フォークの分解 -倒立フォークのオーバーホール-

フローリングにフォークオイルを撒き散らしながらの倒立フォークオーバーホール作業の話の続き。初回はこちら

その原因は、フォークキャップを外すことに成功し、伸び側の規制がなくなっているのに、アウターチューブだけを持って持ち上げたことによるものだ。この段階になったら、アウターチューブもインナーチューブも両方持たなければ負け。

床や作業台を掃除してから、あらためてフォークを持ち上げ、用意していたバットにフォークオイルをあける。ピストンロッドを何回かスライドさせて、ピストンロッド内のオイルも吐き出させた。

ピストンロッドの取り外し

続いてピストンロッドを取り外す。ピストンロッドはアンダーブラケットにボルトで固定されている。そのボルトは、アクスルシャフトの上にあり、アクスルシャフトを抜かないと見えない。アンダーブラケットの最下部に穴があいており、そこから工具をアクセスさせる。頭は六角穴付で、対辺6ミリのものだ。

手持ちの工具では、インパクトドライバー用のビットになるが、長さ的にボールポイントタイプのものでないと届かなかった。スピナーハンドルにアダプターを介してビットを取り付けた。

サービスマニュアルには、アンダーブラケットを万力で固定して作業するように書かれているが、そんなものは無い。フォークオーバーホールスタンドの2本の柱で回転を押さえて作業した。結構固い。スピナーハンドルに力をこめる。

ギュル

( ̄▽ ̄;)

ナメた・・・

マジか? ボルトを見てみる。なんとなく六角ではなくなってるように見える。ビットを見てみる。なんともなってない。

よくよく観察すると、この六角穴付ボルトの、穴が浅い。そこにボールポイントタイプのビットを突っ込んだので、穴の縁にだけ力がかかり舐めたようだ。ボールポイントタイプでないビットもあるが、少々短い。

アダプターに半がけなら届いたのでやってみる。

バキッ!

ビットの細くなっている部分から、ぶち折れた。俺の心も折れた。下の写真は左から、ボールポイントビット、折れた六角ビット、アスプロロング六角ビット。

家の買い物ついでにロイヤルホームセンターに行ってみると、アストロプロダクツとコラボしているではないか。ラッキー 3/8のソケットで6ミリのロングサイズのものが手に入った。万が一に六角穴が完全に終わった時のことも考え、ネットでカワサキ純正部品にアクセスしてみる。

ボルトは欠品だった( ̄▽ ̄;)

帰宅した。失敗は許されない。万が一ボルトが固着、もしくはネジロックでガチガチになっていることも考えられたので、バーナーでボルトを炙ってから緩めることにした。バーナーと言っても、炎は直径4ミリぐらいのマイクロバーナーだ。

炙っては指で触って温度を確認するを繰り返し、バカ熱くならないように注意した。そして無事に緩めることが出来た。

アウターチューブとインナーチューブの分解

まず、アウターチューブについているダストシールをはずす。これはカーボンスクレーパーをダストシールとアウターチューブの隙間に差し入れていくと簡単にはずれた。

すると見えてくるのがスナップリング。これは精密ドライバーであおって取り外した。

こうすれば、あとは圧入されているオイルシールだけが、分解を妨げているものになる。これは、インナーチューブをスライドハンマーのごとく、ガツンガツンやればはずれる。これで一応全部バラバラとなった。

倒立フォークの組み立て

ここから組み立てていくわけだが、今回新しくする部品は、サービスマニュアルの指示にならって、フォークキャップのOリング、ピストンロッド取付ボルトのガスケット、アウターチューブとインナーチューブのそれぞれのメタル、ダストシール、スナップリング、そして最も重要なオイルシールだ。まだインナーチューブについている古い部品を外して順番に並べる。

この順番通りに、はじから新しい部品をインナーチューブに装着していく。スペーサーだけは元の部品を使う。装着し終えたら、アウターチューブと合体させるわけだが、それぞれの部品の役目と装着のポジションはインナーチューブの先端からこうなっている。

インナーチューブメタル

 インナーチューブに装着され、アウターチューブの内面と接触、スライドする。

アウターチューブメタル

 アウターチューブに装着され、インナーチューブの外面と接触、スライドする。

オイルシール

 アウターチューブに装着され、フォークオイルの漏れを防止する。

スペーサー

 オイルシールとアウターチューブメタルとの面圧の分散のために装着される。

スナップリング

 オイルシールを固定する。アウターチューブに掘られた溝にはまる。

ダストシール

 オイルシールへの異物の接触を防止する。アウターチューブ先端に装着される。

インナーチューブメタル以外は、インナーチューブにはめてからアウターチューブと合体させるが、最終的にはアウターチューブに装着される。下の写真は、インナーチューブにセットされた部品たち。

新しい部品をインナーチューブに装着

インナーチューブとアウターチューブの合体作業で難しいのは、アウターチューブメタルの挿入かもしれない。アウターチューブメタルを所定の位置に挿入することについて、サービスマニュアルでは、なにも書かれていない。書かれたまま作業を進めると、アウターチューブメタルは、オイルシールの打ち込みと合わせてセットされていくようだが、単独でセットした方が間違いないと思われる。

実際どうしたかと言うと、アウターチューブメタルの上にスペーサーを置き、スペーサーを少しずつ叩いてセットした。フォークオイルシールドライバーを使えればよかったが、セットされる位置が深いため、使えなかった。ビットドライバーに六角ビットを装着したものを使って叩き込んだ。スペーサーの表面に打痕が残ったので、気になる方は控えた方がよいでしょう。

アウターチューブメタルをこつこつ叩き込む

アウターチューブメタルを所定の位置にセットしたら、オイルシールをアウターチューブに打ち込む。初めてはっきり向きがあるものになった。刻印があるものが外側だ。

オイルシールは刻印が外側

ここで特殊工具フォークオイルシールドライバーが必要になる。これは、オイルシールに当て物をして、インナーチューブを軸にしたスライドハンマーで打ち込む工具だ。これはアマゾンで安物を購入した。特に問題なく作業できた。

ダストシールもフォークオイルシールドライバーで叩き込もうと思ってやってみたが、径のコントロールがうまくいかなかったので、プラスチックハンマーで、少しづつ叩き込んだ。

続いてピストンロッドをボルトで固定し、組み立てはおおむね完了。このあとはフォークオイルの注入となる。 

 つづく

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