W400エンジンをばらす3

分割されたクランクケース

W400エンジンをばらす
W400エンジンをばらす2の話の続き

クラッチハウジングの取り外し

うまくいかなかった自作クラッチホルダーの開き止めを補強した。これでだめならさすがに買うかとも思ったが、よくよく考えてみると、フロントスプロケットナットを押さえれば、クラッチのセンターナットは緩められると気づく。フロントスプロケットのナットがさらに締まっちゃうんじゃないのとも思うが、その時はその時。

27のコンビネーションレンチをフロントスプロケットナットにかけ、クラッチのセンターナットはインパクトで緩ますことに成功した。

インパクトでぎゅいん

ようやくクラッチ周りがはずれた

クランクケースの左側

さてクラッチとは反対側に目を移すと、エンジン前方にある逆さまおにぎり。

おにぎり

このおにぎりの具をはずすにも特殊工具が必要になる。フライホイールホルダーとロータープーラーだ。フライホイールホルダーはヤフオクでやっすいやつを発見したので買っておいた。問題はロータープーラーだ。

おにぎりの具

サービスマニュアルにふたつのサイズが書いてある。構造的にふたつのサイズを兼用できるとは思えないので、実際にばらしてネジのサイズを測るしかない。

左クランクケースカバーをはがすと、現れたフライホイール。早速フライホイールホルダーをセット。それにしてもこのフライホイールホルダーは安い。特殊工具界の百均価格。使い物になるか、ちょっと心配。

その心配をよそに、フライホイールホルダーは滑ることなくフライホイールを押さえ、センターボルトを緩めることに成功した。

安物フライホイールホルダーが活躍

続いて、ロータープーラーを取り付けるネジ部の直径を測ってみる。38ミリだ。ということは、サービスマニュアルにある二つのサイズのうち、M38×P1.5の方だ。

このロータープーラー、カワサキの純正部品で購入すると、1万円弱。そんな高いの買ってらんない。純正でなければ5000円ぐらい。どちらにしても高い。

作ろう

例によってミスミで検索。M38×P1.5のナット、M17用 厚み4.5 外径45ミリの大ワッシャー、M14のナット、M14 長さ55ミリのボルトを購入。しめて2000円ぐらい。3000円の節約。

 それらを重ねて溶接する。

ロータープーラー作成中

自作ロータープーラーの完成。

ロータープーラー作成中

フライホイールの取り外し

ロータープーラーで押されるクランクシャフトの先端は、フライホイールを固定するボルトのネジ穴になっている。このままでは押せないのでロータープーラーアダプターなるものを装着することになっているが、代わりにワッシャーを三枚通したM10のボルトをセット。

そして、フライホイールに自作ロータープーラーをかけ、手で締められるだけ締めたら90度ほど戻しておく。続いてM14の押しボルトを先端がロータープーラーアダプター代わりのボルトの頭に当たるまで締め込む。

ここからは、押しボルトとM38のナットに溶接したナットにレンチをかけて押しボルトを締めこんでいく。

むむむ

かなり締めたのに、フライホイールはビクともしない。さらに力を入れる。

いや これは無理だ

M14の二面幅が22で、手持ちの工具がなくモンキーでやっているのだが、柄が短く、力が入らない。

こりゃ、ダメか・・・

諦めかけていると、ふとした瞬間にゴロリと外れて下に落ちた。

わおっ( ̄▽ ̄;)

650の時は対策しないと

フライホイールがはずれると、その先にある大きなギアはセルモーターの回転をクランクシャフトへ伝えるもの。びっくりしたことに、このギアのスラスト方向の移動の規制はなさそうに見える。ギア側面が直にクランクケースに触れているんじゃないか?

冬の朝。まだ暗い中にエンジンをかけるのだが、キャブレターをCRに替えてから始動性が悪くなった。Wはセルを回し続けているときの音が、「キャーキャーキャー」とけっこう高い音がうるさい。これの原因はこのギアのせいかも。そうだとしたら、なんの対策もできないな。

クランクケースを割る

クランクケースを割るには、まずクランクケース上面のボルトを緩める。クランクシャフトまわりにクランクケース外周と、数多いボルトで固定されている。上面のボルトを抜き終わったら、クランクケースをひっくり返してオイルパンをはずす。この中にあるボルトを緩めて抜き取り。プラスチックハンマーでパコパコクランクケースを叩く。

当て木なんかも使いながら、クランクケースの上下が均一に離れていくように叩いていくと、位置決めのカラーが抜けたところで全開放。クランクシャフトやミッションを取り出して、W400のエンジンばらしは完了。

分割されたクランクケース
ミッション!
コンロッド

W400エンジンをばらす2

クラッチホルダーをセット

W400のエンジンの腰上までバラした話の続き。

右のクランクケースカバーをはがしてクラッチを露出させる。クラッチスプリングを押さえているボルトをはずすと、クラッチ板は簡単にとりされる。問題はここから。

クラッチハブはセンターロックナットでトランスミッションの1次側のシャフトに固定されている。このロックナットをゆるめるには、クラッチハブを押さえる特殊工具=クラッチホルダーが必要だ。この先クランクケースを全バラするとなると、更にいろいろな特殊工具が必要になってくる。出費は抑えたい。

出費を抑えながら腰下をばらしきることができれば、やってみたいことがある。それは400と650のトランスミッションの融合だ。

400と650は、ギアの構成が違う。ざっくり言うと400はワイド650はクロスとなっている。おそらく400は力の無さをローギアードで補い、スタートの低さを全体的にワイドにすることによっておっつけていると思われる。

トランスミッションのシャフト自体は、400も650も同一部品だということは確認している。400と650のギアを組み合わすことによって、400よりもワイドなトランスミッションが作れると思う。

走っていると、ついつい幻の6速へ左足をかきあげてしまう。ワイドにすることによってそれを減らすことができればと思う。それにはできる限り出費を抑えて腰下をバラしたい。


ということでクラッチホルダーを自作してみた。

素材は5ミリ厚の50×50のアルミLアングル。このアングルは会社にころがっていたもの。

なんとなくこんな感じじゃないのってJWCADで図面をかいてみる。

クラッチホルダーの図面
自作クラッチホルダー
自作クラッチホルダー

それをプリントして切り出し型紙とする。便利な時代だ。アルミ材を切るのは自分だけど。できあがったクラッチホルダーをクラッチハブに当てて微調整。さあセンターナットを緩めよう。

クラッチホルダーをセット

ガツッ!

クラッチホルダーの歯がクラッチハブのスプラインから外れてしまった。もう一度セットして、開き止めのビスを締め付け、センターナットにかけたスピナーハンドルとクラッチホルダーを絞り込むように近づけていく。

パキッ!

うわっ なんか飛んだ! 見ると外側のクラッチハウジングの爪が折れていた。クラッチホルダーがトルクに負けて開いて、クラッチハウジングに当たってしまったためだろう。

・・・

折れたクラッチハウジング

まあいい 650をばらすときには気をつけよう!^_^;

クラッチホルダーは開き止めの部分が曲がっていた。この部分を補強するか、諦めて既製品を買うしかなさそうだ。

折れ曲がった開き止めのように心が折れかかっている。夢のワイドトランスミッションは諦めるか・・・

時間がかかる特注製作のスプロケットを、通常のトランスミッションのギア比に合わせたものでザムに注文した。

W400エンジンをばらす1

W400エンジンの解体開始

今回のリア足回りの大改造とあわせてやりたいことが、エンジンの腰上のオーバーホールだ。650のエンジンを載せるときに気づいたのだが、排気ポートにカーボンが厚く堆積していた。おそらくシリンダーヘッドもピストンも同様だろう。

実はノッキング音がかすかだが常に感じられて気になるのだ。心にささったとげのようにアクセルを開ける際にノッキング音を探してしまう。これはきっとカーボンのせいだと思っている。

その腰上オーバーホールのエクセサイズもかねて、庭に放置されているW400のエンジンをばらすことにする。

W400エンジンの解体開始

シリンダーヘッドカバーは、650に載せ替える際に状態のいい400のカバーと替えたので、この400には650のカバーがついている。ボルトは仮締めなので、あっさりはずれる。

問題はここからだ。カムシャフトを外すためにベベルタワーをいじるのだが、マニュアルをチラッと読んだぐらいでは、まったく理解できない。

最後までばらせば分かるのだが、ベベルタワーの上下のパイプは、単なる保護パイプであって、ベベルギアそのものをどうこうする機構は全くもっていないのだ。この保護パイプは上下ともOリングを用いてはまっていて、中央のスナップリングで固定されているだけなのである。

ベベルギアの当りの調整は、ベベルタワー上下にある六角ナットとロックナットで行う。カムシャフトをばらす際は、上部の六角ナットを1回転ゆるませて、カムシャフト側のベベルギアからベベルタワー側のベベルギアを離してから作業する。この作業で、ベベルタワーのパイプはまったく関係ないことを理解していないと、いっしょにまわって「えっ えっ」ってことになるので注意。

ベベルタワー

このあたりを理解しておいて進めれば、無駄な時間はかからない。

ベベルケースのロックナットを緩めるために、今回は新たにフックレンチを購入した。ナップスに行ってどれにするか迷ったのだが、買うときにはきづかなかった機能を作業時に発見。ハンドルの途中に9.5ミリの差し込み角の穴があいている。ここにスピナーハンドルを差し込んで全長を延長できるのだ。 これは便利! きちんと計算すればトルクレンチで締付けトルクも管理できる。

フックレンチにスピナーハンドルを延長

上部ベベルギアを下にずしたら、カムシャフトをばらす。バルブの頭部に収められているシムは、今後650のエンジンを分解組み立てする時に使えるだろうから、大切にとっておく。

カムシャフト

続いてシリンダーヘッドのボルトを緩める。

固い・・・

エンジン単体、ごろっとした状態でバラしているので、大トルクで締められているシリンダーヘッドボルトを緩めるのは大変だ。クランクケースを足で押さえて、エンジンが回らないように、さらに倒れないように・・・

っつ!

腹筋つった。このボルトはフレームに載った状態か、専用の台を作って固定させないと無理だな。

露わになったカムシャフト

と思いつつも作業を進める。

しかしなんと。1本のボルトが緩める途中で動かなくなってしまった。Wのシリンダーヘッドボルトは、ヘッドだけでなくシリンダーまで一緒に固定していて、8本のボルトで締結されている。その8本の内側の4本は、シリンダー下方で露出しているのだ。しかもそのネジ穴は、前輪が巻き上げた砂粒をもろに受ける場所だ。なんでこんな構造に?!

パーツクリーナーのノズルをそのネジ穴に突っ込んで噴射する。砂粒が吐き出される。初めから、しっかりきれいにしてからやれば良かった・・・ 後の祭りだ

ねじ穴から出てくる砂粒

まったく動かなくなったボルトの頭を、ベビーサンダーで切り落とす。カムシャフトの受けが入り組んでいて切りづらい。

うわっ!

その受けを切ってしまった・・・ まあ、このヘッドは使わないからいいけど・・・

650のエンジンをばらす時は、入念にネジ穴を清掃してからやった方がいいな。

頭を失った長いボルト1本が間抜けに残った状態で、シリンダーヘッドとシリンダーがはずれた。うなだれるように並んだふたつのピストンがオーナーの気持ちを表しているかのようだった。

うなだれるピストン