原因の判明 -エンジンから異音-

CRキャブレター

3000回転付近でするエンジンからの異音と1番シリンダーのみ湿っぽいのを、点火系のトラブルと推測し、ウオタニを装着するも問題は解決しなかった。このエンジントラブルの話を始めから読みたい方はこちら。

点火系が問題では無いとすると、エンジン内部に何らかの問題があるというのか? やはりもうここでエンジンをバラしてみないとならないところまで来た気もする。そう思いながらも、左右のシリンダーの湿り気が違うことに、なにか理由を見いだせないかとネットを検索する。

そこでたどり着いたのが油面。油面の高さに左右差があると、燃調にも差が出るというのだ。えっ? という印象。油面なんてある程度の範囲に収まっていればいいんじゃないの?

どうやら違うらしい。油面が高ければ吸い出されやすく、逆は吸い出されにくいのだそうだ。まじか・・・知らんかった。

キャブレターを分解する

油面を確認するためにキャブレターを取り外す。サイレンサー型エアクリーナーなので、取り外しは意気込まなくてもできる。完成時に内径が小さすぎて、キャブレターにもサイレンサーにも、はめづらかった自作ダクトは、伸びて丁度よいサイズになっている。これはこれで問題かもしれないが、今後の経過観察対象としよう。サイレンサー型エアクリーナーの製作話の1話めはこちら。

難なくキャブレターを取り外し自分の部屋に持ち込んだ。CRキャブレターの油面測定方法は下記の通り。

フロートチャンバーケースをはずす

エンジン側を下にした状態から、フロートチャンバー側を持ち上げていく

フロートチャンバーケースの合わせ面が15度~30度の時に、フロートチャンバーケースの合わせ面とフロートの底の高低差を計測する。基準は14±1ミリ。測定する場所はメインノズルの真横

これは一人でやるのは無理そうなので、キャブレタースタンドを2×4の端材で作った。

CRキャブレターの油面調整のため、キャブレターホルダーを製作

スタンドに載せ、CRを何度も回転させてみるのだが、フロートのベロがフロートバルブのピンに当たった時を見定めるのが難しい。老眼もかなり影響しているが、見づらいのも間違いない。

ところが、よくよく観察していると、ピンとベロが接触したあと更に傾けても、測定している部分の距離は、すぐには変わらないことがわかった。先入観としては、徐々に縮まっていくと思っていたが、そうでは無いらしい。

老眼鏡をかけて、食い入るようにキャブレターを覗き込んでいて、あることに気がついた。右のキャブレターにある部品が、左には無いのである。

吸入側の下部にある真鍮製の六角形の部品。エアジェットが左のキャブレターには無い。

( ̄▽ ̄;)

これか

エアジェットはパーツリスト上の25番

これが緩んで吸い込まれたんだ

そしてプラグの電極を潰したんだ

エンジンに異常を感じ路肩に寄せた時に聴こえた金属音は、エアジェットが燃焼室内で暴れていた音だったんだ

熱かったろうに・・・

なんとか下道に降りた時には金属音がしなくなっていたのは、溶けて消えてったんだね

サヨウナラ

これはもう間違いなくエンジンを開けなければならない

ちなみに油面高さは左右ともに適正値の14ミリだった。

CRキャブレター

エンジン分解

エンジンを分解するに当たって、音の原因を推察してみた。

吸い込んだエアジェットがバルブが噛んで、バルブステムがちょっと曲がっている。

エアジェットを潰した影響でコンロッドのスモールエンドがなにやらなってる

できることならシリンダーヘッドまでで、せめて腰上で解決して欲しい。

エアガンでシリンダーの中央の通路のゴミを吹き飛ばす。ここにゴミが溜まっていると、シリンダーを外した時にゴミが全てクランクケースに落ちていくからだ。一応、中央のボルト4本とオイルの行き還りパイプには、隙間を液体ガスケットで塞いではいる。ただ、完璧とは言い難い。

シリンダーヘッドカバーを外した。目視では特に何も異常な点は見当たらない。上死点に合わせて、タペットクリアランスを測定する。1番の排気外側だけが、規定より狭かった。なにか関係するのだろうか? ベベルシャフト側のベベルギアがちょっと黒く焼けたように見える。気のせいだろうか?(これは後々、新しい問題となってくるが今は気づいていない)

カムシャフトカバーを外す。カムシャフトにも特に問題は無さそうだ。

以前 もう30年ぐらい前の話になるが、当時XLR250に乗っていた。高速で八王子から都心まで通っていたのだが、若いので結構ぶん回していた。ある日突然、エンジンがカンカン鳴るようになった。その時は、3000回転とかだけではなく、ずっと鳴っていた。すぐになんとかすればいいものを、走るものだから、そのままにしておいた。

数日後、走行中にエンジンが止まった。夏のすごく暑い日の午後で、家まで押して歩くのが大変だった。後日シリンダーヘッドカバーを外して驚いた。カムチェーンが無いのだ。そしてカムの山が異常な削れ方をしていた。おそらくだが、回し過ぎてカムチェーンがギア飛びし、バルブタイミングが狂ってバルブとピストンが接触するようになった。(これがカンカン段階)

バルブがピストンに当たるから、その力はタペットを押しカムを削ったのだろう。直すのにフルオーバーホールが必要だった。

その時のことがあったから、異音には割と神経質だったのだが、今回は鳴らない時は鳴らないというところが、ここまでエンジンを開くに至らなかった原因だろう。

べベルシャフトの連結を解放し、シリンダーヘッドを外す。上死点で止まっているふたつのピストン。1番は傷だらけだ・・・ 

エアジェットを何度叩いたのだろう。シリンダーヘッドをひっくり返してみる。ああ・・・ なんか深い傷が・・・その傷には、1ミリぐらいの真鍮の粒がくい込んでいた。

ふと思いついて、ピストンの前後を交互に押して、ガタを確認してみた。2番は小さな動きだ。対して1番。かなりガタがある。カタッ カタッ とはっきりガタを感じる。

これか スラップ音だったんだ

ASウオタニの導入 -エンジンから異音-

ASウオタニのSP2コントロールユニット

ツーリングに向かう途中でエンジントラブル。その後3000回転での異音に悩まされている話の続き。1番始めから読みたい方はこちら。

ファイバースコープで燃焼室内を確認したところ、1番だけ湿っていた。これは点火系に間違いない。W650のイグナイターはもう廃番。となったらウオタニだ。

ということでウオタニが家に届いた。購入したのは、SPⅡフルパワーセット 税込6万円弱。なかなかの出費だが、イグニッションコイルの寿命も超えてるし、イグナイターはW400のだし、いい機会だろうということにしよう。覚悟を決めて購入。そして配達された。

ASウオタニ SP2フルパワーキット

幸いにも、W650専用が存在している。

ASウオタニのSP2コントロールユニット

ウオタニのイグニッションコイルを取り付け

プラグコードはセットに入っておらず、説明書によると、新品を用意することとなっていたが、今回は純正流用とした。まずは古いイグニッションコイルをはずす。ウオタニとの大きさの比較。

ASウオタニと純正のイグニッションコイル比較

プラグコードの根元のキャップナットっぽいやつを緩めると、プラグコードは抜ける。

コイルからプラグコードを抜く
コイルから抜いたプラグコード

こうして利用すれば、古いプラグコードの長さを有効に使える。抜き出したプラグコードを、ウオタニのイグニッションコイルにつないでも、元の状態をと同様の長さ感になるように印をつける。

プラグコードの長さを、純正時と同じになるように印をつける

プラグコードの被覆を18ミリ剥ぎ取るとあるので、つけた印から先端が18ミリ以上あるのを確認し、剥ぎ取り作業を開始する。印にカッターで垂直に刃を入れる。

印をつけた部分に、カッターの刃を入れる

カッターの刃を芯線まで届かせてはいけない。あっ 自分、電気工事士です。電線の皮を剥くのはプロです。全周ギリギリまで刃を入れたら、ペンチで被覆を甘噛みして引っ張れば被覆は剥ぎ取れる。

被覆剥ぎ取り完了

出てきた芯線を18ミリ残し切断する。

芯線を18mmにカット

端子を圧着する前に、ゴムブーツをプラグコードにかぶせておく。その際、シリコンスプレーを吹いて、滑りをよくしておいた。このような潤滑剤は、ゴムブーツの膨らんだ部分=イグニッションコイルにかぶさる部分には塗ってはいけないとなっているので注意。

ゴムブーツを挿入しておく

次に芯線を折り返し、端子を圧着するのだが、端子は周の1/8ぐらいが開放された筒状態の部分で被覆を押さえる。この開放した端部がギザギザになっていて、いかにも食い込みそうなのだが、このまま圧着してもそうはならなそうなので、ギザギザの先端を内側に向けておいた。

コネクターのギザ部分を内側に折って、被覆に食い込むようにする

折り返した芯線をギザギザの対面になるように端子にプラグコードを差し込み、プライヤーを使って圧着させた。簡単に抜けないか、端子を軽く引っ張って確認する。

コネクター圧着完了

端子を圧着し終えたら、イグニッションコイルに端子部を差し込み、ゴムブーツをイグニッションコイルのマニホールド部分に被せる。前述してある通り、この部分に潤滑剤は塗ってはいけないとなっているので注意。そして親指をなんだか痛めている俺には、この作業は結構きつい。

イグニッションコイルにプラグコードセット完了

プラグコードが接続できたら、あとは車体に取り付けるだけ。特に難しいことは無いが、製品名のステッカーが逆さまになってしまうのが、少々残念。

イグニッションコイルセット完了

コントロールユニットの取り付け

コントロールユニットのサイズは、純正イグナイターとほとんど同じだった。本来ならば、純正イグナイターを外して、そこにウオタニのコントロールユニットを取り付けたいところだが、ウオタニのコントロールユニットには取付穴などが用意されていないので、それなりの準備が必要だ。今回は、異音の解決が早急な目的なので、そんな時間は無い。シート下のETCカードリーダーの上に置くことにする。

ウオタニのコントロールユニットは、進角と最高回転数を調整できるようになっている。このボリューム調整は、コントロールユニットをZRX400のタンク流用のために新造した電装ボックスに納めてしまうと、簡単にはできない。仮に改造前の純正状態でも、純正イグナイターの位置に納めてしまうと、簡単にはできないだろう。そういう意味では、セッティングが決まるまでは、シート下がいちばんいいのかもしれない。

配線の接続は、純正ワイヤーハーネスのコネクターが直接刺さるのではなく、25センチ程の変換コード的なものを介す形となる。これを新造電装ボックス内で接続して、シート下の空間に一端を出し、ウオタニコントロールユニットに接続する。これでウオタニSP2フルパワーセットのインストールが完了した。

ウオタニの効果

今まで書いた作業を朝起きて始めて2時間ぐらい。これから試運転も兼ねて40キロ離れた会社まで行く。

朝の始動はキックと決めている。ステップを畳み、ブレーキペダルを後方に反転させる。キックペダルを展開し、チョークレバーを引いてイグニッションスイッチはオフのまま、キックペダルを1回踏み込む。

ぼふぉっ

これで初爆の種を燃焼室内に入れる。イグニッションスイッチをオンにしてクラッチレバーを握り、キックペダルを時計の7時まで踏み下ろす。そのまま10時まで戻したらクラッチレバーを離しキックペダルを踏み下ろす。

ぶろろろろん

始動は問題無しだ。

川沿いの道に出る。アクセルを開ける。今まで感じていた雑味が無い。燃焼がシルキーだ。音も明らかに小さい。

更に大きな道に出る。問題の3000回転は?

んーむ だめだぁ まだカンカン音がする(´・д・`)

ウオタニはとてもいいけど、このカンカン音で、点火系の問題では無いことがわかってしまった。

ついに、エンジンばらすしか無いのか?

異音と燃調の関係 -エンジンから異音-

MotoDXプラグ

ツーリングへ向かう高速でエンジンがおかしくなり、翌日ファイバースコープを使って燃焼室内を観察していたら、ピストンに挟まれてファイバースコープが抜けなくなった話の続き。始めの話はこちら

ファイバースコープの救出

ファイバースコープが潰れて、これ以上キックペダルが動かなくなった。まじでヤバい( ̄▽ ̄;)

待て こんな時は落ち着くんだ。慌てて動くと良くない方向にしか行かない。

この状況から抜け出すには、クランクを逆転するしかない。どうやったらクランクを逆転出来るか考えろ

そうだ ギヤを入れて、タイヤを逆転だ

ローに入れて、リヤタイヤを両手でつかみ逆転させた。ファイバースコープのコードを引っ張ってみるも、ビクともしない。

ローじゃダメだ

シフトペダルをガチャガチャさせて5速に入れた。タイヤを逆転させてみる。しかし、ファイバースコープはがっちりと動かない。

もう一度

タイヤを地面に叩きつけるように逆転させると、ファイバースコープのコードが動いた。引っ張りあげてみる。

ちぶれてるぢゃん(´;ω;`)

今朝手に入れたファイバースコープは、登板早々にひしゃげてしまった。レンズの保護板がもげかけている。エンジンの中に落とすとやばいのでむしり取った。

幸い画像には問題なかったので、観察を続ける。ピストンヘッドにさっきまでなかった丸い傷があった。ファイバースコープの先端によるものだろう。

結局わかったことは、カーボンは想像していたより、堆積していなかったことだけだった。

プラグの交換

新しいプラグを買いにナップスにやってきた。W650用はCR8Eだ。見つけた。安いな。ここでふと思いついた。なんかいいプラグ無いのか?

イリジウムとMotoDXという2種類があった。イリジウムは1度入れたことがあったので、MotoDXとやらにしてみるか。ただ、普通のプラグより2000円近く高い。しばし逡巡するも、ツーリングに行っていたらそれぐらい消費していたことを考えれば、まったく問題ないなとふたつ手に取りレジに向かった。

帰宅して箱から出てきたMotoDXプラグは、それほど変わった見た目ではなかった。イリジウムみたいに中心電極が細い。早速交換して試運転に出てみた。

エンジンは特になんの支障もなく始動した。アイドリングの音にも異常は感じられない。走り出した。

エンジンブレーキがかかるぐらいの2500回転ぐらいのアクセルオフの時に、カラカラと小さく聞こえる音が気になる。今までには無かった。ただ、それもエンジンが暖まってくると聞こえなくなった。

異音との闘いの始まり

Wで通勤してみることにした。プラグが湿っぽかったので、スロージェットだけ1番手下げた。セッテイングは下記の通り。

ASSJJNC段数MJ
15851784135

長く走るのはまだ不安が残るが、途中の横浜新道で高速のテストもできる。しかしそれは、横浜新道を待たずに現れた。

カンカンカンカン

3000回転ぐらいで、ものすごい打撃音がする。なんだこれは? とてもじゃないけど、この回転は維持できない。

横浜新道に入ると、そのカンカンな回転数がちょうどいい速度域となった。非常に煩わしい上に、それ以上回転が上がらない。これでは走れない! 走行車線に潜り込んで、だましだまし走った。

家の近くの川沿いの道で、カンカン音を維持させながら走り、帰宅してすぐにプラグチェックする。周りは黒く中心電極は白い。カンカン音は1/4開度の3000回転だ。そこが薄くなったか? スロージェットを60に戻してみた。

ASSJJNC段数MJ
16051784135

翌日も通勤セッティング。冷間時のエンジンブレーキの際のカタカタ音は無くなった。ただ、あまり変化は無いので、戸塚パーキングでジェットニードルのクリップを2段下げてみる。ちょっといいかなと思いつつ会社に着いた。

ASSJJNC段数MJ
16051786135

帰りの横浜新道下りの上り坂で、1/8~1/4のパーシャルでの脈動がひどく、かぶりそうになる。戸塚パーキングでジェットニードルのクリップを4段上げて、薄方向に振ってみた。

ASSJJNC段数MJ
16051782135

カンカン音がやんだ。

結局、燃調が濃かったという結末だった。

ところが、やんだと思ったが、まだかすかに音は聞こえていた。小さくなっただけだった。更に謎な音が増えた。フロントフォークに少し大きめなショックが伝わると、3000回転でなくてもカンカン音と同質の音が、カカカカカンと響くようになった。

ジェットニードルを1段太くして、更に薄方向にしてみた。

ASSJJNC段数MJ
16051792135

1/4パーシャルの不安定感が若干ながら薄らいだ。小さいカンカン音は変わらない。ちなみに51シリーズのジェットニードルは太さを細くすると、クリップ段数1段分も同時に薄方向になる構造になっている。さらにクリップ段数を変えてみた。

ASSJJNC段数MJ
16051791135

あまり変化は感じられない。プラグは中心はきつね色で周辺は黒い状態。スロージェットを一段薄くしてみた。

ASSJJNC段数MJ
15851791135

1/4パーシャルの不安定さは少し改善した 3000回転のカンカンはまだかすかにある。よーし こうなったら

ASSJJNC段数MJ
15551802120

禁断の全替えで薄方向へ動いた。低回転域からアクセルオープンのパワー感が無くなった。Mノズルで無くなったような感覚だった。これは間違いなく失敗だ。ファイバースコープで両シリンダー内を観察してみると、明らかに1番は湿っていた。これはもしかして点火系の問題なのでは?

今になって思えば単なる思いこみだが、この時は正解を発見した気分だった。イグニッションコイルかイグナイター。我がWは電装系はW400のものが多く残っている。いつかはイグナイターをW650にしたいと思っていた。意味があるかはわからないけど。

調べてみたが、もう廃番だった。そうなるとあれだ。ウオタニだ。

会社の二輪部員がBMWに入れて、いいと言っていた。最近インスタでDMすることがある、W乗りも入れていたので、劇的にいいのですかと訊いてみると、劇的までは言わないけどいいとのこと。よしウオタニ買おう。これでカンカンともオサラバよ。

次回はウオタニ導入の話