オイル注入 そして完成 -倒立フォークのオーバーホール-

駒込ピペットでオイルレベル調整

要交換部品を新しくして、ピストンロッドまで組み上がり、フォークオイルを入れるところまで到達した。倒立フォークオーバーホールの話を始めから読みたい方はこちら

フォークオイルを入れる

我がWのフロントフォークは2007ZX6Rのものだ。こいつのフォークオイルの量は、オーバーホールした際は525ccと決められている。あくまでもこれは目安で、厳密にはオイルレベルでの管理となる。フォークオイルレベルゲージなんて、たまにしか使わないので持っていない。前回これが必要になった時は、ブレーキホースのエア抜き用のシリンジとビニルホースを使った。今回はこれ。

2液性のウレタン塗料の硬化剤計量用の、安い駒込ピペットのようなものだ。こいつに、求められたオイルレベルにマスキングテープを貼って、それに合わせてフォークオイルを吸い取ることによって、指定されたオイルレベルを実現する。精度はフォークオイルレベルゲージと遜色ないし、なんてったって安い。

オイルをある程度入れてから、自作ピストンロッドプーラーを持ってピストンロッドロッドを数回スライドさせてエア抜きをする。この動作を繰り返していると、中空のピストンロッドが吸い上げたフォークオイルがピストンロッドプーラーに溜まり、やがてその上端から溢れ出す。ピストンロッドプーラーの側面には、オイル抜けの穴をあけておいた方が良いかもしれない。

オイルレベルを調整したら、あとはスプリングを入れて蓋をするだけって、ほとんど終わった気持ちになる。スプリングを入れ、続いてカラーを差し込んだ。その勢いで溢れ出すフォークオイル。

うわ〜(´・д・`)

再びオイルまみれになるフローリング。さほど勢いよくカラーを入れたつもりはないが、ピストンロッドとカラーの小さいすき間に、オイルが流れこむ間を与えずにカラーを差し込んでしまったのだろう。フロントフォークというのは大きな水鉄砲みたいなものだ。

また、オイルレベル調整からやり直さなければならない。飛び出たフォークオイルを掃除してから、カラーを抜く。すっと抜きかけたが、思い直してゆっくり引き抜く。スプリングはアルミの針金で引っ掛けて取り出した。針金が太かったせいもあるが、なかなか引っ掛からず苦戦した。相当無駄な時間とオイルを費やして、オイル注入が終わった。

プリロードアジャスターの修理

ここで、フォークキャップを取り付けるのだが、分解する際に間違ったところにスパナをかけたことで、プリロードアジャスターが機能しなくなってしまった。これを直さなければならない。

プリロードアジャスターは、フォークキャップの外に調整ボルトがあり、それを回すと内部にあるボルトが回転する。このボルトに、ネジが切ってあるアルミの板が取り付けられていて、ボルトが回転すると上下するようになっている。アルミの板はスプリングに押されたカラーの力を受けていて、板が下がればスプリングを圧縮するという構造だ。この板が、ボルトの端部にある、2辺しか平らなところがないナットに密着して動かなくなってしまっている。

板を押さえて、そのナットを回せば良さそうだが、板はフォークキャップの中にあり、押さえようがない。板はフォークキャップそのものとは同時には回らない構造なので、フォークキャップを押さえられればよいが、これはこれで押さえようがない。(今思えば、フォークキャップを締め付ける際に工具をかける部分なら押さえられた気がするが、当時は思いつかなかった)

プリロード調整できなくてもいいか

なんて思ったりもするが、すると最高にプリロードをかけた状態になってしまう。それはすごくいやだ。逆なら諦められたが・・・

間違ってこうなった逆の動きをしてみても、元には戻らなかった。まいった(*´д`*)

落ち着いて観察してみる。これはどういう構造になっているのか? これは?

フォークキャップの内部の先端に先端にスナップリングがある。こいつは、プリロードアジャスターの回転の限界を制御している。こいつを外せば、回転が続き、分解できるのではないか? やってみる

アルミの板の位置を制御している部品がフォークキャップから外れた。動かなくなっていたアルミの板をモンキーで押さえ、例のナットにスパナをかけて力を入れると、無事に緩んだ。

あとは元に戻し、スナップリングをかける。プリロードアジャスターナットを回してみると、何事も無かったかのように、アルミの板は上下してくれた。

そんなこんなで片方やるのに、買い物含めて丸1日かかったフロントフォークのオーバーホール。翌日に残ったもう1本を、1時間半で終わらせた。

材料代
部品代10656円
フォークオイル1800円

特殊工具
フロントフォークオーバーホールスタンド1000円(材料買えばこれぐらい)
ピストンロッドプーラー300円
フォークオイルシールドライバー2699円

フロントフォークのオーバーホールは、なにをやるにも、ゆっくりやること

W400エンジンをばらす3

分割されたクランクケース

W400エンジンをばらす
W400エンジンをばらす2の話の続き

クラッチハウジングの取り外し

うまくいかなかった自作クラッチホルダーの開き止めを補強した。これでだめならさすがに買うかとも思ったが、よくよく考えてみると、フロントスプロケットナットを押さえれば、クラッチのセンターナットは緩められると気づく。フロントスプロケットのナットがさらに締まっちゃうんじゃないのとも思うが、その時はその時。

27のコンビネーションレンチをフロントスプロケットナットにかけ、クラッチのセンターナットはインパクトで緩ますことに成功した。

インパクトでぎゅいん

ようやくクラッチ周りがはずれた

クランクケースの左側

さてクラッチとは反対側に目を移すと、エンジン前方にある逆さまおにぎり。

おにぎり

このおにぎりの具をはずすにも特殊工具が必要になる。フライホイールホルダーとロータープーラーだ。フライホイールホルダーはヤフオクでやっすいやつを発見したので買っておいた。問題はロータープーラーだ。

おにぎりの具

サービスマニュアルにふたつのサイズが書いてある。構造的にふたつのサイズを兼用できるとは思えないので、実際にばらしてネジのサイズを測るしかない。

左クランクケースカバーをはがすと、現れたフライホイール。早速フライホイールホルダーをセット。それにしてもこのフライホイールホルダーは安い。特殊工具界の百均価格。使い物になるか、ちょっと心配。

その心配をよそに、フライホイールホルダーは滑ることなくフライホイールを押さえ、センターボルトを緩めることに成功した。

安物フライホイールホルダーが活躍

続いて、ロータープーラーを取り付けるネジ部の直径を測ってみる。38ミリだ。ということは、サービスマニュアルにある二つのサイズのうち、M38×P1.5の方だ。

このロータープーラー、カワサキの純正部品で購入すると、1万円弱。そんな高いの買ってらんない。純正でなければ5000円ぐらい。どちらにしても高い。

作ろう

例によってミスミで検索。M38×P1.5のナット、M17用 厚み4.5 外径45ミリの大ワッシャー、M14のナット、M14 長さ55ミリのボルトを購入。しめて2000円ぐらい。3000円の節約。

 それらを重ねて溶接する。

ロータープーラー作成中

自作ロータープーラーの完成。

ロータープーラー作成中

フライホイールの取り外し

ロータープーラーで押されるクランクシャフトの先端は、フライホイールを固定するボルトのネジ穴になっている。このままでは押せないのでロータープーラーアダプターなるものを装着することになっているが、代わりにワッシャーを三枚通したM10のボルトをセット。

そして、フライホイールに自作ロータープーラーをかけ、手で締められるだけ締めたら90度ほど戻しておく。続いてM14の押しボルトを先端がロータープーラーアダプター代わりのボルトの頭に当たるまで締め込む。

ここからは、押しボルトとM38のナットに溶接したナットにレンチをかけて押しボルトを締めこんでいく。

むむむ

かなり締めたのに、フライホイールはビクともしない。さらに力を入れる。

いや これは無理だ

M14の二面幅が22で、手持ちの工具がなくモンキーでやっているのだが、柄が短く、力が入らない。

こりゃ、ダメか・・・

諦めかけていると、ふとした瞬間にゴロリと外れて下に落ちた。

わおっ( ̄▽ ̄;)

650の時は対策しないと

フライホイールがはずれると、その先にある大きなギアはセルモーターの回転をクランクシャフトへ伝えるもの。びっくりしたことに、このギアのスラスト方向の移動の規制はなさそうに見える。ギア側面が直にクランクケースに触れているんじゃないか?

冬の朝。まだ暗い中にエンジンをかけるのだが、キャブレターをCRに替えてから始動性が悪くなった。Wはセルを回し続けているときの音が、「キャーキャーキャー」とけっこう高い音がうるさい。これの原因はこのギアのせいかも。そうだとしたら、なんの対策もできないな。

クランクケースを割る

クランクケースを割るには、まずクランクケース上面のボルトを緩める。クランクシャフトまわりにクランクケース外周と、数多いボルトで固定されている。上面のボルトを抜き終わったら、クランクケースをひっくり返してオイルパンをはずす。この中にあるボルトを緩めて抜き取り。プラスチックハンマーでパコパコクランクケースを叩く。

当て木なんかも使いながら、クランクケースの上下が均一に離れていくように叩いていくと、位置決めのカラーが抜けたところで全開放。クランクシャフトやミッションを取り出して、W400のエンジンばらしは完了。

分割されたクランクケース
ミッション!
コンロッド

W400エンジンをばらす2

クラッチホルダーをセット

W400のエンジンの腰上までバラした話の続き。

右のクランクケースカバーをはがしてクラッチを露出させる。クラッチスプリングを押さえているボルトをはずすと、クラッチ板は簡単にとりされる。問題はここから。

クラッチハブはセンターロックナットでトランスミッションの1次側のシャフトに固定されている。このロックナットをゆるめるには、クラッチハブを押さえる特殊工具=クラッチホルダーが必要だ。この先クランクケースを全バラするとなると、更にいろいろな特殊工具が必要になってくる。出費は抑えたい。

出費を抑えながら腰下をばらしきることができれば、やってみたいことがある。それは400と650のトランスミッションの融合だ。

400と650は、ギアの構成が違う。ざっくり言うと400はワイド650はクロスとなっている。おそらく400は力の無さをローギアードで補い、スタートの低さを全体的にワイドにすることによっておっつけていると思われる。

トランスミッションのシャフト自体は、400も650も同一部品だということは確認している。400と650のギアを組み合わすことによって、400よりもワイドなトランスミッションが作れると思う。

走っていると、ついつい幻の6速へ左足をかきあげてしまう。ワイドにすることによってそれを減らすことができればと思う。それにはできる限り出費を抑えて腰下をバラしたい。


ということでクラッチホルダーを自作してみた。

素材は5ミリ厚の50×50のアルミLアングル。このアングルは会社にころがっていたもの。

なんとなくこんな感じじゃないのってJWCADで図面をかいてみる。

クラッチホルダーの図面
自作クラッチホルダー
自作クラッチホルダー

それをプリントして切り出し型紙とする。便利な時代だ。アルミ材を切るのは自分だけど。できあがったクラッチホルダーをクラッチハブに当てて微調整。さあセンターナットを緩めよう。

クラッチホルダーをセット

ガツッ!

クラッチホルダーの歯がクラッチハブのスプラインから外れてしまった。もう一度セットして、開き止めのビスを締め付け、センターナットにかけたスピナーハンドルとクラッチホルダーを絞り込むように近づけていく。

パキッ!

うわっ なんか飛んだ! 見ると外側のクラッチハウジングの爪が折れていた。クラッチホルダーがトルクに負けて開いて、クラッチハウジングに当たってしまったためだろう。

・・・

折れたクラッチハウジング

まあいい 650をばらすときには気をつけよう!^_^;

クラッチホルダーは開き止めの部分が曲がっていた。この部分を補強するか、諦めて既製品を買うしかなさそうだ。

折れ曲がった開き止めのように心が折れかかっている。夢のワイドトランスミッションは諦めるか・・・

時間がかかる特注製作のスプロケットを、通常のトランスミッションのギア比に合わせたものでザムに注文した。