倒立フォーク化の細かいこと -W650を倒立フォーク化-

ずいぶん進んできたW650の倒立フォーク化だが、いろいろと解決しなければならない細かいことや、すでに解決したけど触れていなかったことがあるので、今回はそのお話。まずはハンドル切れ角の調整。

ハンドルストッパーを新造する

Ninja1000のアンダーブラケットのハンドルストッパーは、Wのそれとは位置が違うため、そのままでは使えなかった。なのでハンドルストッパーを新造する。切れ角の微調整をできるように、取付穴を偏心させた円筒をM8ボルトで固定することにする。問題はその位置。

フレーム側の当たりは、ヘッドチューブ前方に扇子のような扇形の厚い鉄板が溶接されている。この扇子にハンドルストッパーが当たることによってハンドル切れ角が決まる。つまり、アンダーブラケットに取付けるハンドルストッパーの位置は、扇子の位置が決まっている以上、検討の余地はないと言える。

ところがその位置はアンダーブラケットの前後方向のほぼ中心で、ひっくり返して裏を見ると、そこにはリブが通っているのだ。ここに穴をあけるのは、かなり気が引ける・・・

中心のリブを超えて、後方のリブと中心のリブの中央が穴をあけるのにベストな位置。ところがここまで下げるとアンダーブラケット上面が下向きにスラントしているので、ハンドルストッパーの座面の大事な後方部分がなくなってしまう。

座面を確保すると、ハンドルストッパーの取付ボルトを受けるナットが中央のリブに当たる。

どうすりゃいい?

で、下した決断が、中央リブと後方リブの間の空間をアルミの塊で埋めて、そいつにタップをたてる。こうすれば、リブを痛めることなく、また、ねじ穴がリブに近くなることによって損なわれる面圧を、塊全体で受けることによって補えるからだ。

アルミ塊をエポキシ接着剤で接着した後に、穴をあけてタップをたてた。

ただ、これだとハンドルストッパーがヘッドチューブの扇子に当たる時には、ハンドルがかなり切れていることになる。そこで、この扇子の両端に、アルミブロックを取りつけることで、ハンドルストッパーの当たりを早めてやることにした。つまり扇子を広げたということだ。

ハンドルポスト

Z1000のトップブリッジを入手した時に、ハンドルポストもついていたのだが、ピンを支点にしたクランプ式で、どうにもかっこが悪かった。ヤフオクで検索して見つけたのが、CB1100用のハンドルポスト。Z1000のハンドルポストと同じく、取付の軸が12ミリなのでそのまま使える。

Z1000のトップブリッジにCB1100のハンドルポスト

こいつのいいところが、バーの位置が高く、後ろに少しオフセットしているところ。さらにカラーをいれて10ミリ高くした。カラーはブラックアルマイトのミスミによる特注品。写真には、まだそのカラーは入っていない。

メインスイッチとハンドルロック

Z1000のトップブリッジにはメインスイッチを取りつけられるようにはなっていない。これはかなり問題だが、ハンドルポストの取付ボルトを利用して、ベースとなるLアングルを固定することにした。

この部位はセキュリティにかかわるので細かくは書かないが、メインスイッチを固定する面がヘッドチューブの軸に対して、角度(今回の加工は75度でやった)がついているのが、この取付金具をつくるのを難しくさせている。

ブレーキキャリパーのラジアル方向の位置

ホイール、ブレーキディスク、フロントフォーク、ブレーキキャリパーを仮組したときに、ブレーキキャリパーがラジアル方向に5ミリ外についてしまうことがわかった。その時の記事はこちら。

ZX-6Rのディスク径は300Φ。デイトナ675Rのディスク径は310Φ。直径が10ミリ違うということは、半径は5ミリの違いだ。5ミリのカラーを入れて無事正しい位置と思っていたのに、真逆の状態に。

その後調べてわかったことが、このブレーキキャリパーはGSX-R1000に標準装備されているもの(通称スズンボ)なのだが、そのGSX-R1000のディスク径は320Φなのだ。そして、このキャリパー、ほかのブレンボの製品と比べてみると、取付部分が内側に向かって長くなっている。そこから考えられるのは、フロントフォークのキャリパー取付部分に変わりがないまま、ディスクの大径化に対応したキャリパーなのではないかということ。

まあ、その考察が正しいかどうかは別として、なんとかしなければならない。考えられる対策は下記の通り。

  • ブレーキキャリパーを別のものに替える
  • ブレーキディスクを320Φのものに替える
  • ブレーキパッドの当たり面を加工する
  • ブレーキキャリパーの取付部を5ミリ削る
  • ロントフォークのキャリパー取付部を5ミリ削る

キャリパーやディスクを替えるのは、さらに費用がかかるので避けたい。ブレーキパッドの当たり面を加工するのは手っ取り早いが、ブレーキパッドを替えるたびにやらなければならないので現実的ではない。そうなると、ブレーキキャリパーかフロントフォークのどちらかを削らなければならない。

失敗した時のことを考えると、どう考えてもブレーキキャリパーを削るのが安全だ

ということでブレーキキャリパーを5ミリ削ることにした。

フライス盤なんて無いので、当然手作業。バンドソーで4ミリほど叩き切った後、でかい鉄やすりで慎重に削る。削っていない側にスコヤをあて、ノギスを使って削り量を確認する。片側が終わったらもう片方を切断。今度は削り終わった側にワッシャーを介してスコヤをあてて、ノギスで削り量を確認。ただ、このやり方はワッシャーの製品制度が低いこともあって無理だった。なので、取付ボルト座面からの長さを元から4.7ミリ(少々の調整幅を残した)削った。

削り終えたものを睨んでみる。ふたつの取付面が平行でないのがわかる。微調整して、それらしくしてみる。

こんなんでブレンボを使う意味があるのか?

結局ブレーキキャリパー単体で削ったものは、フロントフォークに取付けてみると、あきらかにガタがあった。なので今度はフロントフォークに取付けてアクスルシャフトとキャリパーの背中の平面が垂直になるように、2本の取付ボルトを片側締め付けて、キャリパーのアライメントに変化が無いように修正を繰り返した。

これは割とうまくいったんじゃないの?

ステムシャフトとトップブリッジで紆余曲折する -W650を倒立フォーク化-

歪んだトップブリッジのせいでねじれたフロントフォーク

ステアリングステムで右往左往した話の続き

万力に挟まれたZRX1100のステム

手に入れた格安ZRX1100ステムからステムシャフトを抜く。抜くと言っても、アンダーブラケットは用無しなので、シャフトにダメージが少ないようにアンダーブラケットに容赦なくドリルをたてる。

キリコにまみれるZRX1100のステム

首の皮一枚ぐらいまで削ったら、油圧ベンダーで押し壊した。

抜け止めはZRX1100のもののようにリブが設けられておらず、ステムシャフトに溝が掘られスナップリングがはめられていた。

とりだされたZRX1100のステムシャフト

こいつをノギスや新しく手に入れた25~50ミリのマイクロゲージで測定する。

マイクロメーターでステムシャフトを計測

W400のフレームに取りつけてみた。

W400のフレームにステムシャフトを装着

一見問題は無い。ただ、わからないのがベアリングのクリアランスを調整するナットがひとつしかないことだ。我がWには2つあり、1つ目で調整して、2つ目でそれをロックする。こいつはロックするためのものらしい爪付きワッシャーがあるが、トップブリッジを固定するステムナットを締め付けた力は爪付きワッシャーを通してロックナットにかかっているので、爪付きワッシャーの存在価値があまりない。

元々懸念していた、トップブリッジとの噛み合い長さが少々足りない気がするので、この爪付きワッシャーは、いれないことにするか?

そんなことを考えながら、ぐりぐりっとシャフトを右に左に回転させてみて恐ろしいことに気がついた。

このシャフト曲がってないか?

ステムシャフトの上端

右に左に動かすと、ステムシャフトの先端がじゃっかん芯ずれしているように見える。 いや、その言い方は現実を認めたくない自分が柔らかく言ってるだけ。このステムシャフトはかすかに曲がっている。

ノω・、) ウゥ・・・

このぐらいは大丈夫じゃないの? ステムシャフトをぐりぐり動かして感触を確かめる。ロックナットを締めてぐりぐり、緩めてぐりぐり。試しに思いっきり締めてみた。くいっくいっと締めこまれていく。

なぜだ?

さらに締めても、どんどん締まる。

ここで気がついた。アンダーブラケットを油圧ベンダーで破壊する際に、オイルシールもけしとんでいた。そのオイルシール分と、加工しろの数ミリ、ロワーベアリングが動いていたのだ。

そうか 待てよ ぎりぎり下げて、トップブリッジとの嵌合長を稼げないか? 

ステムシャフトの曲がりのことはどこかに飛んで、ロワーベアリングの最下端を探し始めてる。アンダーブラケットからロワーベアリングまでは2.4ミリだったので、それを計算しロワーベアリングの位置を決めた。するとどうだ、ロックナットから上がだいぶ長くなった。

あれ? これは

ステムシャフトはロックナットの上で一段細くなっている。ロックナット部がΦ25で、その上がΦ18だ。ロワーベアリングを最下端にしたら、さっきまでロックナットより下にあったΦ25部の上端が、ロックナットより上になった。

この状態で爪付きワッシャーをいれ、トップブリッジを乗せてステムナットを締めるのをイメージする。トップブリッジは爪付きワッシャーを押すが、その力はΦ25部の上端が受けて、ロックナットには伝わらない。爪付きワッシャーは動かなくなり、ロックナットはその爪付きワッシャーによって回転することを抑えられる。

おお これがこのワンロックナットの正しい状態じゃん!

よし このロワーベアリングの位置で決まるようにカラーを作ろう。 いや、しかしステムシャフトの曲がりはどうする? 仮にどこかのショップに打ち換えをお願いするとしたら、曲がったステムシャフトだと作業できないっていうウェブページを読んだぞ。

トップブリッジの曲がり

ステムシャフトの曲がりに削られた心を癒すために、ブレーキディスクの左右のピッチを計測することにした。アンダーブラケットにZX-6Rの倒立フォークを差し込む。続いてZ1000のトップブリッジ。

これが入りづらい。クランプ部分の隙間が狭いから、多少歪んでいるのだろうか。隙間にプラスチックの板をねじ込んで広げ挿入してみる。あれ? 無理だ

1度外して片方ずつ入れてみると問題ない。 ん? さては

トップブリッジを目の高さに掲げて、横から左右のクランプ部分を睨んでみる。

あぁ (´;ω;`) 思いっきりねじれてる!

歪んだトップブリッジのせいでねじれたフロントフォーク

これは売る方もどうかと思うが、すぐにチェックしなかったからもう遅い。安かったから痛手は小さいが、安かったからこのようなものなのかもしれない。こいつは使えない。あきらめてまた探そう。

左右が大きくねじれたフロントフォーク

ステムシャフトといいトップブリッジといい、うまくいかないことが重なって、心が折れそうになりながら、キャリパーのピッチを測る。キャリパーのディスクを抱え込む溝の中心が140ミリぐらいだ。この期に及んで「ぐらい」とか言っているのは、キャリパーマウントボルトをまだ手に入れておらず、W3/8の寸切りボルトで仮固定しているから。

ラジアルマウントのブレンボキャリパーを仮付け

スラクストンのホイールのディスク取り付け座面の幅は134ミリだった。ディスクの厚みが5ミリだとしたら、スラクストンのディスクはオフセット0なので、左右のディスクピッチは139ミリになる。あらま奇跡。

左右のディスクのピッチを測定

なんの細工もせずに、ZX-6Rのフォークにボルトオンではないか。 あっ ベアリングは替えるけどね。

今回仕入れたマイクロメーターはこれ

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