必要書類1 -ボアアップ公認 排気量変更改造車検-

W650のエンジン

あけましておめでとうございます。皆様の今年一年の無事故を祈念しております。今年最初の記事は、ボアアップに伴う改造車検の話です。

改造車検を受けるぞ

ビトーR&Dのボアアップキットを組んで810ccになったので、排気量変更の改造申請を行わなければならない。

「ならない」と書いたが、やらなくてもばれはしない。実際やっている人は少ないだろうし、やらなくても車検は通る。ただ仮にも、このブログを通してバイクの改造を公開している身としては、できうる限り遵法でありたいと思う。というか、遵法の道が歩めることを示して行きたいと思う。

そうは思っても気になることがあった。

それはフロントスプロケットの強度。リアブレーキのディスク化の時にボンネビルT120のホイールを装着し、チェーンラインを合わせるためにオフセットしたスプロケットを装着していた。このスプロケットの強度を証明できるのかが不安だったのだ。確かな記憶ではないので申し訳ないが、スプロケットのパッケージに「公道での使用はしないでください」みたいなこと書いてあった気がしている。公道での使用を禁じている製品の強度証明書なんて、発行してはくれないのではないかと思っている。そうなるとスプロケットの強度計算をしなくてはならないのだが、ただでさえ難しそうなのにオフセットしているので更に面倒な計算になりそうだ。

総排気量を変更した場合には、動力伝達装置の強度検討書を添付しなければならない。具体的に動力伝達装置とは前述のフロントスプロケットのほかに、チェーン、リアスプロケットの3つだ。その3つが、エンジンの力によって破壊されないことを証明する必要がある。

強度検討書

破壊されないかを計算で証明するのは、かなりやっかいそうだが、計算しなくてもよい方法がある。それは、その部品が改造車よりも高出力の車両の純正部品であることを示すか、その部品の製造者が、破壊しないことを証明している書類を示せればよい。我がWの動力伝達装置は、すべて社外品なので、製造者の証明書が必要ということになる。

フロントスプロケットは、サンスターの3F2という製品だ。ZEPHYR750用で、520コンバートの5ミリオフセットとなっている。今でも入手可能か調べてみると、ネットで売っているし、サンスターのHPでも製品紹介ページが存在した。もしかしたら強度証明書を発行してくれるかもしれない。HPの問い合わせフォームからお願いしてみた。

すると翌日には、製品適合車種証明書が添付されたメールを送っていただいた。そこには、ZEPHYR750とZEPHYR750RSに適合することと、「排気量1000ccのオートバイに使用されるスプロケットと同基準で製造されており、その排気量以下の車種に使用できることを証明いたします。」ということが書かれていた。

これで一気に前に進める感が出てきた。チェーンの強度証明を江沼チェンに、リアスプロケットの強度証明をXAMに依頼する。両社とも、証明書を送ってくださった。特にXAMのスプロケットは4年前に特注で製作していただいたものだというのに対応いただき、たいへん助かった。あらためて3社にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

改造申請に必要な書類

排気量変更の改造申請を行うにあたって提出すべき資料は、独立行政法人自動車技術総合機構の審査事務規定における別添4 改造自動車審査要領の別表第2に示されている。

自動車技術総合機構の審査事務規定のページ

以下の通りだ。

  1. 改造自動車届出書(第1号様式)
  2. 改造概要等説明書(第2号様式)
  3. 自動車を特定する資料
  4. 技術基準等への適合性を証する資料
  5. 保安基準適合検討書(第3号様式)
  6. 外観図
  7. 改造部分詳細図
  8. 強度検討書 動力伝達装置

各書類について説明する。改造自動車審査要領の別表第3に、それぞれの書類の要件が書かれているのでそれと併せて読んでもらいたい。

改造自動車届出書(第1号様式)

改造申請の書類の鑑となるもの。下記リンクからエクセルファイルをダウンロードすることができる。

自動車技術総合機構の届出様式ダウンロードのページ

総排気量の変更なので、改造内容は「(2)-②」に〇をつける。改造予定車両数は1台。主たる使用地域は届出る運輸支局内とし、車台番号を記入する。書面審査終了時の連絡は「要」に〇をつける。裏面は、省略する書類がある場合には、その該当箇所に×をつけることになっている。

改造概要等説明書(第2号様式)

改造自動車届出書のエクセルのもうひとつのシート。標準車(改造前)と改造車(改造後)の主要諸元を比較する表になっている。

標準車の欄には、カタログやWeb上の諸元表から、転記すればよいが、寸法は車検証上の数値を書いたほうがよい。軸重は諸元表には書かれていないので、前後に等分させておけばよい。車両総重量は、人間1人を55キロで計算すると決まっているので、定員×55/2を前後に付加した数値を書く。いずれにしても現車検査で測定するので、まちがっていても大丈夫だ。

タイヤサイズは、4年前にリアブレーキのディスク化の改造申請の際に、標準車には標準サイズ、改造車にはリアホイールを変更したのでそのサイズを書いたのだが、通知書(申請が受理されて返ってくる書類)には、タイヤサイズの変更は無きものになっていた。これは本申請には関係の無い改造だからなのか? 理由はわかっていない。今回は標準車の欄に、標準から変わっているサイズを書くことにして、改造車の欄には「←」を書いて変更が無いこととしてみた。

裏面は改造等の概要を示すもの。

目的の欄には、「動力性能の向上のため。」と書くのが定番。原動機の欄には、「ボアの拡大により総排気量を変更する。[ボア:72.0mm→78.9mm、総排気量:0.67L→0.81L]」と書いた。

このボアの78.9mmという数値にするのに、少々悩んだ。これは実測値なのだが、ビトーR&DのHPだと、79mmとなっている。ストロークは変更していないので83mmだ。ボアを79mmで計算すると、813ccになるのだが、ビトーR&DのHPでは、811ccとなっている。ちなみにボアを78.9mmで計算すると811ccになるのだ。今回はゴールの数値を優先して、78.9mmとした。811ccだろうと813ccだろうと、総排気量としての数値は0.81Lで変わらないのだが。

自動車を特定する資料

ここで大事なのは、以前は車検証の写しでよかったのだが、電子車検証になってからは、「自動車検査証の情報を車検証閲覧アプリで出力した自動車検査証記録事項」となっている。このアプリは国交省が配布している。スマホにインストールして、アプリが言うとおりに電子車検証を読み込むと、自動車検査証記録事項PDFを出力できるようになる。そのPDFは何かというと、電子車検証と一緒にもらえる自動車検査証記録事項っていうあれだ。

次回へ続く

組み立ての開始 -W650のボアアップ-

ピストンの直径を測定する 78ミリ

Wを810にボアアップしようとしている話の続き。一番はじめの話はこちら。

シリンダーが届く

ボーリング作業を依頼してあったシリンダーが、ビトーR&Dから届いた。

シリンダーヘッドとの合わせ面は、面研されていて美しい。これから塗装していく訳だが、その前にピストンリングの合口隙間を調整していこう。

ピストンリングの合い口隙間を調整する

ボアアップキットの説明書にある通り、シリンダーのお尻からピストンを使ってピストンリングを所定の位置まで押し込み、シクネスゲージで合口隙間を測定する。

いくつかの隙間が小さかったピストンリングを、ヤスリを使って調整した。

同時に、ピストンピンのスナップリングの端部も、ヤスリで丸めておく。

鍛造ピストンをあらためて眺める。飾っておきたいぐらい美しい。

シリンダーとシリンダーヘッドを塗装する

これから、シリンダーとシリンダーヘッドを塗装する。色はシリンダーヘッドはガンメタリック、シリンダーはガンメタに少々シルバーを混ぜた、薄いガンメタとする。まあ、前回と同じなのだが、「クランクケースがシルバー→シリンダーが薄いガンメタ、シリンダーヘッドがガンメタ、カムカバーが薄いガンメタ」というグラデーションで塗り分けていく。

あるかわからないが次の塗装の機会のために、ガンメタとシルバーの混合比をメモに残しておく。シリンダーヘッドはガンメタ1/シルバー4の割合、シリンダーはガンメタ1/シルバー13という割合だ。

マスキングテープで塗装しない部分をマスクする。

塗料は、いつものように「おもしろ塗装工房」で購入したものだ。筆塗りとエアブラシのハイブリッドで塗装していく。

なんだか濃い・・・

薄いガンメタのつもりが、ガンメタリックそのものと、さして変わりがない。グラデーションよどこへ? 仕方が無いので、カムカバーはシルバーにしておいた。暑いし(作業は夏)臭いから屋上で塗ってみたら、吹いた塗料が綿菓子みたいになってたいへんだった。

組み立てる

いろいろと準備が整ったので、組み立てに入る。まずはベースガスケット。ビトーR&Dのボアアップキットには、ベースガスケットが2枚入っている。1枚だと圧縮比が11.0:1となり、2枚だと10.7:1になる。2枚でもだいぶ高圧縮だ。3枚いれたいところだ。ちなみに手持ちの(中古だが)ガスケットと比べてみると、まったく同じもののように見える。

2枚のベースガスケットをセットし、ピストンをコンロッドに取りつける。ピストンリングコンプレッサーは、前回と同じく釣り竿のケースから切り出したプラスチックの板。前回の失敗を踏まえて、シリンダー側をできる限りまっすぐに切り出した。ここが平らでないと、でっぱっている部分がシリンダーに飲み込まれてしまう。

シリンダーをトップチューブから垂らした紐でぶら下げ、キックペダルを押し下げピストンをシリンダーに入れていく。シリンダーは固定されているわけではないので、キックペダルでの操作は、ごく微小だ。

ピストンリングコンプレッサーは成功だった。今まで何度か経験したシリンダーへのピストンの挿入の中で、最もスムーズに作業ができた。Wは360度クランクなので、ピストンが同じ位置なので本当に入れづらいのだ。

排気量の変更の構造変更を申請するために、ピストンの直径とストロークの長さを写真に撮っておく。

続いてシリンダーヘッドをのせるわけだが、その前にベベルシャフトを立てて置く。そしてこの段階でベベルシャフトのサークリップを入れておくのが大事。

上の写真の左側が、車体にセットした時の下になる。サークリップをこちらから入れると、すんなり入るが、右側から入れるとスプリングの台座のふくらみを越えなければならないので、サークリップが変形する。(写真のサークリップは左に歪んだもの、右に正常なもので、置き方としては逆になってしまった。) こう置いてサークリップを入れろと言われれば、誰だって左側から入れるだろうが、後述のように作業すると、右側からしか入れられなくなる。いつもこれで悩んでいたのだが、このブログの読者さんが下から入れれば大丈夫だと教えてくれた。

ただ、シリンダーヘッドを外さない限りベベルシャフトは取り外せず、よってこの方法はできないので、シリンダーヘッドを外さない限り、ベベルシャフトのサークリップは外さない方がよいと思う。しかし、サービスマニュアルに沿って漫然と作業すると、いつの間にか外してしまうので注意が必要。

発熱対策

ボアアップしたことによってエンジンの発熱量があがり、オーバーヒートが懸念される。以前から取りつけたいと考えていたオイルクーラーをこの機会に装着しようといろいろ調べると、オイルフィルターの後ろにオイルライン取り出しユニットを入れる方法は、W650にはリスクがあることがわかった。

というのも、W650(もちろんW400もW800も)は、オイルリリーフバルブがオイルフィルターの後ろにあるらしいのだ。オイルリリーフバルブは、オイルラインに異常な圧力がかかった時に、バルブを開放し油圧を下げる役割をしている。仮に、オイルクーラーからの戻りのオイルラインが詰まったとすると、上昇する油圧は解放されず、オイルクーラーコアを破裂させる可能性があるとのことだ。

それを回避する方法がある。俺にとっての神ブログ=続…Z1000Jさんが公開している。

それをマネさせてもらおうと、例によって余っているW400のオイルパイプとリリーフバルブを使って加工を始めた。

リリーフバルブの位置は、前述のブログを参考にしている。それほど、みちみちな場所ではなさそうなので、たぶん大丈夫(笑) むしろ、リリーフバルブの位置を左右間違えないかが心配(よくやるタイプ) 十分にチェックを重ねたうえで、オイルパイプに穴をあける。それでもたまに逆にあけてしまったりする自分が恨めしい。

ピッチが違うが、ねじが立つ厚みがたいしてないので仮固定ぐらいは問題ないだろうからと、タップを立てておく。オイルラインの中でリリーフバルブの先端が抵抗にならないように、丸みをつけて落としておいた。

が、結局このオイルパイプ加工は失敗した。アーク溶接でこれを完成させる技術を持ち合わせていなかったのが原因。TIG溶接機を本気で買いたいと思わせた出来事であった。