ベベルギヤケースユニットのベアリング交換 -W650のボアアップ-

ばらばらになったベベルギヤケースユニット

ビトーR&Dのボアアップキットを組み込む話の続き。1回目はこちら

シリンダーをボーリング作業に出している間に、シリンダーヘッドの整備を行っている中で、ドライブベベルギヤのベアリングを交換しなければならなくなったのだが、その作業をするための特殊工具が廃盤になっていた。

ベアリングハウジング治具M45×1.0の自作

作るにあたって、このベアリングハウジング治具なるものが、なんのために必要なのかを考察する。この特殊工具の出番は二回ある。一回目は、ベアリングハウジングにねじ込まれたベベルギヤケースを緩める時。二回目は、ベベルギヤとベアリングをプレスして外す時だ。ただ、この二回目のプレスの際は、治具は無くても作業はできるので、ベベルギヤケースを緩めることさえできればいいと思う。

ベアリングハウジング治具には、内側にネジが切られている。そのネジがM45×P1.0なわけだが、そこにベアリングハウジングをねじ込む。ベアリングハウジング側面には、180度離れて二つの穴が開けられていて、その穴にベアリングハウジング治具からネジが差し込まれて、ベアリングハウジングをホールドする。ベベルギヤケースを緩める力は、この2本のボルトに全てかかるわけだ。特殊工具の外側は平面があり、万力で押さえられるようになっている。

手っ取り早くM45でピッチ1.0のナットを探したが、さすがにそんなものはなかった。そこで考えたのが、Lアングルを2個組み合わせて、四角い筒を作るということ。四角い筒なら、万力で押さえられるし、工作も簡単だ。

大事なのは、ベアリングハウジングをホールドする2本のボルト。ベベルギヤケースの締め付けトルクが98N・mと、かなり大きい。手持ちの強度区分の高そうなM6のボルトを使うことにしよう。

ベアリングハウジングの径より小さいLアングルを使用して、そのふたつをつなぐように更に小さいLアングルを溶接した。

位置を慎重に合わせて、ボルト用の穴をあけてタップをたてる。基本的にはこれで完成。

自作ベアリングハウジング治具の使用

完成したベアリングハウジング治具を使用して、ベベルギヤケースを緩めるわけだがこのトルクに耐えられるような万力が無い。今までも、しっかりした万力は欲しかったのだが、なんとかごまかして作業してきた。

検索してみると、想像していたより安い金額だった。早く買えばよかった。ネットでの注文も考えたが、アストロプロダクツに行ってみた。ついでにタコ棒とコンパウンドも購入した。

万力も揃ったので作業開始。ベアリングハウジングのネジの保護のためにビニルテープを巻き、治具の中に収め、回転防止のボルトをねじ込んでいく。ベアリングハウジングの穴に、2本のボルトが同じぐらいの長さが差し込まれているか確認して、万力にセットする。

メガネレンチをかけて、力を込める。それなりに力は必要だったが、あっけなく緩んだ。そのままベベルギヤケースを取り去る。すると現れるのが、ベベルギヤ取り付けナットだ。

ベベルギヤ取り付けナット用ソケットの自作

このナットは90度刻みで4点の切り欠きがあり、そこに爪をかけて締めたり緩めたりする。ナット自身は奥まった場所にあるので、ソケット状の工具でしかアプローチできない。

これはもう、それらしい大きさのソケットを加工するしかない。問題は、これまた59N・mと、そこそこ大きなトルクで締め付けられているので、自作したソケットの4つの爪が消し飛ばないかが心配なところだ。

ナットの切り欠きの直径を測り、それに近い内径のソケットを選び出した。まず、このソケットのナットがかかる部分をベビーサンダーで切り落とす。この時、0.5ミリほど、ナットがかかるギザギザを残しておいた。このギザギザを頼りに、しかし基本目検討で4つの爪をけがく。

けがいた線が残るように、不要な部分をベビーサンダーで切り落としていく。爪はどんどん小さくなっていき、トルクに耐えられるのか不安になってくる。とにかく削り過ぎないようにだけ注意した。

4つの爪は、だいぶそれらしい大きさになったはずだった。ただ構造上、1箇所だけはめて大きさを確認することができない。はまる時は3箇所は同時だろう。それまでは、どこが合っていないかがわからない。

それでも、2箇所だけ半がけみたいのを順繰りやって、その時の感触で削るべき場所を判断して削っていった。そしてその瞬間が訪れた。4箇所いっぺんにはまったのだ。その後、微調整をして、ソケットは完成した。

自作ベベルギヤ取り付けナット用ソケットの使用

完成したソケットでナットを緩めるには、ベベルギヤを押さえなければならない。それには、ベベルギヤホルダーという特殊工具が必要になる。これは、手持ちのべベルシャフトを切って、万力ではさめるように平面を作った。

自作ベベルギヤホルダーを万力ではさみ、それにナットが上になるようにベベルギヤをはめる。そのロックナットに自作ベベルギヤ取り付けナット用ソケットをはめる。「爪よ飛ぶな」祈りながら力を込めた。

クッ という感触でロックナットが緩んだ。(ニヤリ)

ベアリングのリムーブとセット

ベベルギヤとベアリングの取り外しにはいつものように、油圧ベンダーのポンプを使ってやった。

ばらばらになったベベルギヤケースユニット。

ベアリングを圧入し、ベベルギヤを圧入する際は、その向きに注意。ベベルギヤをはずす時はベアリングにかかってはいけない力がかかってしまうので、間違えたら最後。こういう時に、本気で逆に入れてしまうのが俺。自分ダブルチェックで方向を確認してから圧入した。

ベベルギヤ取り付けナットを締め付ける。

ねじロックを塗布して、ベベルギヤケースを締め付けて完成。

ベベルギヤケースユニットを立てて置いて、ベベルギヤを指で回すと抵抗なく回った。

※本サイトのタイトルでは、「ベベルギア」だが、今回の記事では、カワサキが使っている「ベベルギヤ」を尊重しております。