取り付けるスイングアームは、ZRX1100のものに決まった。そこでスイングアームのピボット部の構造と寸法を観察してみよう。
スイングアームのピボット部の内部は、短い右カラー、ボールベアリングの内輪、長い左カラーの3点がピボットシャフトによって、左右のフレームに挟まれるように固定されている。左のカラーの両端に、ニードルベアリングがあり、ラジアル方向(ピボットシャフトに垂直な方向)の荷重を担当している。
カラーの間に挟まれているボールベアリングもラジアル荷重を受けているが、こいつは主にアキシャル方向(ピボットシャフトに平行な方向 昔はスラスト方向って言ってたよな)の荷重を担当している。このボールベアリングのおかげで、スイングアームが左右に動かないようになっているわけだ。
このボールベアリングは、はめあいの摩擦で固定されているのではなく、片方は突き当り、もう片方はスナップリングで移動を規制されている。
この3点の長さの合計が237.5ミリで、W650のフレームのピボット部の内寸が、214ミリだ。つまり3点の長さの合計を、23.5ミリ詰めなければならない。当初考えていたものより1.5ミリ詰めるサイズが大きい・・・
スイングアームを詰めるのに、外側の条件はこうなっている。ピボット部は肉厚のチューブで、そいつに左右のアームが突き当てて溶接されている。その突き当てた外側の長さ=詰められる長さが、右と比べて左が短い。とてもじゃないが詰めるべきサイズの半分である約12ミリは詰められない。
右のカラーを12.5ミリから1ミリにして11.5ミリ詰められる。左はニードルベアリングの左端までが左カラー左端から8ミリもないので、ベアリングをこのままでいくと、左右あわせても19.5ミリしか詰められないことになる。しかもスイングアームは左にずれ放題だ。
左のニードルベアリングは長さが24ミリなのだが、これを長さ17ミリのものに替えればカラー左端から15ミリ程度確保されるので、問題ないだろう。右はボールベアリングの厚みが12ミリだが、同じ外径・内径で厚みが8ミリのものがあるのでそれに替えよう。
すると右側で15.5ミリ詰められる。残りは8ミリ。ニードルベアリングの左端まで7ミリほど余裕がある。その7ミリを利用してスイングアームの左ずれを防止するために、ピボット部のチューブの左側面にスラストベアリングを入れればいいのではないか? ベアリングメーカーのHPを探し回る。
ちょうどよさそうなのが見つかった。ベアリングレースの厚さが1ミリで、ベアリング本体の厚さが2ミリ。合計4ミリで済むのでピボットチューブを詰めるのも、許容範囲内だ。ベアリングのシールが難しそうだが、そこは後で考えよう。
W650のピボットシャフトは17ミリでZRX1100のピボットシャフトは20ミリだ。この調整はアルミパイプでやればいいだろう。いろいろなものを注文して、スイングアームの加工に入る。
まずはピボット部右側から作業開始。オイルシールをマイナスドライバーで取り外す。続いてボールベアリングをベアリングリムーバーで取り外す。 はずだったがビクともしない。どうせ使わないからと、反対側から適当な棒を突っ込んでベアリング内輪にあて、ハンマーで引っぱたく。
しかし動かない・・・
そんなにがっちりついてるのか?
いきなり参ったな
とそこで思い出す。 そうだ、スナップリングでとまってるんだ(汗)
スナップリングをはずしたら、リムーバーであっさり外れた。
あわてずいこ~
ボールベアリングの先のニードルベアリングは使うのでそのままに。続いて左側。
オイルシールを外して、奥のニードルベアリングにベアリングリムーバーをセットする。シャフトを回す度に、ズルズル引き出されてくるニードルベアリング。これで外すものは全て外れた。次はピボットチューブを切り詰める。
できあがりより少し大きめに切断ラインをけがき、スイングアームをシャコ万で作業台にしっかりと固定し、バンドソーで切る。
その後、スコヤで直角を確認しながら、大きな金やすりで所定の寸法に削っていく。完全なる手工業!
カラーも同様の方法で切り詰め、作業は完了。新しいベアリングを装着してフレームに仮組みしてみる。
ん? ちょっとスラストベアリングに偏ったガタがあるぞ(画像でわかるラジアル方向のすき間ではない)
ピボットチューブの切断面の直角度がよくなかったことと、カラーがじゃっかん長い。ばらして修正加工。書くと簡単だけど、実際の作業時間はそこそこかかった。修正が終わって取りつけてみると今度はいい感じ。
フレームにスイングアームを取りつけ、オイル漏れして使わなくなっていたWPのショックを仮付けしてみた写真がこれ
かっこいい! かっこいいよ!
もちろんわかっていたけど、ショックのフレーム側取付部の幅が合っていない。今後は、この解決を含めたフレームの加工を始める。