シリンダーとシリンダーヘッド -W650エンジンのレストア&モディファイ-

エンジンの腰下の部分が完成した。作業はエンジン上部へと移動していく。

シリンダーとピストン

ピストンヘッドには物凄い厚みのカーボンが溜まっていたので、これを除去する。

ピストンヘッドにこびりついたカーボン

カーボンを剥がしてみると、ピストンヘッドはツルツルだった。こんなんでもカーボンって溜まるんだね。

カーボンを取り去ったピストン

コンロッドにピストンを取り付けて、シリンダーを装着する。ただし、Wのピストンは左右同じ位置にある。1人だと非常にシリンダーに入れづらい。

クリアファイルを切って、ピストンリングコンプレッサーのようなものを作り、シリンダーをメインチューブから紐で吊るして作業する。

クリアファイルごとシリンダーに吸い込まれる。

だめだ、薄すぎた

単気筒なら  

多気筒でも、せめてピストンの位置が違えば

スマートに進まない作業は気持ちが悪い

シリンダーヘッド

シリンダーヘッドは燃焼室はもちろんのこと、ポートにも相当なカーボンが溜まっていたのでバルブ周りをすべてバラして掃除をした。

バルブスプリングコンプレッサーでバルブ周りを分解する

カーボンが堆積したシリンダーヘッド

シリンダーヘッドにもカーボンが堆積

カーボンを取り去ったシリンダーヘッド

カーボンを取り去ったシリンダーヘッド

そのシリンダーヘッドをシリンダーの上にかぶせる。シリンダーとシリンダーヘッドは共締めだ。

ボルトを締め終わったら、フライホイールの上死点マークをあわせてから、シリンダーヘッドの上に指定の回転位置にあわせてカムシャフトを載せる。その上からかぶせるようにカムシャフトキャップをセットする。このカムシャフトキャップというのは、ロッカーアームがじゃらじゃらくっついている、カムシャフトを固定する部品だ。

カムシャフトをセット

2種類の太さの何本ものボルトを仮締めしてから、太い方のボルトを規定のトルクで決められた順番で締めていく。太い方が締め終わったら、続いて細い方を締めにはいる。

ここで、なにやらおかしい1本が現れた。締めても締めてもトルクレンチがカチって言わない。めねじがダメになっていく感覚に似てる

( ̄▽ ̄;)

意味が無いとわかっていても、トルクレンチにかける力を瞬間的に強めて、矯正的にカチッといわせる。よし、これでOK(と、自分に言い聞かせる) 

バルブクリアランス調整

ここから、バルブクリアランス調整に入る。Wのバルブクリアランス調整は変わっていて(いや、これが普通なのか?)、ロッカーアームとバルブの間に挟んだ、シムで調整する。よくある(いや、こっちがマイノリティか?)ロッカーアームの先端のネジで調整するタイプではない。

このタイプのメリットは、ネジの緩みが起こり得ないという信頼性の高さだが、適した厚みのシムがなければ調整は一切できないデメリットがある。今回はW400分のシムもあるので多少安心だ。

このシムを取り替えるにはロッカーアームが邪魔になるのだが、Wは面白い方法で解決している。ロッカーアームが水平に移動するのだ。これによってカムシャフト周りを分解することなく、シムを交換してバルブクリアランスを調整できる。

1番シリンダー側からシクネスゲージでバルブクリアランスを測定し、それを一つ一つメモしていく。続いて2番シリンダー。ロッカーアームの下にシクネスゲージを差し入れ・・・

あれ? シクネスゲージが入らない

ロッカーアームを揺さぶってみても、カタっとも動かない。こんなミッチミチなバルブクリアランスってありか? 他のところのシムと替えてみよう。そう思ってロッカーアームをずらし始める。

むむ 動かない (そりゃそうだろ)

プラスチックハンマーで叩いてみよう (やめとけって)

少しずつ動いてるぞ (そろそろ気づけって)

カチン!

何だこの音は? 抑えられていたものが解き放たれて、伸びあがったところを金属の壁にぶつかったような音だ。

(抑えていたロッカーアームが外れてバルブスプリングが伸び、バルブがバルブシートに当たった音だよ)

うっわー そうか 1番シリンダーが圧縮上死点の時は、2番シリンダーは排気上死点だ。ロッカーアームがバルブを押していたんだ。

バルブを指で押してロッカーアームを元の位置に戻そうとする。

いやあ 無理だってわかってるさ ちょっとやってみただけだよ

カムシャフトキャップをばらさないとダメだな あのボルト せっかく締まったのに(いや締まってないって)

おろかな自分を呪いながら、カムシャフトキャップのボルトをゆるめはじめるのであった。

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