リアブレーキキャリパー交換

ブリードプラグはチタン製

リアブレーキから何やらかすかにキーキー音がする。そろそろパッドも交換する時期な気もするし、ばらしてみよう。

ばらしてみると、案の定ブレーキパッドは残り1mmもないといったところだ。中古のブレーキパッドがあるので早速取り替えようと思ったところで気がついた。このブレーキキャリパーは片押しなので、キャリパーはフローティングされている。そのキャリパーをマウントしているベースの一部がディスクに当たって削れているのだ。

このベースって動くんだっけ?

疑問に思いながらもとりあえず交換することにした

このブレーキキャリパーは、リアブレーキをディスク化した時に取り付けたもので、カワサキZZR1100のキャリパーだ。ヤフオクで手に入れた中古のものだが、腐食してキャリパー内部もピストンも、一部かじったようになっていた。

いつかは取り替えたいと思い、ヤフオクに出品されるのをたまにチェックしていた。入札する条件は、見た目の状態がいいもの、ブレーキパッドの残りが多いもの、そして中古のブレーキパッド代だと考えれば割に合う金額のものだ。

ざっくり言ったら送料込みで2000円と言ったところ。

そんな理由で、今ブレーキキャリパーは2組持っている。そのうちの1つのベースを使おう。ロフトから引っ張り出したブレーキキャリパーから、ベースを外し錆をワイヤーブラシで落として、耐熱ブラックのスプレーを吹いた。

塗装を乾燥させている間に新しいパッド(と言っても中古のキャリパーについていた中古パッドだが)をセットしようと、ピストンを押し戻しかけて気がついた。小径側のダストシールが飛び出ている。

こいつはピストンを外さないと元の位置には戻せないだろう。いや、たとえピストンを外しても、潰れて変な癖がついているから、元通りにはならないだろう。どうせダストシールを新品に取り替えるなら、これを機会にキャリパーごと全交換だ!

キャリパーサポートの位置の謎

それはそれとしてベースが削れた理由を解明しておこうと、手にはつかないぐらいに塗料が乾燥したベースを仮付けしようとしてみた。

入らない

キャリパーサポートとディスクの間にベースが入らないのだ。測ってみると、リスクとキャリパーサポートの隙間は10.5mmに対してベースの厚みは11.5mmだった。入ろうはずがない。

なぜだろう。4年前にこの構成にしてから、何度もブレーキパッドを交換したが、こんな風になったことは一度もなかった。なぜ突然?

アクスルシャフトが貫いている部品たちをじっと見る。右から、右カラー、キャリパーサポートカラーのつば、キャリパーサポート、左カラーとなっている。ふと思いついてキャリパーサポートをディスクの方に押してみた。

動いた

キャリパーサポートがディスクの方に寄った。こんな状態で走っていたのか? キャリパーサポートの位置を元に戻してディスクとの隙間を測ってみたが先ほどと同じ10.5mmだった。キャリパーサポートが動くことは大きな問題だが、それ以上に入るはずのない隙間に部品をねじ込んでいたことはもっと大きな問題だ。

謎が高まったので、作業をやめて過去の資料を調べることにした。過去の資料というのは、部品の流用をするときに、パーツの寸法や組み立て方を考察するための手書きの資料だ。

クリアファイルにプロジェクトごとに入れてある資料から、リアブレーキをディスク化した頃のものを探し出す。

キャリパーサポートについて「左へのスラスト方向の移動をどうする」という言葉を見つけた。やはりそのことには当時から気づいていたらしい。しかし、それ以上の情報は得られなかった。

そうだ 当時の写真を見てみよう

Googleフォトで当時の写真を探してみてわかった。キャリパーサポートのカラーの入れ方が違ったのだ。

前述の通り、リアブレーキにはZZR1100のものを使っている。なぜこれを使うかというと、対向ピストンのキャリパーは、スポークにぶち当たって使えない。これは当初ZRX1100のキャリパーを試してみてわかったこと。片押しピストンでアクスルシャフトの下にキャリパーがくるものは、これぐらいしか見つからなかった。キャリパーを下にしたい理由は、スイングアームがZRX1100であり、それはキャリパーが下だからだ。

ZZR1100のキャリパーサポートは、アクスルシャフトに対して、ニードルベアリングとカラーで接続される。カラーは、片端にツバがあり、キャリパーサポートはそちらには動かない。では、ツバがない側への移動は、どう抑制していたかというと、おそらく純正状態では、トルクロッドで抑えていたのではないかかと思う。

ところが我がWのトルクロッドは、両端ともロッドエンドベアリングとなっている。これは自由に動くのが売り。なので自由に動いていたわけだ。当初はツバを左に組んでいたから、ディスク方向に動くことはなかった。右には動くのだが、トルクロッド両端の位置の関係上、右に動くようには思えない。当時もそう考えたのかは覚えていない。

では、いつひっくり返ったのか? それはおそらく去年、キャリパーサポートの腐食が気になって、塗装したときに間違えて組み立てたのだと思われる。こういう時、流用チューンはあぶない。作り上げた時の記録をきちんと作っておかないと、こんなことになる。

キャリパーのリフィニッシュ

必要なゴム部品を注文し、それが届くまでの間に、キャリパーをリフィニッシュする。内部の腐食、外側の塗装や汚れを、ワイヤーブラシやルーターできれいに落とした。

塗料は耐熱が良いのだろうが、前回の塗膜はオーブンレンジで乾燥させたというのに、パーツクリーナーに負けてしまうものだった。今回は2液性のウレタン塗料でやってみる。塗る前に試してみたが、パーツクリーナーにも耐えそうだった。

試しにハケ塗りでいけるかやってみたが、まったく話にならなかったのでエアブラシで塗った。こちらが施工前(ただし程度は同様の別物)

そしてこちらが施工後

ブリードプラグにチタン製をおごってみたが、ゴムキャップをかけると、ほとんど見えなくなる。まあ、ただの自己満足。

キャリパーの取付

今回ついでに錆び始めたトルクロッドの取付ボルトも取り替えた。このボルトはボルトの谷径で強度計算しているのだが、半ねじのものを使って、少しでも強度を稼いでいる。本当はピンにしたいのだが、適当なものを見つけられなかった。今回は更にねじでない部分を長くして強度を稼ごうと吟味してボルトを選んだが、新旧比べてみるとまったく同じだった。

ベースにキャリパーを組みつけ、中古のパッドを取りつけた。まだ5ミリ残っているので、ほぼ新品みたいなものだ。

キャリパーサポートに3本のボルトで固定する。ベースとディスクの隙間は3.5ミリあった。この隙間をいくつにするかで、リアブレーキをディスク化した時に悩んだ。初めの設定は失敗で、パッドが外れてしまったぐらいだ。片押しピストンのキャリパーの動きにとらわれすぎてしまったのだろう。ただ、よくよく考えてみれば、ベースに保持される外側のパッドとベースの相対的な関係は、パッドの厚みしか変化しないということと、パッドが完全にすり減っても、バックプレートを保持できていればいいということだ。

今の隙間の3.5ミリだと、パッドが完全にすり減った時に0.5ミリしか保持されないので少々心もとない。あと2ミリディスク側に寄せよう。更に、今のカラーの外径は、キャリパーサポートのカラーの外径に合わせて28ミリとなっている。これを38ミリとして、キャリパーサポートが外側にも移動しないようにしよう。

カラーの交換

ミスミに注文していたカラーが届いた。以前は気がつかなかったのかもしれないが、仕上げにアルマイトを選ぶことができた。

カラーの変遷 初回(失敗)

前回

今回

キャリパーサポートが、だんだんディスクに近づいているのがわかる。

交換終了したキャリパー

キャリパー交換完了

ブレーキホースつなぎ替え時のブレーキフルードにも、パーツクリーナーにもやられない塗膜ができた。あとは、使用時の熱に耐えられれば文句無しだ。