした万力は欲しかったのだが、なんとかごまかして作業してきた。

検索してみると、想像していたより安い金額だった。早く買えばよかった。ネットでの注文も考えたが、アストロプロダクツに行ってみた。ついでにタコ棒とコンパウンドも購入した。

万力も揃ったので作業開始。ベアリングハウジングのネジの保護のためにビニルテープを巻き、治具の中に収め、回転防止のボルトをねじ込んでいく。ベアリングハウジングの穴に、2本のボルトが同じぐらいの長さが差し込まれているか確認して、万力にセットする。

メガネレンチをかけて、力を込める。それなりに力は必要だったが、あっけなく緩んだ。そのままベベルギヤケースを取り去る。すると現れるのが、ベベルギヤ取り付けナットだ。

ベベルギヤ取り付けナット用ソケットの自作

このナットは90度刻みで4点の切り欠きがあり、そこに爪をかけて締めたり緩めたりする。ナット自身は奥まった場所にあるので、ソケット状の工具でしかアプローチできない。

これはもう、それらしい大きさのソケットを加工するしかない。問題は、これまた59N・mと、そこそこ大きなトルクで締め付けられているので、自作したソケットの4つの爪が消し飛ばないかが心配なところだ。

ナットの切り欠きの直径を測り、それに近い内径のソケットを選び出した。まず、このソケットのナットがかかる部分をベビーサンダーで切り落とす。この時、0.5ミリほど、ナットがかかるギザギザを残しておいた。このギザギザを頼りに、しかし基本目検討で4つの爪をけがく。

けがいた線が残るように、不要な部分をベビーサンダーで切り落としていく。爪はどんどん小さくなっていき、トルクに耐えられるのか不安になってくる。とにかく削り過ぎないようにだけ注意した。

4つの爪は、だいぶそれらしい大きさになったはずだった。ただ構造上、1箇所だけはめて大きさを確認することができない。はまる時は3箇所は同時だろう。それまでは、どこが合っていないかがわからない。

それでも、2箇所だけ半がけみたいのを順繰りやって、その時の感触で削るべき場所を判断して削っていった。そしてその瞬間が訪れた。4箇所いっぺんにはまったのだ。その後、微調整をして、ソケットは完成した。

自作ベベルギヤ取り付けナット用ソケットの使用

完成したソケットでナットを緩めるには、ベベルギヤを押さえなければならない。それには、ベベルギヤホルダーという特殊工具が必要になる。これは、手持ちのべベルシャフトを切って、万力ではさめるように平面を作った。

自作ベベルギヤホルダーを万力ではさみ、それにナットが上になるようにベベルギヤをはめる。そのロックナットに自作ベベルギヤ取り付けナット用ソケットをはめる。「爪よ飛ぶな」祈りながら力を込めた。

クッ という感触でロックナットが緩んだ。(ニヤリ)

ベアリングのリムーブとセット

ベベルギヤとベアリングの取り外しにはいつものように、油圧ベンダーのポンプを使ってやった。

ばらばらになったベベルギヤケースユニット。

ベアリングを圧入し、ベベルギヤを圧入する際は、その向きに注意。ベベルギヤをはずす時はベアリングにかかってはいけない力がかかってしまうので、間違えたら最後。こういう時に、本気で逆に入れてしまうのが俺。自分ダブルチェックで方向を確認してから圧入した。

ベベルギヤ取り付けナットを締め付ける。

ねじロックを塗布して、ベベルギヤケースを締め付けて完成。

ベベルギヤケースユニットを立てて置いて、ベベルギヤを指で回すと抵抗なく回った。

※本サイトのタイトルでは、「ベベルギア」だが、今回の記事では、カワサキが使っている「ベベルギヤ」を尊重しております。

ボーリング作業依頼とシリンダーヘッド -W650のボアアップ-

美しいCP CARRILOのピストン 

5回続いたエンジントラブルの話から、W650ボアアップの話が始まります。今回が1回目。

ボーリング作業依頼

アップガレージで見つけたビトーR&DのW650ボアアップキット。CP CARRILOの鍛造ピストンが、まるで宝石のように美しい。

シリンダーライナーを交換するボアアップになるのだが、この作業をどこかでやってもらう必要がある。ちなみに今までにこのような作業を依頼した経験は無い。ネットで検索して、2~3の候補を見つけた。

ところが、キット付属の説明書に、「信頼できる内燃機関専門工場または当社までご依頼ください」とあったのだ。どう考えても、ビトーR&Dさんにやってもらうのが間違いない。ということで問い合わせフォームから連絡してみた。

数日後回答をいただく。作業についての疑問点を営業さんに丁寧に対応いただき、作業を依頼することになった。ボアアップキットは日本の各地を巡ったあと、親元に帰るわけだ。

ここで、ボアアップしてもらうシリンダーだが、W400のものにすることにした。本ブログの熱烈読者ならご存知の通り、我が家にはW400のエンジンがバラバラながら1機ある。そしてW400とW650のボアは等しく、72ミリだ。今のシリンダーはBEETのボアアップキットが組まれているので、これを温存しておくという訳だ。ピストンが無いから意味はないのだが。

W400シリンダーのフレッシュアップ

W400のシリンダーを観察する。黒い塗装がはがれかかっており、腐食もしている。両気筒の間の通路に、ゴミも付着している。こんな汚いシリンダーを送ることはできないので、きれいにしなければならない。

ひどい付着はスパチュラでこそぎ落とす。腐食はワイヤーブラシタイプの先端パーツを使い、ルーターで削り落した。今回はじめて、ブラシが軸と平行に先端に出ている竹ぼうきみたいな形のものを使ったのだが、フィンの間を削るにはもってこいのものだった。

きれいになったシリンダーと、ボアアップキットのピストン、シリンダーライナー、Oリングを箱に詰めて、ビトーR&Dに送った。作業は3週間ほどかかるとのことだ。

ベベルギアの破損

シリンダーの加工の間に、シリンダーヘッドのフレッシュアップをすることにした。バルブをはずし、燃焼室内のカーボンを落とす。エアジェットを嚙みこんでできた傷や凹みを、ルーターで削りすぎないように平らにする。

続いて少々気になっていたベベルギアを観察する。ドライブ側のベベルギアの歯に、1点欠けているような所があったのだ。老眼鏡に、拡大鏡を装着して見てみる。やはりそこは欠けていた。それどころか、ギア全体がガタガタになっているではないか。

これは完全にやばいやつだ。

試しにカムシャフトを仮組みして手で回してみる。カムシャフト1回転ごとでも、ベベルシャフト1回転ごとでもない、ある周期でゴリゴリッという音がする。これはエアジェットとは関係ない。前回の組立の際の、ベベルギアの当たり調整ミスだろう。焼けたように黒かったのも、これが理由なんだろう。せっかくW810になるのに、このベベルギアに目をつむるわけにはいかない。

そんな時はやはりW400の部品だ。ロフトから段ボールに入ったシリンダーヘッドをおろして、中身を確認する。

ベベルギアは、傷も無く、焼けたりもしていない。そこで思いつく。このシリンダーヘッドごと使えばいいんじゃないの?

ということで、このシリンダーヘッドの現状を確認しよう。

W400のシリンダーヘッドまわりの確認

まずはカムシャフト。W400だったころに、W800のカムシャフトに交換するという流用チューンを読んだことがあった。W800の方がハイカムになっているとのことだ。じゃあW650のカムシャフトとは違うのかということで、カム山の高さを確認してみた。

上がW650で、下がW400。W650は36.7ミリ、W400は35.2ミリと、W650の方が1.5ミリ高かった。ということは、カムシャフトはW650を使うことにしよう。次にドライブベベルギアを確認してみる。シリンダーヘッドに装着された状態で指で回してみると、ちょっと重い感じがする。これはエンジンをばらすときに、シリンダーヘッドボルトが噛んでしまい、サンダーで頭を落としたということがあったのだが、その時の切削粉が流れ込んでいるからだろう。ということでパーツクリーナーでじゃぶじゃぶ洗浄してみる。

変化はない。ドライブベベルギヤケースユニットをシリンダーヘッドから外してみた。

W650のドライブベベルギアケースユニットも外して比較してみる。明らかにW400のものは重い。どうしたものか? エンジンオイルを注入して、電気ドリルでぐるぐる回してみたが、変わることはなかった。これは使えない。ベアリングを交換する必要がある。

サービスマニュアルで調べると、4つの特殊工具が必要だった。

  • ベアリングハウジングからギアケースを押さえる【ベアリングハウジング治具M45×1.0】
  • ベベルギア取付ナット用【ソケットレンチ】
  • ベベルギアを押さえる【ベベルギヤホルダ】
  • ベベルギアを回転させる【ベベルギヤドライブビット】

これらを買いそろえると、なんと4万円近くするではないか・・・

数日考える

考えた結果、重いベベルギアも、ガタガタのベベルギアも使えないので、特殊工具を買うことにした。ただし、ベベルギヤホルダとベベルギヤドライブビットは、手持ちのベベルシャフトをぶった切って作ることにしたので、予算は半分の2万円で済む。早速買おう!

勢い込んで注文しようとしたが、なんと廃番になっていた・・・

おいおいカワサキ W800は現行車種だろ

どうなる?

ピストンを探す -エンジンから異音-

宝石のような鍛造ピストン

キャブレターの油面を確認しようと思ったらエアジェットを燃焼室に吸い込んでしまったことに気づき、ついにエンジンを開けてみると、1番のピストンに大きなガタを確認した話の続き。エンジントラブルからの異音の話の始めから読みたいかたはこちら。

ピストンの摩耗

1番のピストンにガタが見つかったので、泣く泣くシリンダーを外す。前にも話したが、Wはシリンダー間に空気の通路があり、そこにオイルの行き還りのパイプがある。パイプとシリンダーには1ミリぐらいの隙間があり、そこに前輪が巻き上げたゴミが溜まる。オイルのパイプを抜くと、そのゴミがクランクケースに入ってしまうのだ。

幸い、根元に液体ガスケットを盛っておいたおかげで、隙間にゴミは入っていなかったようだ。「雨の日は走らない」を徹底しているのが功を奏しているのだろう。

シリンダーとピストンを外し、部屋に持ち込む。ピストンの外径を計測すると、1番と2番のスカート部で0.2ミリ違った。ガタがあまりなかった2番のピストンを、1番のシリンダーに入れてみたがガタは感じられなかった。結論はこうだ。

エアジェットを吸い込んで、それが例えば排気側のスキッシュエリアに入った時、ピストンの前方は下に押され、その反動で吸気側のスカートがシリンダーに押さえつけられる。エアジェットが燃焼室内にいられたのは数分のことだと思うが、そんな短い間でもピストンを0.1ミリ削ったわけだ。

今思えば、あの金属音を聞いた時に、すぐにエンジンを止めるべきだった。今、後悔しても、あのピストンはもう戻ってこない。

代わりのピストンを探す

ピストンの摩耗がカンカン音=スラップ音とわかった今、その音を消すには、ピストンを交換するしかない。我がWは、BEETのボアアップキットを組んである。というか組んであるエンジンを買った。だから、そのボアアップキットのピストンを手に入れなければならない。検索してみたが、もはやそんなものはなかった。

では、どうすべきか。ここで浮かび上がってくるのが、以前からやりたいと思っていた、エンジンをアシストスリッパークラッチになった2世代目のW800のものに換装することだ。クラッチが軽くなるのは、おじいちゃんの夢だ。しかし、その夢はすぐに砕ける。ヤフオクに出品されていない。今までもちょくちょく探しているが、W800のエンジンは、あまり出てこない。

やっぱり純正部品じゃないと、こういう時困るよなぁ と感じて思いついたのが、W800のシリンダーとピストンを買うことだ。純正部品だから、その後のトラブルにも対応しやすい。そう思ってカワサキのホームページにいく。

なんと欠品中ではないか。ピストンすら無い。現行車種なのに・・・ 純正部品だからって、全然安心できないじゃん!

W800には、できないらしい。仕方ない、他のW650ボアアップキットを探す。しかし無い。いや、ひとつだけある。ビトーR&Dのものだ。ただこれは高い。ウオタニを導入する前なら良かったが、すでにかなり出費しているので厳しい。

W800のボアアップキットならあるのではと探してみた。この場合、ノーマルスリーブをボーリングする構成なので、別途スリーブを手配する必要があるのが難点だ。しかし、そんな心配は無用だった。販売終了ばかりなのだ。現行車種なのにだ!

どうしよう・・・

あっ W400のシリンダーとピストンあるじゃん

ご存知の通り、W400はW650のストロークダウンモデル。つまりシリンダーとピストンは同じ。(品番違うけど、基本は同じはず) そして我がWは元々400だったので、分解された400のエンジンが1機あるのだ。それを使えば、スラップ音から解放される!

しかしなぁ 675ccになっちゃうよなぁ・・・

とりあえず探してみる。シリンダーはあっさり見つかった。排気量の表示はどうなってるんだっけ? と思って見てみると、なんとつるっとのっぺらぼうだった。なるほど。シリンダー内壁を観察すると、ピストンの下死点の痕が、シリンダーライナーの最下端よりだいぶ上にある。かなりのショートストロークだということがわかる。

さてピストンはどこにしまったっけ? 

いくら探してもみつからない。これではシリンダーがあっても意味が無い。持ってたはずのものを買うのは悔しいが、念の為カワサキ純正部品のサイトを見てみる。

欠品中

まじか(´・ω・`) もうだめだ

スラップ音から逃れる方法は、もはや一択。 ビトーR&DのW650ボアアップキットのみだ。

あらためて、ビトーR&Dのホームページに行ってみると、キットの部品が単品で販売されていた。これだよ、これ! こうあるべきでしょ

ビトーのボアアップキットの入手

覚悟を決めて、148500円のビトーR&Dのボアアップキットを買うことにした。実際に購入する前に、もう一度巷の評価を確認しようと、ネットで検索する。まったくもって覚悟ができていない。しかしこの潔の悪さが、すごい効果をもたらした。

検索結果に、アップガレージのページがあった。クリックすると、なんとそこには新古のビトーのボアアップキットが、ほぼ半値で販売されていたのだ。まじかよ!

ためらうことなく購入。2日後には宝石のようなピストンが我が家にやってきたのである。

原因の判明 -エンジンから異音-

CRキャブレター

3000回転付近でするエンジンからの異音と1番シリンダーのみ湿っぽいのを、点火系のトラブルと推測し、ウオタニを装着するも問題は解決しなかった。このエンジントラブルの話を始めから読みたい方はこちら。

点火系が問題では無いとすると、エンジン内部に何らかの問題があるというのか? やはりもうここでエンジンをバラしてみないとならないところまで来た気もする。そう思いながらも、左右のシリンダーの湿り気が違うことに、なにか理由を見いだせないかとネットを検索する。

そこでたどり着いたのが油面。油面の高さに左右差があると、燃調にも差が出るというのだ。えっ? という印象。油面なんてある程度の範囲に収まっていればいいんじゃないの?

どうやら違うらしい。油面が高ければ吸い出されやすく、逆は吸い出されにくいのだそうだ。まじか・・・知らんかった。

キャブレターを分解する

油面を確認するためにキャブレターを取り外す。サイレンサー型エアクリーナーなので、取り外しは意気込まなくてもできる。完成時に内径が小さすぎて、キャブレターにもサイレンサーにも、はめづらかった自作ダクトは、伸びて丁度よいサイズになっている。これはこれで問題かもしれないが、今後の経過観察対象としよう。サイレンサー型エアクリーナーの製作話の1話めはこちら。

難なくキャブレターを取り外し自分の部屋に持ち込んだ。CRキャブレターの油面測定方法は下記の通り。

フロートチャンバーケースをはずす

エンジン側を下にした状態から、フロートチャンバー側を持ち上げていく

フロートチャンバーケースの合わせ面が15度~30度の時に、フロートチャンバーケースの合わせ面とフロートの底の高低差を計測する。基準は14±1ミリ。測定する場所はメインノズルの真横

これは一人でやるのは無理そうなので、キャブレタースタンドを2×4の端材で作った。

CRキャブレターの油面調整のため、キャブレターホルダーを製作

スタンドに載せ、CRを何度も回転させてみるのだが、フロートのベロがフロートバルブのピンに当たった時を見定めるのが難しい。老眼もかなり影響しているが、見づらいのも間違いない。

ところが、よくよく観察していると、ピンとベロが接触したあと更に傾けても、測定している部分の距離は、すぐには変わらないことがわかった。先入観としては、徐々に縮まっていくと思っていたが、そうでは無いらしい。

老眼鏡をかけて、食い入るようにキャブレターを覗き込んでいて、あることに気がついた。右のキャブレターにある部品が、左には無いのである。

吸入側の下部にある真鍮製の六角形の部品。エアジェットが左のキャブレターには無い。

( ̄▽ ̄;)

これか

エアジェットはパーツリスト上の25番

これが緩んで吸い込まれたんだ

そしてプラグの電極を潰したんだ

エンジンに異常を感じ路肩に寄せた時に聴こえた金属音は、エアジェットが燃焼室内で暴れていた音だったんだ

熱かったろうに・・・

なんとか下道に降りた時には金属音がしなくなっていたのは、溶けて消えてったんだね

サヨウナラ

これはもう間違いなくエンジンを開けなければならない

ちなみに油面高さは左右ともに適正値の14ミリだった。

CRキャブレター

エンジン分解

エンジンを分解するに当たって、音の原因を推察してみた。

吸い込んだエアジェットがバルブが噛んで、バルブステムがちょっと曲がっている。

エアジェットを潰した影響でコンロッドのスモールエンドがなにやらなってる

できることならシリンダーヘッドまでで、せめて腰上で解決して欲しい。

エアガンでシリンダーの中央の通路のゴミを吹き飛ばす。ここにゴミが溜まっていると、シリンダーを外した時にゴミが全てクランクケースに落ちていくからだ。一応、中央のボルト4本とオイルの行き還りパイプには、隙間を液体ガスケットで塞いではいる。ただ、完璧とは言い難い。

シリンダーヘッドカバーを外した。目視では特に何も異常な点は見当たらない。上死点に合わせて、タペットクリアランスを測定する。1番の排気外側だけが、規定より狭かった。なにか関係するのだろうか? ベベルシャフト側のベベルギアがちょっと黒く焼けたように見える。気のせいだろうか?(これは後々、新しい問題となってくるが今は気づいていない)

カムシャフトカバーを外す。カムシャフトにも特に問題は無さそうだ。

以前 もう30年ぐらい前の話になるが、当時XLR250に乗っていた。高速で八王子から都心まで通っていたのだが、若いので結構ぶん回していた。ある日突然、エンジンがカンカン鳴るようになった。その時は、3000回転とかだけではなく、ずっと鳴っていた。すぐになんとかすればいいものを、走るものだから、そのままにしておいた。

数日後、走行中にエンジンが止まった。夏のすごく暑い日の午後で、家まで押して歩くのが大変だった。後日シリンダーヘッドカバーを外して驚いた。カムチェーンが無いのだ。そしてカムの山が異常な削れ方をしていた。おそらくだが、回し過ぎてカムチェーンがギア飛びし、バルブタイミングが狂ってバルブとピストンが接触するようになった。(これがカンカン段階)

バルブがピストンに当たるから、その力はタペットを押しカムを削ったのだろう。直すのにフルオーバーホールが必要だった。

その時のことがあったから、異音には割と神経質だったのだが、今回は鳴らない時は鳴らないというところが、ここまでエンジンを開くに至らなかった原因だろう。

べベルシャフトの連結を解放し、シリンダーヘッドを外す。上死点で止まっているふたつのピストン。1番は傷だらけだ・・・ 

エアジェットを何度叩いたのだろう。シリンダーヘッドをひっくり返してみる。ああ・・・ なんか深い傷が・・・その傷には、1ミリぐらいの真鍮の粒がくい込んでいた。

ふと思いついて、ピストンの前後を交互に押して、ガタを確認してみた。2番は小さな動きだ。対して1番。かなりガタがある。カタッ カタッ とはっきりガタを感じる。

これか スラップ音だったんだ