ピストンを探す -エンジンから異音-

宝石のような鍛造ピストン

キャブレターの油面を確認しようと思ったらエアジェットを燃焼室に吸い込んでしまったことに気づき、ついにエンジンを開けてみると、1番のピストンに大きなガタを確認した話の続き。エンジントラブルからの異音の話の始めから読みたいかたはこちら。

ピストンの摩耗

1番のピストンにガタが見つかったので、泣く泣くシリンダーを外す。前にも話したが、Wはシリンダー間に空気の通路があり、そこにオイルの行き還りのパイプがある。パイプとシリンダーには1ミリぐらいの隙間があり、そこに前輪が巻き上げたゴミが溜まる。オイルのパイプを抜くと、そのゴミがクランクケースに入ってしまうのだ。

幸い、根元に液体ガスケットを盛っておいたおかげで、隙間にゴミは入っていなかったようだ。「雨の日は走らない」を徹底しているのが功を奏しているのだろう。

シリンダーとピストンを外し、部屋に持ち込む。ピストンの外径を計測すると、1番と2番のスカート部で0.2ミリ違った。ガタがあまりなかった2番のピストンを、1番のシリンダーに入れてみたがガタは感じられなかった。結論はこうだ。

エアジェットを吸い込んで、それが例えば排気側のスキッシュエリアに入った時、ピストンの前方は下に押され、その反動で吸気側のスカートがシリンダーに押さえつけられる。エアジェットが燃焼室内にいられたのは数分のことだと思うが、そんな短い間でもピストンを0.1ミリ削ったわけだ。

今思えば、あの金属音を聞いた時に、すぐにエンジンを止めるべきだった。今、後悔しても、あのピストンはもう戻ってこない。

代わりのピストンを探す

ピストンの摩耗がカンカン音=スラップ音とわかった今、その音を消すには、ピストンを交換するしかない。我がWは、BEETのボアアップキットを組んである。というか組んであるエンジンを買った。だから、そのボアアップキットのピストンを手に入れなければならない。検索してみたが、もはやそんなものはなかった。

では、どうすべきか。ここで浮かび上がってくるのが、以前からやりたいと思っていた、エンジンをアシストスリッパークラッチになった2世代目のW800のものに換装することだ。クラッチが軽くなるのは、おじいちゃんの夢だ。しかし、その夢はすぐに砕ける。ヤフオクに出品されていない。今までもちょくちょく探しているが、W800のエンジンは、あまり出てこない。

やっぱり純正部品じゃないと、こういう時困るよなぁ と感じて思いついたのが、W800のシリンダーとピストンを買うことだ。純正部品だから、その後のトラブルにも対応しやすい。そう思ってカワサキのホームページにいく。

なんと欠品中ではないか。ピストンすら無い。現行車種なのに・・・ 純正部品だからって、全然安心できないじゃん!

W800には、できないらしい。仕方ない、他のW650ボアアップキットを探す。しかし無い。いや、ひとつだけある。ビトーR&Dのものだ。ただこれは高い。ウオタニを導入する前なら良かったが、すでにかなり出費しているので厳しい。

W800のボアアップキットならあるのではと探してみた。この場合、ノーマルスリーブをボーリングする構成なので、別途スリーブを手配する必要があるのが難点だ。しかし、そんな心配は無用だった。販売終了ばかりなのだ。現行車種なのにだ!

どうしよう・・・

あっ W400のシリンダーとピストンあるじゃん

ご存知の通り、W400はW650のストロークダウンモデル。つまりシリンダーとピストンは同じ。(品番違うけど、基本は同じはず) そして我がWは元々400だったので、分解された400のエンジンが1機あるのだ。それを使えば、スラップ音から解放される!

しかしなぁ 675ccになっちゃうよなぁ・・・

とりあえず探してみる。シリンダーはあっさり見つかった。排気量の表示はどうなってるんだっけ? と思って見てみると、なんとつるっとのっぺらぼうだった。なるほど。シリンダー内壁を観察すると、ピストンの下死点の痕が、シリンダーライナーの最下端よりだいぶ上にある。かなりのショートストロークだということがわかる。

さてピストンはどこにしまったっけ? 

いくら探してもみつからない。これではシリンダーがあっても意味が無い。持ってたはずのものを買うのは悔しいが、念の為カワサキ純正部品のサイトを見てみる。

欠品中

まじか(´・ω・`) もうだめだ

スラップ音から逃れる方法は、もはや一択。 ビトーR&DのW650ボアアップキットのみだ。

あらためて、ビトーR&Dのホームページに行ってみると、キットの部品が単品で販売されていた。これだよ、これ! こうあるべきでしょ

ビトーのボアアップキットの入手

覚悟を決めて、148500円のビトーR&Dのボアアップキットを買うことにした。実際に購入する前に、もう一度巷の評価を確認しようと、ネットで検索する。まったくもって覚悟ができていない。しかしこの潔の悪さが、すごい効果をもたらした。

検索結果に、アップガレージのページがあった。クリックすると、なんとそこには新古のビトーのボアアップキットが、ほぼ半値で販売されていたのだ。まじかよ!

ためらうことなく購入。2日後には宝石のようなピストンが我が家にやってきたのである。