ノッキングとパーシャル異常 -W650のボアアップ-

CRキャブレター

点火時期でノッキング対策

810ccになったうちのダブたん。それ以前より燃調を濃くはしてみたが、低回転からのアクセルワイドオープンでノッキングがひどい。まずは、デフォルト設定だったウオタニの点火時期を調整してみる。

高圧縮になってノッキングが出る場合は、点火時期を遅らせると良いらしい。一気にマックス遅らせてみる。ウオタニ的には「5」という設定だ。点火時期はクランクシャフトの回転角で10度遅らせる。高圧縮にチューニングされたエンジン向けとなっている。走らせてみる。

おー だいぶ違う でも消しきれていない。ここから、キャブセッティングで対応していく。1/4開度でのノッキングなので、スロージェットを濃い方向に換えていこう。

ジェッティングでのノッキング対策

セット名ASSJJNC段数MJ
ボアアップ後16251783135
変更116551783135

ノッキングはだいぶ良くなった。アクセルを開ける気がする。ただそうなると更に開けたくなるので、ノッキングが出る。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更216551772135

少しだけよくなった気がする。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更316551762135

微妙にさらに良くなったが、排気がガソリン臭くなった。信号待ちで、後ろに停まったやつがくしゃみしている。ちょっと濃いか・・・

蛇足かもしれないが、ジェットニードルを一番手細くすると、テーパーの始まりがクリップ1段分早いので、クリップ段数的にも濃くなる。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更416551774135

ガス臭いのでジェットニードルは1番手戻し、「Mノズル ノッキング」で検索したまめしばさんのブログにあった、クリップ段数での調整を参考にクリップ段数を変える。 劇的にいい! 開ける気がしてきた。ただ、1/4パーシャルで妙な脈動がある。無視してそのまま走ると、かぶった感じになってくる。

クリップ段数を下げて、中開度を濃くしたことによってノッキングが改善(まだ少し気になるけど)したということは、1/4開度でのノッキングと思っていたが、1/2開度だったということのようだ。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更516551775135

さらに良くなった。ラフのアクセルオープンでもノッキングしない。ただ、パーシャル(開度はやはり1/4程度)がおかしい。高速コーナーをパーシャルで抜けようとして、転けそうになった。言い過ぎだけど。

検索すると、CRは低開度のパーシャルでかぶるらしい。レース用キャブレターだから、そんなのは眼中ないとか。 いやいや、サーキットだって、パーシャル状態あるでしょ? スペンサーじゃないんだから(古)

セット名ASSJJNC段数MJ
変更616051776135

パーシャルの異常は和らぐ。とは言え、気持ちよく走れない。パーシャル状態が3秒続くと、ボベッ ボベッ と言い出す。開ければ回転は上がっていく。

通勤時、パーシャルが長く続いてしまう横浜新道では、開けて閉じてを繰り返す。ツーリングなんて絶対無理。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更716051787135

さらなるパーシャル異常を解決しようと、JNを太めた。クリップ段数を下げて、テーパーの開始位置はほとんど変わらない。ただ、これといった変化は無い。

ウオタニを導入したのに、やっていなかったプラグギャップの拡大をやってみた。変化は感じられなかった。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更815851787135

1/10ぐらいなら問題なし1/8~1/4パーシャルはぼべる。史上最悪な気もする。ただ、加速さえしてればノッキングもほぼ気にならず快適。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更915851807135

たいして変わった気はしない。810化後、初めて3/4開してみたが、ボッ ボッ ボッ ってなる。濃いか?

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1015851807120

↑を受けてMJをしぼる。1/4パーシャルの不安定はあるも、だいぶ走りやすくなった。MJは少なからず低開度にも影響があるということだろう。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1115551817120

1/4パーシャルの不安定は、ほぼ消えた。普通に走れる。まあちょっとノッキングはある。チリチリチリって感じ。これも、回転の上昇に合わせてアクセルを開けてあげれば発生しない。

そもそも強制開閉のキャブレターは、エンジンの状態に最適なアクセル開度をコントロールすることがライダーの使命であり魅力。言ってみれば醍醐味だと思う。

それはわかっているのだが、Mノズルの低回転からのガバ開けについてくる気持ちよさを知った今、このラフなコントロールは捨てられないのだ。CRに本来求めるべきではないのかもしれないと思いつつ、これをCRで実現したいと強く思う。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1215551807120

ノッキングつぶしにジェットニードルを1段濃いめにする。1/4パーシャルの不安定さが、すぐに顔を出した。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1315251807120

1/4パーシャルの不安定さは減ったが、変更11のセッティングの方が安定していた気がする。 ノッキングはチリチリしている。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1415251797120

1/4パーシャル不安定。 ノッキングは小さい。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1515051797120

1/4パーシャルはだいぶよく、ノッキングも小さいが、今までのベストではない。

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1615051795120

変化無し

セット名ASSJJNC段数MJ
変更1715051793120

1/4パーシャルは安定するも、ノッキングが出る。

さて、ここまでやってきたが、ノッキングを出さないようにするとパーシャルが安定せず、パーシャルを安定させるとノッキングは出るということから、抜け出すことはできなかった。どうしても、どちらか出るか、中途半端かだ。

やはりボアアップによる高圧縮比をなんとかしないとダメなんだろうか?

ノッキングやパーシャルでの異常をネットで検索していて、あるブログの記事を発見した。CRキャブレターに、パイロットスクリューを増設するというのだ。

プロヘッドモーターファクトリーさんのブログのパイロットスクリューの話

こちらのブログを読んでいただければわかるが、要約してみる。

CRキャブレターには、スロー系がスローポートしか存在しない。スロットルバルブ全閉時はスローポートの位置から、吸入負圧が不足するので、スロージェットを大きくせざるをえない。スロットルバルブが開くと、吸入負圧が大きくなり、スロージェットから多すぎる燃料が供給される。これが低開度での燃調を濃くしてしまう原因であり、パイロットスクリューを増設してアイドルポートをつくることで、それを是正できると。

よくよく読むとこの加工、故まめしばさんから引き継いでいるとある。本家のブログにも行ってみる。

まめしばさんのブログのパイロットスクリューの話

忘れていたが、確かに読んだことがある。これでパーシャル異常が解決できるのなら・・・

会社の二輪部員、S君に相談してみた。彼は以前、SRにCRを入れていたり、近々BMW R100RSにCRを導入しようとしている、生粋のCRマニアだ(FCRに浮気もしてたが)。

行動が速い彼は、すぐにそのショップに電話をして相談した。すると、シングル用のCRには、この加工はできない可能性が高いとのことだった。まだ現物がないので確かなことはわからないが、BMW R100RSは水平対向なのでキャブレターはシングル用となる。

そしてもうひとつ、今キャブレターを送ってくれれば、年内中に加工が終わるかもしれないとのことだった。

よし パイロットスクリュー増設加工に出そう

油温計を装着 -W650のボアアップ-

油温計モニターは、インシュロックで仮付け

オイルクーラーを取り付けるために、その前段にオイルプレッシャーバルブを設けておこうという作戦は失敗した。前の話はこちら。

それでもボアアップしたことによる危険な油温上昇の察知と、いつかつけたいオイルクーラーの効果を知るために、油温計はどうしてもつけておきたい。

油温計を探す

まずはどんな油温計にするか。アナログ好きの自分としては、デジタルではなく、針で数値を指し示すものがいい。探してみる。

出てくるのは、オイルフィラーキャップと交換するタイプ。Wの場合、オイルフィラーキャップはクラッチの上についているので、センサーが下に伸びていない。クラッチに跳ねあげられたオイルがかかることによって、油温を計測しているのだろう。まあ、それはいい。問題はメーターが小さすぎて読み取れないこと。危険を、すぐには察知できない。しっかり見ようとして視線を落とし続けたら、別の危険がやってくるし。

タコメーターの横につけられるアナログの油温計となると、T&Tかスタックの二択のようだ。大きさがちょうどいいのと価格の魅力から、T&Tの油温計にすることにした。


ただ、この油温計にはセンサーがセットされていなかった。さらに日本語の情報がない。英語の取扱説明書を見ると、「こういうセンサー用意してね」と書かれてはいたが、そういうセンサーが見つからなかった。手に入るセンサーは使えないのか? それを知るために、油温計のセンサーの作動原理を調べてみる。なるほど、温度によって抵抗が変わる金属の抵抗値で、温度を計測しているらしい。

ということは、求められているセンサーと抵抗値が違うセンサーだったとしても、抵抗を追加で、直列に入れたり並列に入れたりしてあげれば、正しく油温を指し示すようにできるに違いない。調整は難しいかもしれないが・・・

そこで思い立ったのが、一旦デジタルでもいいから、油温計を導入すること。というのは、非常に安価な油温計とセンサーのセットが、デジタルで存在していたのだ。あとは、これをどこに取り付けるかだ。

油温計センサー取付方法の模索

油温計やオイルクーラーを後付けする際に、よく使われている(ような)手法が、オイルフィルターとエンジンの間に、取り出しブロックをはさむ方法だ。しかしこの方法は、集合しているエキパイだとオイルフィルターの前方への張り出しを許してくれない。うちのだぶたんは、イージーライダースの集合管がついているので、これにあてはまる。

そこで検索して見つけた方法が、オイルプレッシャースイッチをはずして、アダプターをかます方法。これなら簡単に油温センサーを取り付けられる。アダプターは、ネジのサイズ、ピッチで複数用意されている。形状としては、長ナット(高ナット)の一端が雄ネジになっていて、ナットの腹に穴が開けられ、ネジが切られている。雄ネジが入口となり、雌ねじふたつが出口となる。W650の場合、オイルプレッシャースイッチのねじはPT1/8だ。

センサーを検索すると、デイトナからデジタルメーターとセットで、5000円以下のものを発見。センサーだけ買うつもりだったが、この安さならメーターもあった方が、のちの抵抗値調整も簡単だろうからと購入した。ネジはPT1/8だったので、アダプターも購入した。

油温計の取付

油温計とアダプターが届いたので観察する。

センサーの取付ネジからの先が長いので、アダプターの腹にあけられた穴だと、センサーの先端が反対側に当たって、締まりきらない。腹側に油圧スイッチを取り付ければいいか?

油圧スイッチを取り外す。オイルは抜いてあるので出ては来ない。幸い、油圧スイッチの先端は長くなかったので、アダプターの腹側に取り付けられる。

リフォームの時に使ったシールテープをネジ部に巻いて、アダプター、油圧スイッチ、油温センサーを取り付ける。油圧スイッチは進行方向に突き出すようにセットした。

ボアアップ後の初乗り

オイルを入れる。燃料コックを開く。CRにガソリンが貯まるのをしばし待つ。チョークレバーを引いてセルスイッチを押す。

キュルキュルキュルキュル

ブオン プスッ

810ccになったうちのダブたんは、あっさり目を覚ました。しかし、チョークレバーを戻した途端に止まった。もう一度チョークレバーを引いてセルスイッチを押してみる。

結果は同じ。チョークレバーを戻すとすぐに止まってしまう。何度やってもそれは変わらなかった。キャブセッティングを一切変えてないので、それが理由かもしれない。

セット名ASSJJNC段数MJ
ボアアップ前15851791120
ボアアップ後16251783135

試運転でチョークを引いてないとアイドリングしなかったことを受けて、濃いめのスタート。これが功を奏したか、エンジンは問題なく始動し、アイドリングもした。

油温計は36度を示している。まあ、気温だ(このときは夏)。暖機運転中に、徐々に数値が上がっていく。ボアアップして組んだエンジンの腰上を観察する。特に異常は見られない。油温センサーを取り付けたあたりを素手で撫で回してみたが、オイル漏れもなかった。よし出発だ。

810ccになったうちのダブたん。猛烈な変化は残念ながら感じられない。セッティングが出れば変わるのだろうか。それよりも、ノッキングがひどい。アクセルをゆっくり開ければ、なんともないが、エンジンの回転に対して少しでもアクセル開度が大きいと、チリチリ音を立てている。圧縮比が高まったから当然か。まずはデフォルトのままのウオタニで調整していこう。

油温計の方も少々問題があった。センサーが走行風をしっかり受ける場所にあるからだろう、走り出すと温度がぐんぐん下がるのだ。信号待ちで上昇し、正しい温度で安定する。ちなみに87度と表示されている。

ただ、オイルラインの脇道の袋小路に取り付けたセンサーが、正しい油温を感知しているのかは、かなり疑問だ。参考程度にしておこう。

今回取り付けた油温計はこれ


忙しくて全然更新できていませんでしたが、そろそろ暇になるので、これからはぽつりぽつりと更新していきます。2025/2/19

組み立ての開始 -W650のボアアップ-

ピストンの直径を測定する 78ミリ

Wを810にボアアップしようとしている話の続き。一番はじめの話はこちら。

シリンダーが届く

ボーリング作業を依頼してあったシリンダーが、ビトーR&Dから届いた。

シリンダーヘッドとの合わせ面は、面研されていて美しい。これから塗装していく訳だが、その前にピストンリングの合口隙間を調整していこう。

ピストンリングの合い口隙間を調整する

ボアアップキットの説明書にある通り、シリンダーのお尻からピストンを使ってピストンリングを所定の位置まで押し込み、シクネスゲージで合口隙間を測定する。

いくつかの隙間が小さかったピストンリングを、ヤスリを使って調整した。

同時に、ピストンピンのスナップリングの端部も、ヤスリで丸めておく。

鍛造ピストンをあらためて眺める。飾っておきたいぐらい美しい。

シリンダーとシリンダーヘッドを塗装する

これから、シリンダーとシリンダーヘッドを塗装する。色はシリンダーヘッドはガンメタリック、シリンダーはガンメタに少々シルバーを混ぜた、薄いガンメタとする。まあ、前回と同じなのだが、「クランクケースがシルバー→シリンダーが薄いガンメタ、シリンダーヘッドがガンメタ、カムカバーが薄いガンメタ」というグラデーションで塗り分けていく。

あるかわからないが次の塗装の機会のために、ガンメタとシルバーの混合比をメモに残しておく。シリンダーヘッドはガンメタ1/シルバー4の割合、シリンダーはガンメタ1/シルバー13という割合だ。

マスキングテープで塗装しない部分をマスクする。

塗料は、いつものように「おもしろ塗装工房」で購入したものだ。筆塗りとエアブラシのハイブリッドで塗装していく。

なんだか濃い・・・

薄いガンメタのつもりが、ガンメタリックそのものと、さして変わりがない。グラデーションよどこへ? 仕方が無いので、カムカバーはシルバーにしておいた。暑いし(作業は夏)臭いから屋上で塗ってみたら、吹いた塗料が綿菓子みたいになってたいへんだった。

組み立てる

いろいろと準備が整ったので、組み立てに入る。まずはベースガスケット。ビトーR&Dのボアアップキットには、ベースガスケットが2枚入っている。1枚だと圧縮比が11.0:1となり、2枚だと10.7:1になる。2枚でもだいぶ高圧縮だ。3枚いれたいところだ。ちなみに手持ちの(中古だが)ガスケットと比べてみると、まったく同じもののように見える。

2枚のベースガスケットをセットし、ピストンをコンロッドに取りつける。ピストンリングコンプレッサーは、前回と同じく釣り竿のケースから切り出したプラスチックの板。前回の失敗を踏まえて、シリンダー側をできる限りまっすぐに切り出した。ここが平らでないと、でっぱっている部分がシリンダーに飲み込まれてしまう。

シリンダーをトップチューブから垂らした紐でぶら下げ、キックペダルを押し下げピストンをシリンダーに入れていく。シリンダーは固定されているわけではないので、キックペダルでの操作は、ごく微小だ。

ピストンリングコンプレッサーは成功だった。今まで何度か経験したシリンダーへのピストンの挿入の中で、最もスムーズに作業ができた。Wは360度クランクなので、ピストンが同じ位置なので本当に入れづらいのだ。

排気量の変更の構造変更を申請するために、ピストンの直径とストロークの長さを写真に撮っておく。

続いてシリンダーヘッドをのせるわけだが、その前にベベルシャフトを立てて置く。そしてこの段階でベベルシャフトのサークリップを入れておくのが大事。

上の写真の左側が、車体にセットした時の下になる。サークリップをこちらから入れると、すんなり入るが、右側から入れるとスプリングの台座のふくらみを越えなければならないので、サークリップが変形する。(写真のサークリップは左に歪んだもの、右に正常なもので、置き方としては逆になってしまった。) こう置いてサークリップを入れろと言われれば、誰だって左側から入れるだろうが、後述のように作業すると、右側からしか入れられなくなる。いつもこれで悩んでいたのだが、このブログの読者さんが下から入れれば大丈夫だと教えてくれた。

ただ、シリンダーヘッドを外さない限りベベルシャフトは取り外せず、よってこの方法はできないので、シリンダーヘッドを外さない限り、ベベルシャフトのサークリップは外さない方がよいと思う。しかし、サービスマニュアルに沿って漫然と作業すると、いつの間にか外してしまうので注意が必要。

発熱対策

ボアアップしたことによってエンジンの発熱量があがり、オーバーヒートが懸念される。以前から取りつけたいと考えていたオイルクーラーをこの機会に装着しようといろいろ調べると、オイルフィルターの後ろにオイルライン取り出しユニットを入れる方法は、W650にはリスクがあることがわかった。

というのも、W650(もちろんW400もW800も)は、オイルリリーフバルブがオイルフィルターの後ろにあるらしいのだ。オイルリリーフバルブは、オイルラインに異常な圧力がかかった時に、バルブを開放し油圧を下げる役割をしている。仮に、オイルクーラーからの戻りのオイルラインが詰まったとすると、上昇する油圧は解放されず、オイルクーラーコアを破裂させる可能性があるとのことだ。

それを回避する方法がある。俺にとっての神ブログ=続…Z1000Jさんが公開している。

それをマネさせてもらおうと、例によって余っているW400のオイルパイプとリリーフバルブを使って加工を始めた。

リリーフバルブの位置は、前述のブログを参考にしている。それほど、みちみちな場所ではなさそうなので、たぶん大丈夫(笑) むしろ、リリーフバルブの位置を左右間違えないかが心配(よくやるタイプ) 十分にチェックを重ねたうえで、オイルパイプに穴をあける。それでもたまに逆にあけてしまったりする自分が恨めしい。

ピッチが違うが、ねじが立つ厚みがたいしてないので仮固定ぐらいは問題ないだろうからと、タップを立てておく。オイルラインの中でリリーフバルブの先端が抵抗にならないように、丸みをつけて落としておいた。

が、結局このオイルパイプ加工は失敗した。アーク溶接でこれを完成させる技術を持ち合わせていなかったのが原因。TIG溶接機を本気で買いたいと思わせた出来事であった。

ボーリング作業依頼とシリンダーヘッド -W650のボアアップ-

美しいCP CARRILOのピストン 

5回続いたエンジントラブルの話から、W650ボアアップの話が始まります。今回が1回目。

ボーリング作業依頼

アップガレージで見つけたビトーR&DのW650ボアアップキット。CP CARRILOの鍛造ピストンが、まるで宝石のように美しい。

シリンダーライナーを交換するボアアップになるのだが、この作業をどこかでやってもらう必要がある。ちなみに今までにこのような作業を依頼した経験は無い。ネットで検索して、2~3の候補を見つけた。

ところが、キット付属の説明書に、「信頼できる内燃機関専門工場または当社までご依頼ください」とあったのだ。どう考えても、ビトーR&Dさんにやってもらうのが間違いない。ということで問い合わせフォームから連絡してみた。

数日後回答をいただく。作業についての疑問点を営業さんに丁寧に対応いただき、作業を依頼することになった。ボアアップキットは日本の各地を巡ったあと、親元に帰るわけだ。

ここで、ボアアップしてもらうシリンダーだが、W400のものにすることにした。本ブログの熱烈読者ならご存知の通り、我が家にはW400のエンジンがバラバラながら1機ある。そしてW400とW650のボアは等しく、72ミリだ。今のシリンダーはBEETのボアアップキットが組まれているので、これを温存しておくという訳だ。ピストンが無いから意味はないのだが。

W400シリンダーのフレッシュアップ

W400のシリンダーを観察する。黒い塗装がはがれかかっており、腐食もしている。両気筒の間の通路に、ゴミも付着している。こんな汚いシリンダーを送ることはできないので、きれいにしなければならない。

ひどい付着はスパチュラでこそぎ落とす。腐食はワイヤーブラシタイプの先端パーツを使い、ルーターで削り落した。今回はじめて、ブラシが軸と平行に先端に出ている竹ぼうきみたいな形のものを使ったのだが、フィンの間を削るにはもってこいのものだった。

きれいになったシリンダーと、ボアアップキットのピストン、シリンダーライナー、Oリングを箱に詰めて、ビトーR&Dに送った。作業は3週間ほどかかるとのことだ。

ベベルギアの破損

シリンダーの加工の間に、シリンダーヘッドのフレッシュアップをすることにした。バルブをはずし、燃焼室内のカーボンを落とす。エアジェットを嚙みこんでできた傷や凹みを、ルーターで削りすぎないように平らにする。

続いて少々気になっていたベベルギアを観察する。ドライブ側のベベルギアの歯に、1点欠けているような所があったのだ。老眼鏡に、拡大鏡を装着して見てみる。やはりそこは欠けていた。それどころか、ギア全体がガタガタになっているではないか。

これは完全にやばいやつだ。

試しにカムシャフトを仮組みして手で回してみる。カムシャフト1回転ごとでも、ベベルシャフト1回転ごとでもない、ある周期でゴリゴリッという音がする。これはエアジェットとは関係ない。前回の組立の際の、ベベルギアの当たり調整ミスだろう。焼けたように黒かったのも、これが理由なんだろう。せっかくW810になるのに、このベベルギアに目をつむるわけにはいかない。

そんな時はやはりW400の部品だ。ロフトから段ボールに入ったシリンダーヘッドをおろして、中身を確認する。

ベベルギアは、傷も無く、焼けたりもしていない。そこで思いつく。このシリンダーヘッドごと使えばいいんじゃないの?

ということで、このシリンダーヘッドの現状を確認しよう。

W400のシリンダーヘッドまわりの確認

まずはカムシャフト。W400だったころに、W800のカムシャフトに交換するという流用チューンを読んだことがあった。W800の方がハイカムになっているとのことだ。じゃあW650のカムシャフトとは違うのかということで、カム山の高さを確認してみた。

上がW650で、下がW400。W650は36.7ミリ、W400は35.2ミリと、W650の方が1.5ミリ高かった。ということは、カムシャフトはW650を使うことにしよう。次にドライブベベルギアを確認してみる。シリンダーヘッドに装着された状態で指で回してみると、ちょっと重い感じがする。これはエンジンをばらすときに、シリンダーヘッドボルトが噛んでしまい、サンダーで頭を落としたということがあったのだが、その時の切削粉が流れ込んでいるからだろう。ということでパーツクリーナーでじゃぶじゃぶ洗浄してみる。

変化はない。ドライブベベルギヤケースユニットをシリンダーヘッドから外してみた。

W650のドライブベベルギアケースユニットも外して比較してみる。明らかにW400のものは重い。どうしたものか? エンジンオイルを注入して、電気ドリルでぐるぐる回してみたが、変わることはなかった。これは使えない。ベアリングを交換する必要がある。

サービスマニュアルで調べると、4つの特殊工具が必要だった。

  • ベアリングハウジングからギアケースを押さえる【ベアリングハウジング治具M45×1.0】
  • ベベルギア取付ナット用【ソケットレンチ】
  • ベベルギアを押さえる【ベベルギヤホルダ】
  • ベベルギアを回転させる【ベベルギヤドライブビット】

これらを買いそろえると、なんと4万円近くするではないか・・・

数日考える

考えた結果、重いベベルギアも、ガタガタのベベルギアも使えないので、特殊工具を買うことにした。ただし、ベベルギヤホルダとベベルギヤドライブビットは、手持ちのベベルシャフトをぶった切って作ることにしたので、予算は半分の2万円で済む。早速買おう!

勢い込んで注文しようとしたが、なんと廃番になっていた・・・

おいおいカワサキ W800は現行車種だろ

どうなる?